…とはいうものの…恭一の勤めている楽器店に着いてみると、麻也は例の一件があるので恭一にも他の人にも恥ずかしくなり、
「諒、恭一いるかのぞいてみて」
「は、はい?」
いきなり麻也に言い付けられ驚いた諒だったが、言われるまま、長身をややかがめて、ポスターが貼ってあるガラス戸の奥をのぞき込んだ。
二人とも、背中に道行く人たちの視線を感じて困ってしまうが…
「二人とも何やってんの? 早く入んなよ」
店の中から恭一が慌てて出てきて、招き入れられた。
「ロックスターが先輩の子分にさせられてるの?」
恭一の言葉に三人で大笑いしてしまった。
「あれ? メシ行くの今日だったっけ?」
二人に椅子をすすめてくれながら、恭一は尋ねてきた。
恭一の様子は以前と同じで、麻也はすごく嬉しくなった。
「今日じゃないけど、デートならやっぱり楽器見たくなっちゃうじゃん。そしたら恭一の店になるじゃん」
恭一は喜んでくれたが、麻也の横の諒はハラハラして、
「あ、でも、まだこの人リハビリ中なんで、今日はお手やわらかに…」
すると、恭一はニヤりと笑い、
「いやあ、それはどうかなあ~実はいいギターが入ったんだよ…」
「あー、恭一さん、やめてえ~」