しかし、恭一は怒りを押し殺したような表情で歩み寄ってくると、でもこらえきれなくなったように大声で叫んだ。
「麻也! どうしようもない時はせめて逃げろよ! 俺んとこでもどこでもさ! いなくなるのだけはさあ、やめてくれよ…」
「恭一、ごめん…」
見れば恭一の目は真っ赤になっている。
麻也も…涙がこらえきれない。
真樹がそっと部屋を出て行ってくれて、二人きりになった。
恭一は大きなため息をつきながらベッドの脇に椅子に腰掛けると
「俺は俺の一存であの麻也の事故のこと諒くんに話したよ」
「…」
「お前に絶交とかされてもいいと思った。
ただ、諒くんに誤解されたまま、
麻也が諒くんを失うなんて絶対嫌だった」
「でもあれは…」
麻也はベッドの上で唇を噛み締めるばかりだった。
「でも、諒君はわかったって言ってくれた。麻也が言ってた辛いことはそれだったなら…」
そこで恭一は涙をこぼした。
「…ちゃんと確かめて、本当に大事にしてあげればよかったって。許されるなら…」
恭一はそこで早口になった。
「やり直したいって。今度は麻也さんのトラウマに触れないように優しくしたいって…」
「嘘だ」
「なんで」
「諒は責任感が強いから責任を取りたいっていうだけだよ」