すると諒は、麻也さんごめんねと言いながら、長い腕をまわして、キスをしてきた。
麻也の方もそれに応えてしまう。いつものパターンだ。
が、すぐに、
「ごめん、麻也さん、静養中ってわかってるのに俺…ごめんね」
これまでならここでベッドに誘われたのに…ちょっと寂しい。
しかし、やっぱり、退院直後の体は情けないほど弱っていると実感する。
笑顔の諒に抱き起こされて、2人でミネラルウォーターを飲み始めた…
でもやっぱり話題に困る。
諒の、あの怒りに満ちた表情がフラッシュバックするし…
それでも麻也はどうにか、
「…ごめんね。のんびりできるはずのオフだったのに…」
などとあたりさわりのないことしか言えなくて…
諒も焦った様子で、
「あ、あの、南の島の旅行は真樹からきいて、小野くんにキャンセルしてもらったから。ドームが終わってからでも…」
麻也が病院で忘れるようにしてしまった、諒の誕プレサプライズ旅行。付き人の小野に手配してもらっていたのだ。
「あ、ああ…ごめん…」
諒の誕生日をとんでもないものにしてしまったし…
麻也の気持ちがわかったらしい諒は、無理に喜ばせようとする笑顔で、
「ドームの記念のラブラブ旅行、ってことでどう?」