トランジスタ技術の黒田氏の記事によると、二代目アンプでは、3段ダーリントン・エミッタ・フォロアにすることで等価的にhfeが10^6位のトランジスタを実現し基準電流を5mAに抑えたとのこと。
そこで、段階を踏んで、まず前回の回路のQ1, Q6を2段ダーリントンに変更して試してみる。シミュレート結果の最大駆動電流から2N3055/MJ2955でのhfeが44と見積もって、基準電流を 150mAの 1/44 である3.4mAで試してみよう。そう考えてシミュレートした結果がこちら。ありゃ、基準電流が3.4mAの時、しっかりと発振している。
さて何が悪いのだろう。ちなみに、基準電流が150mAの場合は発振していない。
基準電流が小さいと想定外になるところと考えると、Q3とQ4があやしい。アンペア単位の電流を扱うパワートランジスタにmA程度の電流では不都合な部分が多そうだ。
そこで、Q3とQ4を汎用の小型トランジスタに変えてみた結果がこのとおり。基準電流を3.4mAにしても発振ししていない。読み通りの結果となった。
というか、記事のp182の「基準電流が5mAとわずかなのに...は、Tr3とTr6にチップ面積が小さいトランジスタを使っているからです」の部分の話がここで起きている事なのかな。
[1]: 黒田 徹、「ひずみ率0.0005%! 40W高効率パワー・アンプの製作」、トランジスタ技術 2019年5月号、p179-189.