遊びをせんとや

人生総決算!のつもりで過去・現在のことなどを書きます
といっても肩肘はらずに 楽しく面白く書きたいと思います

檀一雄を巡る女たち・男たち~その5「ヨソ子が書く#3」

2023年07月26日 | 読書


【山寺の暮らし】
1946(昭和21) 一雄34歳 太郎3歳
 山寺に間借りした檀親子は時々山を下りて瀬高の商店街で買い物をする。
 偶々、東京で知り合い瀬高に疎開していた児童文学者の与田凖一と出会う。
 与田が寺を訪ねたり、檀親子が与田の家を訪ねたりして交友を再開する。
 この山寺の暮らしの中で、檀は「りつ子・その愛と死」の構想を育てた。
 ゆかりの地近く、檀が妻を偲んで詠んだ歌が刻まれた石碑が立っている。


 つくづくと はじのはあかく そみゆけど したてるいもの ありといわなく

【待鳥(まちどり)サロン】
 与田と再会した檀は、文学仲間が集う待鳥サロン」に誘われる。
 サロンは瀬高の待鳥邸で開かれていた。
 待鳥邸は、姉の待鳥京子、妹の波江、富士子、三女、母春野の女所帯。
 待鳥京子が作家志望だったので、自邸を文学仲間の集いの場にした。
 檀はよく顔を出すうちに、離れの部屋を借りて太郎と居つくようになる。
 作家仲間を呼び寄せたり、病気療養中の浪江に料理させたり・・・。
 困った母春野が与田と相談、檀親子に山寺へ戻ってもらうことにした。

【待鳥サロンと山田ヨソ子」
 実家に戻ったソヨ子は、近くの待鳥家の波江と女学校時代の友達だった。
 卒業後も付き合いが続き、お茶を飲みによく待鳥家へ行った。
 三姉妹と一緒にいちご狩りやピクニックにも出かけた。
 (この時の縁で、後々、ソヨ子は京子を頼ることになる)

【ヨソ子と檀の見合い】
 与田の計らいでヨソ子は檀と見合いをする。
 奥さんに死なれた子連れやもめ、山寺暮らし・・・くらいしか知らなかった。
 結婚するには条件のいい相手ではない、とヨソ子(沢木)は書いている。
 もっともヨソ子には再婚の意志がなかった・・・とも。
 与田に悪いと思ったのか、ヨソ子は待鳥邸での見合いを承知する。
 その時の檀の印象はこう書いてある。(引用が少し長くなるが)

 <長身だったが少し猫背で歯が出ている。
  しかし、私にはその檀の姿が颯爽として見えた。
  そのときの颯爽とした印象は、死ぬまで変わらなかった。
  のちにさまざまなことがあったにもかかわらず、
  私が檀を決して嫌いにならなかったのは、
  このときの颯爽とした印象がいつまでも残っていたからだ。
  それは、こう言い換えてもよいかもしれない。
  檀は死ぬまで、そのときの印象を変えなければならないような存在には
  ならなかったのだ、と。>

1946(昭和21) 11月 一雄34歳 太郎3歳 ソヨ子23歳
  檀とソヨ子は、檀の義母が住む三井郡の松崎で結婚式をあげた。
  近親者だけ20人ほどのささやかな式だった。


式・披露宴を終えた後で・・・与田は仲人、中谷は作家仲間

1947(昭和22)
結婚の翌年、檀は仲間と語らい劇団「珊瑚座」を結成する。
ここで早くも「火宅の人」の愛人が登場するのだが、続きは次回に回そう。

それでは明日またお会いしましょう。

[Rosey]

檀一雄を巡る女たち・男たち~その4「ヨソ子が書く#2」

2023年07月25日 | 読書


りつ子が亡くなり、檀と太郎は福岡の遠縁の家に身を寄せ、
その家の出戻り娘との再婚を望むが果たせなかったところまで書いた。

次へ進む前に。りつ子の写真が見つかったので載せる。
1942(昭和17) 博多の太閤園での結婚披露宴


太郎を抱く律子


生後94日の太郎の絵 by 檀一雄

1946(昭和21) 一雄34歳 太郎3歳
 入り婿の道を断たれて居づらくなった檀は、太郎を連れて家を出る
 その村の善光寺という山寺の住職宅2階の借間 に住む
 住職の寛照は文学にも通じ、檀や作家仲間との話にも時折加わった

 
住職と檀と作家仲間

善光寺住まいの頃の檀と太郎


善光寺住まいの頃 山に遊びに出かけた檀と太郎

今日は、写真紹介だけで終ってしまった。
このあと、待鳥サロンという文学仲間の集う話、待鳥姉妹と山田ヨソ子、
「火宅の人」の愛人矢島恵子こと入江杏子、檀とヨソ子との見合い話、
などが展開するのだが、時間切れなので明日に回す。
それでは明日またお会いしましょう。

[Rosey]

檀一雄を巡る女たち・男たち~その3「ヨソ子が書く」

2023年07月24日 | 読書



昨日の日曜日に到着する筈の「ある昭和の家族」の本。
私の勘違いで来るのは次の日曜日だった。でも、別の本が届いた。
沢木耕太郎著『檀』・・・購入したのを忘れていた。
練り直した攻略法だったのに・・・また、変更だ。
1995(平成7年)新潮社より発行

