株式会社AN代表取締役の向山かおりです。
前回は、サスティナブルなコーヒーの流通に取り組むBIKAS COFFEEとのコラボレート企画についてお話しました。
BIKAS COFFEEと当社の取り組み、大切にしている理念についてお伝えさせていただきました。
そして11月10日(木)には、富山県を拠点とされている前田薬品工業株式会社の取締役役員、大久保功一様とのトークイベントを開催いたしました。
前田薬品工業株式会社は、1958年の創業以来、薬都富山の地で医薬品の製造販売に取り組んできた会社。
当社のオーガニックショップでは、同社が立ち上げた天然国産アロマブランドの「Taroma(タロマ)」の商品を一部取り扱っています。
今回のトークイベントでは大久保様に、前田薬品工業株式会社がTaromaを立ち上げたきっかけや、SDGsに関する取り組み、今後の展望についてお話を伺いました。
◆今回のトークイベント開催に至る経緯
医薬品の製造販売に強みを持つ前田薬品工業株式会社が、アロマを手掛けるきっかけとなったのは、2013年に起こった出来事です。
この年、同社の医薬品におけるデータ改ざん問題が発覚し、業務停止命令を受ける事態となっていました。
前社長の後任として就任した現社長の前田大介氏は、起き上がることができないほどの心身の不調に陥り、薬を飲んでも改善しない状態が続いていました。
そんな状況の折、友人とアロマとハーブを取り扱っているサロンに行く機会があり、 アロマの香りに触れたりハーブティーを飲んだりしたところ、すっきりと起き上がれるようになり、次のアクションに移せるまでに回復されたそうです。
日本では雑貨として扱われることの多いアロマですが、アロマの人に対する力に関しては様々な研究結果やエビデンスがあり、 海外では医療の現場で患者さんの治療目的でアロマテラピーを活用したり、調剤薬局でアロマを処方したりといったことも日常的に行われているそうです。
こうしたことから前田社長は、日本の法律上は医薬品とはならないアロマの力を、あえて製薬会社として発信していくことが必要だと感じ、「Taroma(=富山のアロマ)」を立ち上げるに至りました。
Taromaの香りが生まれるまでには、原料、製造過程への様々なこだわりがあります。
原料に用いられているのは主に、ラベンダー、ヒノキ、ゆずの3種類。 いずれも富山の人々の生活に身近なものでありながら、廃棄されてしまう部分があったそうです。
Taromaの原料には、これらの植物の廃棄されていた部分が用いられており、アップサイクルを通じてSDGsに貢献しています。
また、富山の豊かな土地で育った花、葉、茎、根は手作業で収穫し、香りの抽出にあたっては富山の美しい水を用いて蒸留してできており、地元での丁寧な生産へのこだわりを感じます。
原料は農家や木こりの方から購入し、売上の一部を生産者の方に還元しているというのも特徴的と言えるでしょう。
地域の人とのつながりを大切にしながら、上質な香りを届けるTaromaの取り組みは、 地域の生活や生産者の方に貢献しながら、私たちの心身の健康や地球環境をよいものにしていきたいという当社の理念と重なると感じ、今回のコラボレート企画に至りました。
◆取り組みの特徴
今回のトークイベントで大久保様にお話を伺う中で、特に重要だと感じたポイントが3点あります。
1つ目は、Taromaの取り組みはセルフメディケーションを通じたウェルビーイングに貢献するものであるということ。
一般的には医薬品というと、「健康状態が悪化してから初めて買う商品」と考える方も少なくないかと思います。
一方で、本来は病気にならずに心身が健康でいることの方がより私たちの幸福につながるとして、予防医学やセルフメディケーションの考え方が広まりつつあります。
Taromaの取り組みは、製薬会社が従来主として取り扱っていた「病気になって初めて治療のために医薬品を使う」という領域から、 「日頃から健康状態を保つために積極的にケアする」というあり方の実現に挑戦することを示す重要なものと言えるでしょう。
2つ目は、地域の生活に根ざし、様々な方との協力関係を築くことで、持続可能な事業のあり方の実現に取り組んでいる点。
Taromaの原料は、富山の人々の営みから生じる自然のものをいかしており、 丁寧な製造過程、生産者の方にも還元する取組は、長期的に事業に取り組む上で大切なポイントだと感じます。
また、心身の美と健康を大切にした「Healthian wood」という施設の運営にも取り組んでおり、 レストランやTaromaを用いたスパ・トリートメント施設、サウナなどを、雄大な立山連峰や田園風景の中で楽しむことができます。
大久保様はこうした村づくりの取り組みについて、関係人口を増やすことが大切だとお話されていました。
地元から出て行く人もいれば、移住してくる人、あるいは複数の生活拠点の一つにするという人もいます。
このような人たちが地域に根付いて共に村づくりをしていくには、想いを共有する仲間が大切です。
「どうやったら町がよくなると思うか」と地元住民に尋ねると、「道をコンクリートで舗装してほしい」といった意見が出ることがあるそうです。
確かに生活は便利になりますが、 本質的な豊かさの実現とは、富山の豊かな自然を将来に残していけるようなあり方を考えることではないか。
「Healthian wood」の取り組みを通じて、今ある富山の自然や原風景が当たり前のものではないことに気づかせ、これを将来に残していきたいという想いを持つ人たちを結ぶきっかけとなれば、 という大久保様のお話を伺い、地元富山のよさを将来世代に引き継いでいきたいという想いを強く感じました。
3つ目は、会社としてSDGsに多角的に取り組んでいる点。
前田薬品工業株式会社は富山県のSDGs宣言に参加しており、多様な観点でSDGsに取り組んでいます。
その一つが、多様な背景を持つ人が活躍しやすい土壌づくり。
社員が働きがいをもって仕事に取り組むことが社会全体のウェルビーイングにつながるとの考えから、 社員一人ひとりがワクワクしながら働き、成長していくことで、世界でも戦っていけるような企業にしていくことを目指しています。
私たちの心身の健康の実現やアップサイクルに携わる社員自身が、 本当にやりたいことに取り組み、成長していけるようにすることで社会に貢献したいという想いを深く感じました。
◆最後に
今回のトークイベントで大久保様にお話を伺う中で、 Taromaの取り組みを通じて、地元富山の豊かな自然を将来に残しながら、私たちの心身共に健康で豊かな生活を実現したいという想いを強く感じました。
大久保様は、SDGsは目的ではなく手段とお話しされていました。
SDGsに取り組んだ先にどんな社会を実現していきたいのか、 そのビジョンを関係者で共有することが重要であるということも、今回のトークイベントを通して改めて感じたところです。
今後も当社の理念に基づき、価値観を共有する方々とコラボレートし、SDGsに関する様々な情報を発信していきます。
引き続きよろしくお願いします。