「機械ある者は必ず機事あり。」1 出典 岩波文庫 金谷治 訳 「荘子 第二冊 外篇」天地篇 第十二 p122~ 起承転結の「起」
子貢が南方の楚の国に旅をして、晋の国にもどろうとして寒水の南を歩いていたときのこと、一人の老人がちょうど畑づくりをしているのに出あった。切り通しの道が掘ってあってそこから井戸の中に入り、水甕(みずがめ)をかかえて出てくるとその水を畑にかけているのである。せっせと骨を折って大変な努力をしているのに、効果はさっぱりあがらない。子貢は話しかけた、「一日に百うねも水をかけられる装置がありますよ。ほんのちょっとした骨折りで、効果は大きいのですが、あなた使おうとは思いませんか。」畑づくりの老人は顔をあげて子貢をみると、「どんなものだね」とたずねた。子貢「横木〔の中ほど〕に穴をあけてそこで仕掛けを作り、横木の後端(うしろはし)が重く前端が軽くなるようにしてあって、まるで流れているように水を汲みあげ、溢れ出るように速いのです。その名まえは槹(はねつるべ)と言います。」
畑づくりはむっとして顔色をかえたが、笑いながらいった、「わしは、わしの師匠から教えられたよ。仕掛けからくりを用いる者は、必ずからくり事をするものだ。からくり事をする者は、必ずからくり心をめぐらすものだ。からくり心が胸中に起こると、純真潔白な本来のものがなくなり、純真潔白なものが失われると精神や本性(うまれつき)のはたらきが安定しなくなる。精神や本性(うまれつき)が安定しない者は、道によって支持されないね。わしは〔はねつるべを〕知らないわけじゃない、〔道に対して〕恥ずかしいから使わないのだよ。」
子貢が南方の楚の国に旅をして、晋の国にもどろうとして寒水の南を歩いていたときのこと、一人の老人がちょうど畑づくりをしているのに出あった。切り通しの道が掘ってあってそこから井戸の中に入り、水甕(みずがめ)をかかえて出てくるとその水を畑にかけているのである。せっせと骨を折って大変な努力をしているのに、効果はさっぱりあがらない。子貢は話しかけた、「一日に百うねも水をかけられる装置がありますよ。ほんのちょっとした骨折りで、効果は大きいのですが、あなた使おうとは思いませんか。」畑づくりの老人は顔をあげて子貢をみると、「どんなものだね」とたずねた。子貢「横木〔の中ほど〕に穴をあけてそこで仕掛けを作り、横木の後端(うしろはし)が重く前端が軽くなるようにしてあって、まるで流れているように水を汲みあげ、溢れ出るように速いのです。その名まえは槹(はねつるべ)と言います。」
畑づくりはむっとして顔色をかえたが、笑いながらいった、「わしは、わしの師匠から教えられたよ。仕掛けからくりを用いる者は、必ずからくり事をするものだ。からくり事をする者は、必ずからくり心をめぐらすものだ。からくり心が胸中に起こると、純真潔白な本来のものがなくなり、純真潔白なものが失われると精神や本性(うまれつき)のはたらきが安定しなくなる。精神や本性(うまれつき)が安定しない者は、道によって支持されないね。わしは〔はねつるべを〕知らないわけじゃない、〔道に対して〕恥ずかしいから使わないのだよ。」
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