空気調和・衛生工学会と日本建築学会は2020年3月23日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて「換気」に関する緊急会長談話を共同で発表した。
緊急会長談話では、効果的な換気の方法などを紹介している。
空気調和・衛生工学会は、「設計事務所などに、換気に関する問い合わせが多く寄せられている。一刻を争う時なので、正しい情報を発信するために談話を発表した」と語る。
空気調和・衛生工学会と日本建築学会が2020年3月23日に緊急会長談話を発表した。
新型コロナウイルス感染症について政府は、
(1)換気の悪い密閉空間、
(2)多数が集まる密集場所、
(3)間近で会話や発声をする密接場面、の3条件がそろうとクラスター(小規模な患者の集団)発生のリスクが高まると指摘し、換気の励行や人の密度を下げることなどを求めている。
これまで、ライブハウスのような換気が不十分な密閉空間で、1人の感染者が生み出す2次感染者数が特に多いことが医学論文で発表されている。政府の指摘はこの論文を踏まえたものだ。
厚生労働省が設けた新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は、2020年3月9日に見解を公表した。図は、これまでクラスター(集団)が確認された場所に共通する3つの条件を示したイメージ
ただ、「密閉空間」とはどのような空間を指し、どれぐらい換気をすれば感染リスクを抑えるのに有効かは十分に分かっていない。
厚生労働省の専門家会議も、可能であれば2方向の窓を同時に開けて換気することを促すにとどまる。
では、どのように換気をすればよいのか。緊急会長談話では、窓がある部屋や乗り物の場合、積極的に窓を開けて自然換気をすればよいとする。
一方、機械換気で空気環境を制御している高層のオフィスビルなどの場合、通常は省エネルギーを考慮して外気導入量を絞っているケースが多く、運用を見直すだけでも効果を高められるという。
冷暖房効率は悪くなるかもしれないが、劇場や電車などでは既に外気導入量を増やしているところもある
機械換気を適切に行うには、給気口が開いているか、物などで塞がれていないか、再確認することも重要だ。
一般の誤解が多いのが、家庭用エアコンや、天井などに設けているパッケージエアコン。空気を循環させているだけなので、換気効果を求めるならば窓を開けたり、換気システムを運転したりする必要がある。
家庭用の空気清浄機については、十分に効果があるかは不明だ。機械を通過する空気量は、部屋の空気を入れ換えるのに必要な換気量に比べると少ない。欧州暖房換気空調協会が公表したガイドラインでは、機種によって効果に幅があるため、通常の換気を行うことを推奨している。
まだ不明な点も多い新型コロナウイルスの感染症対策。
近いうちに、窓がない部屋で換気を行う方法や、どのように換気システムを運用すればよいかなど詳しい解説を両学会から情報発信していく予定だ