旧・鮎の塩焼キングのブログ

80年代を「あの頃」として懐かしむブログでしたが、子を亡くした悲しみから立ち直ろうとするおじさんのブログに変わりました。

冒険小説 ハテナの交竜奇譚 第1話 その20

2024-12-26 12:32:00 | 小説
その20まで進みました。そろそろ第一話も終わりそうです。テーリ、ハーラ、ナーレはこの先どうするのでしょうね? 

二〇

 沈黙が続く。長い沈黙にいたたまれなくなったハーラが口を開いた。

「見た感じ、僕がこの場では年長者のようだ。僕が話そう。まず僕らは…初対面だ。間違いないね?」

二人の顔を覗き込むと、テーリとナーレは慎重に首を縦に振った。三人の認識は一致している。会ったこともない人物の名前を自然と呼んでいた。そして身を案じあっていた。彼らと自分の繋がりはなんなのだろう。ますます頭の中がこんがらがっていく。考えても答えは出ないが、テーリの顔を見ているうちにハーラは感情の昂りを抑えられなくなっていた。

「変なことを言うんだが…。」

ハーラは言葉を選びやがら、ゆっくりと続けた。

「テーリ、僕は君の顔をこうしてまじまじと見ていると、訳もわからず泣けてくるんだ。」

ハーラは本当に変なことを言い出した。言葉では言い表せない切なさがハーラの心を占めていた。ハーラの目から大粒の涙がこぼれ落ちた。

「ハー兄…。僕もなんだよ。テー兄、ずっとそばに居てくれよぅ。」

ハーラと同じくナーレも大粒の涙をこぼし、テーリに抱きついた。初対面なのに自分のことで泣いている。事情はさっぱりわからないのに。とても奇妙な光景なのに。テーリも自然と泣けて来た。

「ごめんよぅ…ごめんよぅ。」

この二人になんの悪さをしたのか皆目見当もつかないが、申し訳なさに押し潰されたテーリは謝りながら号泣した。三人は肩を抱き合い泣くに任せた。泣きたいだけ泣いた後、ハーラが呟いた。

「僕は、お前たちと旅がしたい!」



【第1話 二一に続く】

次回更新 令和6年12月28日土曜日


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用語解説

なし