マカロン 1
マカロンが流行っているのでしょうか? 「あなべるお菓子教室」の生徒さんから次回のクールに「マカロン」を入れとほしいという要望がありました。
無作為で「マカロン」の画像を3つ引用させていただきました。美しい色のお菓子ですが、どのマカロンも「食品用色素」を使っているのではないでしょうか。なぜならどれも同じ色調(明度と彩度)をしているからです。「食品用色素」の是非をここで述べるつもりはありません。ただ体に対して「異物」であるものを無節制に取ることが非常に気になる私は、これらのマカロンを見て自然から得られる色素 ( すべてのものが無条件で是ではありませんが ) を利用してマカロンを作ろうと思いました。
それほどに、今の市場にあるマカロンは異常なほどに幾種類もの色粉を多量に使っています。
Free shipping America Wilton Double sugar cake pigment color paste food baking wilton 12 color pigment. Total Price: US $27.99 (Approximately )
12色で3,000円くらいです。ペースト状で使いやすくできています。
発色しにくい「赤、緑色」のマカロンは相当量の色素を使っているといいうことは、少しお菓子を作ったことのある方なら容易に理解できるのではと思います。
マカロン 2
お話は少し飛びますが、マカロンといえばフランスロレーヌ地方ナンシーの銘菓メゾンデスールマカロン ( La Maison des Sœurs Macarons ) を思い浮かべられた方もおられるのではないかと思います。
http://www.macaron-de-nancy.com/から
シェフのニコラス・ジェノー(Nicolas Génot)が運営する、1793年創業のメゾンデスールマカロンが作るマカロンは、プロヴァンス産の卵白、砂糖、アーモンドで作る、ベネディクト派の修道女のレシピを引き継ぐものです。表面にきれいに入ったヒビとアーモンドの味と香りが特徴です。(「これがマカロンなのか!」と一口頬張れば目から鱗の、存在感あるそれでいていくつでも食べられるお菓子です )
マカロンはこの他に、13世紀から作られているサン=テミリオンのマカロン・クラックレ (macaron craquelé) 、16世紀から作られているアミアンのマカロン・ダミアン (macaron d'Amiens)、ロワール地方のコルムリー修道院のマカロン、ピレネー=アトランティック県サン=ジャン=ド=リュズのマカロンなどがあります。イタリアでは16世紀にカトリーヌ・ド・メディシスがアンリⅡ世のもとへお輿入れする際にイタリアから持っていったアマレッティがあります。
マカロン 3
http://karenine.com/laduree-ou-pierre-herme-le-macaron-classique-ou-revisite/ から
最初にご覧頂いたマカロンはパリ風マカロンと言い、パリにあるラデュレ ( Ladurée ; 菓子店の経営者ピエール・デフォンテーヌが、1930年に始めたもの ) とピエールエルメ( Pierre Hermé )がパリ風マカロンを作るコンフィズリーの代表です。
ピエールエルメのレシピは公開されていますので、http://liberty-telechargement.fr/french/macaron+par+pierre+herme/ からご紹介しておきましょう。
材料:
マカロン(小80個、大20個分)
粉糖 480g
アーモンドパウダー 280g
卵白 7個
ココアパウダー 40g
コーヒーエッセンス 1/2 cu.
