「易」と映画と「名文鑑賞」

タイトルの通りです。

「口語文」 山本夏彦著 文春文庫「世は〆切」P15~

2016年03月11日 06時15分53秒 | 漢文漢籍名文鑑賞
「口語文」 山本夏彦著 文春文庫「世は〆切」P15~

(前略)
荷風は最後まで口語に抵抗した人である。春夫は文語の美しさを捨てかねて、詩はもとより序文跋文にも好んで文語を用いた。
 口語文ならかゆいところへ手が届くと思ったのが運のつきだったのである。言葉は電光のように通じるもので、説いて委曲をつくせるものではない。言葉は少し不自由な方がいい、過ぎたるは及ばないのである。
 何より口語文には文語文にある「美」がない。したがって詩の言葉にならない。文語には千年以上の歴史がある。背後に和漢の古典がある。百年や二百年では口語は詩の言葉にはならない。たぶん永遠にならないだろう。
 荷風散人や谷崎がいまだに読まれるのは、口語のふりをして文語だからである。荷風は漢詩文の谷崎は和文の伝統を伝えている。
(中略)
 私は文語にかえれといっているのではない。そんなこと出来はしない。私たちは勇んで古典を捨てたのである。別れたのである。ただ世界ひろしといえども誦すべき詩歌を持たぬ国民があろうかと、私はただ嘆くのである。

(引用終わり)

 再読三読に耐える文章こそ読むに値する文章であると思う。
 そういう意味では夏彦さんの残した膨大なエッセイの中には数々の珠玉の文章がつまっている。
 読めばわかるので、解説は不要である。小学生の作文ではないので句読点も最小限である。だから読んでいるうちに文章にリズムがあることが分かってくる。いい気分になってくる。

引用こそが人生だ。
述べて作らず。
学ぶに如かざるなり。
(合掌)

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