後半 伊勢の娘中務をめぐる二人の親王
馬場あき子氏著作「日本の恋の歌 ~貴公子たちの恋~」一部引用再編集
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前半 伊勢の娘中務をめぐる二人の親王 のつづき
中務(なかつかさ)の交流の範囲は広く、時の左大臣実頼(のちに太政大臣)とも恋の歌があり、そうかと思えば伝記も不明の「平のかねき」に捨てられそうになった時に届けた歌もある。
秋風の吹くにつけてもとはぬかな荻の葉ならば音はしてまし
「後撰集」恋四 中務
(あなたは私にもう飽きてしまったのでしょうか。そんな飽き風が心に吹いていても、秋風が訪れるように言問うてくださればいいのに、私がもし荻の葉であったら、すぐにもそよそよとお返事しますのにねえ)
そして、かねきの愛が戻ったかどうかはわからない。しかしこの歌、中務の代表歌の一つとして後世に愛誦(あいしょう)されていった。なぜだろう。身分ある人との贈答に必ずしも名歌は生まれず、「平のかねき」というような、気軽な人への詠みかけの時の方が、自然体のやさしい歌が生まれるというのは、今も昔も変わらぬ歌の妙味がここにある。
以下 中務の歌の引用が主な内容ですので省略します。
おわり
参考 馬場あき子氏著作
「日本の恋の歌 ~貴公子たちの恋~」