コチニール色素 6滴
又は 緑色素 6滴
バニラエッセンス 1 ts
つくり方:
1.粉糖、アーモンドパウダーをいっしょに篩う。チョコレートマカロンを作るときはココアも一緒に篩う。
2.卵白を固く泡立て、好みの色粉を入れる。
3.粉糖とアーモンドパウダーを卵白の中に入れる。左手でボールを回しながら木杓子をボールの中央から縁に向かって動かす。アワを潰さないように混ぜて流れるようなペーストに仕上げる。
4.オーブンを250 ° Cに加温する。
5.鉄板を二枚重ねてその上にパーチメントペイパーを置く。 # 8 の口金を使って2cmの小さなマカロンを、#12の口金で7cmのマカロンを絞り出す。
6.室温で15分間置いてマカロンの表面に皮を作る。オーブンに入れて直ぐに温度を180 ° Cに下げる。オーブンのドアを半分開けたままにして10-12分間、大きなマカロンは18-20分間焼く。
7.冷ます。冷蔵庫で2日間保存できる。
マカロン 4
http://followtheruels.com/2016/07/laduree-macaron-recipe/ からラデュレのレシピをご紹介しておきましょう。上のサイトでレシピの出所は明らかにされていませんが、おそらく次の本あたりなのでは?と思っています。
Nov 30, 2014 by Vincent Lemains and Antonin Bonnet
現代を代表するレシピをたたき台にして、本題の「天然色素を使ったマカロン」に戻ろうと思います。もう少しお付き合い下さい。
材料(36個分)
アーモンドパウダー 275 g
粉糖 250 g
卵白 6 + 1/2 個
グラニュー糖 210 g
クリームオブタルタル 1 pinch
エッセンス 1/2 ts
マカロンシェル:
1. アーモンドパウダーと粉糖をフードプロセッサーに入れて回す。
2. ボールに卵白6個を入れて泡立てる。砂糖を1/3、クリームオブタルタルを入れ、約1分間混ぜ砂糖を溶かす。残りの半量の砂糖を入れて泡立てる。1分間混ぜソフトピークまでもっていく。残りの砂糖を入れて1分間混ぜて光沢のあるメレンゲにする。(この段階で色粉を入れる)ゴムべらを使ってアーモンド-粉糖を優しく混ぜる。
別のボールに卵白を1/2入れて泡立てる。これを追加で入れて湿り気と柔らかさを出す。
3. スプンーで絞り袋の中に入れる。鉄板の上にシリコン紙を敷いて3-4 cmの円形に絞り出す。鉄板を台の上に叩いて泡を取る。約15分間静置してクラストを形成させる。マカロンがべたつかなくなったらオーブンに入れて150℃で14-15 分間焼く。
4. シリコン紙をオーブンから動かしてシリコン紙の端を持ち上げる。小さなグラスで少量の水を鉄板とシリコン紙の間に注ぎ込み蒸気を出してマカロンがはがれやすくする。ラックの上で冷まし、フィリングを詰める。
マカロン 5
アントニオ・バチュー ( Antonio Bachour;1975年、プエルトリコ生まれ。) 2011年, Baking & Pastry Innovator でノミネートされ、2012年 Zest Award を受賞。ザガット・サーベイ( Zagat Survey )は彼を confection master として取り上げました。
アントニオ・バチューのレシピ
材料:
アーモンドパウダー 125g
アイシングシュガー 150g
卵白 100g
砂糖 100g
フードカラー
方法;
アーモンドパウダーとアイシングシュガーをフードプロセッサーの中に入れて回し、篩う。卵白に砂糖を3回に分けて入れ、ソフトピークまで泡立てる。フードカラーを入れて角を立てる。アーモンドを入れて混ぜる。シリコンマットを敷いたベーキングトレイの上に絞り出す。室温で30分間静置する。137℃で12-15分間焼く。
最後に青木定治のレシピを取り上げておこうと思います。
マカロン 6
http://uchiiwai.akasugu.net/Sho/shohin/31660/group/cat_shobun/catid/0-1787 青木定治のレシピ;
材料 ( 直径3.8㎝、50個分 );
卵白 100g
グラニュー糖 30g
乾燥卵白 3g
クレームタータ 0.25g
