亡き次男に捧げる冒険小説です。
一九
興奮状態のまま三人は互いの肩を叩き合った。
「テーリ、あの正確な石の投擲。恐れ入ったよ!」
ハーラがテーリの髪をクシャクシャに撫でる。テーリは照れ臭そうにハーラの手を跳ね除けると、そのまま手を大きく回して、ナーレの臀部を鷲掴みにした。
「いい突きだったぞ、ナーレ!なにもないところを全力で殴るのは、あれ、渾身のギャグだろ?」
健闘を讃えながらも、ナーレのチョンボを嫌味ったらしくからかった。
「テー兄は僕とハー兄の治癒魔法がなかったら死んでたからね。おちょくるもんじゃないぜ!」
ナーレは拗ねて見せて、テーリを困らせた。テーリは笑いながら、すかさず手を合わせて謝罪した。暫くはそんなふざけ合いをしていた三人だったが、次第に興奮が冷めると、初対面であることを改めて思い出して、瞬く間に押し黙ってしまった。こいつら、何者なんだ?今まで押さえ込んでいた当然の疑問が頭をもたげた。三人とも、気不味そうに互いの目を見やることしかできなくなった。
【第1話 二〇に続く】
次回更新 令和6年12月26日木曜日 午前9時
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用語解説
なし