この本は、沢木が週一度ヨソ子の家を訪れて1年ほどかけて取材したもの。
それをヨソ子が一人称で檀一雄や子供や愛人のことを書く形になっている。
すなわち、沢木という聞き手、書き手はどこにも姿を現さない。珍しい手法。

以下、経年で檀とヨソ子の主なエピソードを書いてみる。

1912(明治45) 檀一雄、山梨県都留市で生まれる
       (彼の父母兄妹は「昭和の大家族」を読んでから改めて) 

1923(大正12) 山田ソヨ子、福岡県柳川市近郊大和村の地主の家に生まれる    
       姉と二人の兄とすぐ下の妹の五人兄弟
       ヨソ子は本名 生まれて来る女児が次々死んでしまった
       <彼女が生まれたら「よその子」として育てよう>
       両親の意向でヨソ子と名付けられ、大事にそだてられた
       尋常小学校を卒業し、柳川の高等女学校に通う
       読書や理数系が好きで、背が高いのでバレーボール部
       卒業後は、家に入って結婚に備える道を選んだ。

1941(昭和16) 檀は福岡の開業医の娘高橋律子と結婚する 一雄29歳
       檀の母トミの勧めで見合いした結果の事だった。

1942(昭和17) 檀と律子は石神井に居を構える       
       ヨソ子、海軍中尉武藤と見合いをして結婚する ヨソ子19歳

1943(昭和18) ヨソ子の夫武藤が戦死する
       夫の両親から義弟との再婚を望まれるが断る(義弟も戦死) 
       檀と律子の長男太郎が生まれる

1944(昭和19) 檀は報道班員として中国へ渡り、各地の戦場を回る 

1945(昭和20) 東京の空襲が激しくなり、律子と太郎は福岡の実家に戻る
       律子が腸結核に罹る 檀は終戦直前に帰国し律子を懸命に看病

1946(昭和21) 律子が死去 檀と太郎は福岡の遠縁の家に身を寄せる
       その家に出戻りの娘がいて、檀は入り婿の形での再婚を望む
       彼女には進駐軍に好きな人がいて檀の望みは叶わなかった

沢木耕太郎の本のお陰で、ヨソ子や律子の人生が少し見えて来た。
でも、まだ先は長く、「りつ子」や「火宅の人」も同時並行読み。
目も霞んで来たので、この続きは次回に回そう。
それではまた明日お会いしましょう。

[Rosey]

檀一雄を巡る女たち・男たち~その3「本待ち草」

2023年07月23日 | 読書


檀一雄を攻略?するのはかなり難儀そうだから、こんな風に考えていた。
「リツ子」「火宅の人」を読みながら、長男の太郎、長女のふみが見た父、
ヨソ子が見た夫、情婦杏子が見た情夫、の順で攻めてみよう・・・と。
ヨソ子は書いていないが、沢木耕太郎が彼女を取材して書いた本がある)

ずいぶん迂遠な道のりだが、それしかないな、と思っていた。
が、昨夜、ふと考えた。
家を転々、旅を転々、食を転々、愛人を転々・・・
檀の人生の寄る辺の無さは、子どもの頃に身についたのではないか?

これは彼の略年譜を作った時にも感じたが、生まれて幼少時の情報に乏しい。
昨晩、再度調べ、父・参郎、母・とみの長男として生まれたことが分かった。
妹が3人いたが、檀が中学入学の年に両親が離婚。
その後、再婚した母とみは、6人の異父姉妹をもうけた。

あとは、この本を読むしかなさそう・・・なのでネットで注文。


その本が本日到着予定、それまで「本待ち草」というわけ。
それじゃ愛想が無さすぎる?
では、長男檀太郎のエッセイをネットでどうぞ。(2014年のものですが)
 
若い頃の写真もありました。

左から太郎の妻春子・太郎・ヨソ子・一雄

それでは明日またお会いしましょう。

[Rosey]

檀一雄を巡る女たち・男たち~その2 

2023年07月22日 | 読書



文庫本の「火宅の人」を読み始めて、唸ってしまった。
 

昔、単行本で読んだのが昭和50年・・・覚えていなくて当然である。
ただ、今は坂口安吾を通じて、檀に関する知識も増えた。
数頁読むと、<私の子供はもう4人、名前(年齢)が記述されている。
長男一郎、次男次郎、三男弥太、長女フミ子、この春流産しなければ5人・・・。

小説だから実際と違っていいが、年譜などから彼の妻と子供を整理してみた。

妻律子     檀年齢 子どもの生年  1946(昭和21)死去
 長男 太郎  31歳     昭和18(1943)
妻ヨソ子(小説ではヨリ子)       2015(平成27)死去
 次男 次郎  38歳  昭和25(1950) 1955日本脳炎発症 64死去
 三男 小弥太 41歳  昭和28(1953)
 長女 ふみ  42歳  昭和29(1954)
 二女 さと  44歳  昭和31(1956)
        同年 入江杏子と蔦温泉で「事」を起す。

「事」を起す、というのは檀流記述法で、女性と愛人になり性交渉すること。
入江杏子は劇団女優。(小説では矢島恵子)


入江杏子 1927(昭和2)ー? 劇団女優


 ヨソ子・ふみ・檀一雄

一見、フツーの家庭に見えるが、この頃は「事」が起こった後の筈だ。
妻ヨソ子や娘ふみは、夫、父をどう見ていただろうか。
それらも調べて話を綴っていくことにして、今日はここまで。
それでは明日またお会いしましょう。

[Rosey]