『今日は よろしくお願いします。』
素敵な笑顔で娘さんとご一緒にご来店なさったK様。
娘さんが一階でカットとカラーをし 同時に二階でK様はウィッグをご製作しました。
中村 『私が担当します。K様 お二階へどうぞ。』
娘さんは私にお辞儀をし 心配そうにお母様を見つめていました。
K様 『いつもボブなんで そんな感じにして下さい。』
中村 『クセは無かったですか?』
K様 『そうねぇ無かったわね。』
中村 『かしこまりました。自然にしてからカットしますね』
WIGのクセを落としカットをしながら いつものように またたくさんお話を伺いました
以前していたお仕事の話 もちろん治療の話や病気の話もたくさん聞かせて下さいました。
それから 娘さんがお二人いらっしゃるそうで ご一緒に来られた娘さんは K様がガンだと分かった時から
お仕事を在宅に切り替え いつも一緒に居てくれると言います
K様 『娘ってありがたい存在よね』
中村 『本当 心強いです』
色々なお話を聞きながら手は止めず
K様のお顔に合うように鏡を見ながらカットをしていきます
中村 『前髪はどうしますか?』
K様 『下ろして下さい。』
無言の空間にハサミの音が響きます
中村 『これくらいでいかがですか?』
目を開けたK様は 驚いたように
K様 『急に自然になった…』
緊張感の糸が切れた感じがしました
K様 『自分の事なんて考えてる暇がなかった
帽子の付け毛 でもいいと思ってた
病気の宣告の時も 脱毛の時も 娘達に泣かれてしまい
私は泣かなかった…泣けなかった…
まさかこんなに前と変わらない様になるなんて。
…ありがとう中村さん…』
笑顔で接してくれていたK様の目から涙がこぼれました。
私は肩をさすり ティッシュを差し出す事しか出来ません。
本当は泣きたかったけど 泣けなかったK様
K様の気持ちをかんがえたら自分自身も
胸の高まりを感じずにはいれませんでした。
心配な面持ちで私にお辞儀をした娘さんが K様の所に上がってきました。
娘さん 『えぇ凄ぉーい前のお母さんに戻ってる
すごく良いよ。良かったね』
K様 『いいでしょあなたも素敵じゃない』
娘さん 『本当に髪の毛がある時のお母さんになってる』
K様 『でしょどうどう?』
そう言って 娘さんの前でくるりと一周
娘さん 『中村さん
母を素敵にしてくれて ありがとうございました』
お二人とも 最初の笑顔に戻りました
何もなかったように振る舞うK様
おふたりのやさしい思いやり.....
そして 母娘の絆を感じるこのような場面に
私自身も少しでもかかわれたこと嬉しく思います
思いでに残る制作となりました。
K様ありがとうございました。