アーモンドパウダー 142g
粉糖 200g
色粉 少々
方法;
1. すべての材料を室温に準備する。
2. 乾燥卵白、クレームタータ,色粉を混ぜる。
3. 卵白の中に(2)、グラニュー糖を入れて角が上に立つまでよく混ぜる。
4. アーモンドパウダー、粉糖を半分入れて混ぜる。粉がなじんだら残りの半量を加 える。ゴムベラを持ち上げると垂れるまで混ぜる。
5. 絞り袋に入れて1個/5gの割合で絞り出す。テーブルに軽く打ち付けて泡を取る。
6. 鉄板を2枚敷いてオーブンに入れる。180℃で予熱し、鉄板を入れたら160℃に下げ て焼く。数分で(ピケが立ったら)鉄板を一枚抜く。マカロンの裏の縁に焼き色が少し付いたら焼き上がりです。
マカロン 7
4人のレシピを比較しました。ピエールエルメとラデュレのレシピには卵白の量を「個」で表現していましたので、M卵と判断して30g/個で計算しました。粉糖とグラニュー糖を合わせた、いわゆる砂糖の量は4レシピともほぼ同じ50%付近に収められています。アーモンドパウダーの量もほぼ同量です。同じ形のお菓子を同じ食感で仕上げるのですから当然のことでしょう。
特筆すべきは乾燥卵白を使った青木のレシピです。乾燥卵白を使ったために乾燥時間が不要になり、若干ですがですがアーモンドパウダーの量を増やすことができ、砂糖の量を減らすことができました。
卵白 グラニュー―糖 乾燥卵白 クレームタータ アーモンドパウダー 粉糖 色粉
ピエールエルメ 21% 29% 50% 少々
ラデュレ 21% 23% 少々 30% 27% 少々
アントニオ バチュー 21% 21% 26% 31% 少々
青木貞治 21% 6% 0.6% 0.05% 30% 42% 少々
しかし4レシピ共に「色粉」を使っています。次回はいよいよ色粉について述べようと思います。
マカロン 8
天然色素の作り方 ( 赤キャベツを使った一例 )
材料;
赤キャベツ 一玉
ベーキングソーダ 1/4 ts
http://www.sewhistorically.com/homemade-natural-blue-food-coloring-with-red-cabbage/ から。
サイトの主は赤キャベツを例に天然色素の利用を薦めています。赤キャベツは、PH3.9以下では crimson#dc143c に、PH5~6では darkorchid#9932c に、PH7以上では midnightblue#191970 に変化します。しかもその色は耐熱性ですからマカロンのクラストとして使っても大丈夫です。
方法;
赤キャベツをスライスして水に浸け、約15分間ボイルします。漉した水を更に15分間煮ます。ベーキングソーダを1/4ts入れると色が紫から青になります。
ついでに。
作った天然色素を効率よく使うには、砂糖を加えて更に煮詰め、瓶に保管して冷凍保存すると良いでしょう。好みの発色と粘度を手に入れることが出来ます。
同じサイトの主は、http://www.sewhistorically.com/diy-ice-glasses-tutorial/ でアイスクリームに自然色素を使った例を上げていますが、残念ながらここで使っている赤キャベツ以外の色素は易熱性で、熱によって色が変化しますのでこのような使用例となったのでしょう。但し、マカロンのフィリングは加熱しませんので自由に素材を選ぶことが出来ます。
赤キャベツは、酸塩基指示薬として用いることのできるアントシアニン系の染料を含み、酸性では赤色から桃色、中性では紫色、塩基性では青色から緑色を呈します。アントシアニンを含む植物の例。発色団はアグリコン部分で、中性溶液の色はペラルゴニジンは鮮赤色、シアニジンは紫色、デルフィニジンは紫赤色になります。pH により色調は変化し、シアニジンの場合は酸性条件下で赤色、アルカリ性条件下で青色ないしは青緑色となります。
耐熱性の植物性色素には赤キャベツの他に、クチナシ、サフラン、紅花、マリーゴールド、トマト、紫蘇、赤大根、ムラサキイモ、葡萄の果皮、トウガラシ、タマリンド、タマネギ、キャラメル、イカスミ、柿、カカオなどがあります。頭と腕を使って発色の良い、安心して食べられるマカロンを作られることを願っています。
完