真樹が、続けて両親に説明してくれる。
「…症状はもう大丈夫なんだけど、仕事疲れがひど過ぎて、静養のためにいるの。あとマスコミ対策に」
その時携帯が鳴る音が…
音が聞こえるのはサイドテーブルからで、まだ諒の携帯が置いてあってそれに着信しているのだ。
疲れている麻也は鈴木に渡されるままその電話に出た。
ー麻也さん…
諒だった。
麻也は声が出なかった。
電話の向こうの諒の困っているのも伝わってくる。
ー麻也さん、全部俺が悪かった。恭一さんから聞いてわかった。俺が変に勘違いしていたよ。本当に申し訳ない。
でもやっぱり俺は麻也さんを愛してる。
やり直したい…
麻也は無言で電話を切ると、唇をかみしめて鈴木にその携帯を渡した。
「その携帯、諒に返してください お互いに迷惑なんで」
迷惑なんて…
鈴木がそう言ってくれたのと、諒の言葉は、実は麻也には本当に嬉しかった。
でも真実を知る前の、真実を知らなかったとはいえあの諒の暴言、怒りの表情、あの時突き刺さった恐怖は、どうやったら自分の記憶から消えてくれるのだろうとも、麻也は思った。