小学校の頃に、友達と遊ぶ場合は、学校の下校時などに、「〇時に、どこそこに集合」・・・などの約束をして、集まったりすることもあったが、そうでない場合は、たいがいいきなり相手の家の前に行って、
「〇〇君、あ~そ~ぼ~(遊ぼう)」などと少し大きな声で呼び出すことも多かった。
この、いきなり相手の家の玄関に出向いて、「〇〇君、遊ぼ~」と呼び出すパターンは、大人になって誰かと遊ぶ時は考えられないパターンのような気がする。
まあ、小学校の頃は、いきなり相手の家の前に行って呼び出しても、たいがい相手は家にいたから、まだよかった。
でも、もしいなかったら、とんだ「労力の無駄」である。
このパターンは、小学校などの場合は、級友は、歩いてさほど遠くない(時にはすぐ近く)ところに家があったからよかったんだろうね。
もしも、電車やバスなどに乗らないといけないような遠方に相手が住んでた場合、行って相手がいなかった場合、リスクが大きすぎる。
こうした、直に相手の家にいきなり出向いて呼び出すパターンの場合、呼び出された方は実際断りにくい。
なにせ、自分を呼びに来た相手が、目の前にいるわけだから。
まあ、それでも「かったるいから、やめとく」と言って断る強者もたまにいたけど(笑)。
その「かったるいから、やめとく」と言って断った奴は、そんな時は勉強などをしていたからというわけではなく、手作りのボードゲームなどを鉛筆書きで作っている最中だったりした。
その子にとってみれば、せっかくゲームを作っている最中で、一刻もはやく完成させたいから、級友の遊びの誘いなどによって中断されたくない・・そんな心境のようだった。
そうなると、その子の家に行った側の数人は、当てが外れた格好になり、当初の予定が狂い、「さてどうしよう」ということに。
予定よりも少ない人数で遊ぶ場合もあれば、誰か他の子を探す場合もあれば、あるいはその断った子の家にあがりこんで、まだ製作途上のゲームで遊ばしてもらうことに。
そして、まだ未完成のお手製ゲームの改良点などを指摘したり、追加設定などのアイディアを出したり。
その場合、断った側も、断られた側も、外で遊ぶことはなかったものの、お目当ての子の部屋でしっかり遊んだことになった(笑)。
この、直に相手の家にいきなり行って、相手を呼び出す・・・というパターンは、なまじアポイントをとっていないぶんだけ、気まずい雰囲気になることもある。
このパターンは、あくまでも、相手が家にいる場合だとやりやすい方法なのだ。
そうじゃない場合・・・たとえば、相手の家に直に呼び出しにいったつもりが、相手が家の前にいて、何かをやってる最中だったりすると、ちょっとバツが悪い時がある。
それは、小学校時代、相手は当時私が仲良かったY君。
私の家の前にある道は、当時、私の家の前で行き止まりになっていた。
その時私は家の前の道で、親とキャッチボールをしていた・・・と思う。
すると、私のいる道を遠くから私の家に向かって歩いてくる子供がいた。
最初は分からなかったが、彼が近づいてくるにつれ、それはY君であることが分かった。
Y君は、道をまっすぐに歩き、どんどん私の家に向かって歩いてきていた。
私は当時視力は良かったが、Y君は視力がよくなかった。
なので、私と彼の距離が近づいてきて、最初に相手を認識したのは私の方だったと思う。
私は近づいてくるのがY君であることが分かった時、Y君は自分の歩く道の先にいる少年が私であることにまだ気づいていなかった。
私はてっきりY君が、私を遊びに誘いにきたのだと思った。
だが・・
Y君がだいぶ私に近づき、自分の行き先にいる人物が私であることがやっと分かった瞬間!
彼は、一瞬チラッと私と目があった瞬間・・・わきの路地に曲がってしまったのだ。
しかも、90度に方向転換して・・だ。
さらにしかも・・・何食わぬ顔で、「たまたまここを通りがかっただけだ」という表情をしながら。
挨拶もせず。
しかし私は知っていた。Y君が唐突に90度に方向転換して進んだ道の先には、彼の友人の家はなかったということを。
私の住んでる家の周りには、Y君が普段よく遊ぶ子は住んでなかったのだ。
仮に、もしも彼が、どこか違う目的地に行くつもりであったのだとしたら、私の家の前の道をわざわざ通るのは遠回りになっていたはずだ。私の家に続く道は、大通りからはずれて枝分かれした道だったから。
つまり・・・
どう考えても、Y君は、私を誘いにきたのだ。
私の家の玄関前に来て、「だんぞう君、あ~そ~ぼ~」と言うつもりだったのだ。
ところが、来ようとしたら、私は家の前の道路にいて、親とキャッチボールをしていた・・というわけだ。
その時の私は、Y君が私のすぐ近くで、いきなり90度に方向転換して、路地に進んでいってしまったことで、キョトンとしていた。
「あれ? 彼、どうしたんだろう。どっか行っちゃったよ。僕に用事があったんじゃないのか・・」なんて思いながら。
すると、Y君の様子を見ていた私の母が、
「だんぞう、Y君はあんたを呼びにきたんだよ。行ってあげなさい。」と諭した。
「やはり、そうだよね」などと思いながら、私は親とのキャッチボールを中止して、Y君の曲がった路地の方に、やや駆け足で行った・・・と思う。
その時のその後の記憶は、もう私の頭の中には残っていない。
路地でY君は立って、私が来るのを待っていたのか、あるいはあくまでも「たまたま通りがかっただけだ」という素振りを貫いたまま歩いて進んでいってたのか、もう私は覚えていない。
だが、どちらにせよ、Y君に声をかけて、一緒に遊んだ・・んだと思う。
この、直進して一心不乱に私の家を目指して歩いてたのに、私がキャッチボールをしてるのを見て、急に90度に方向転換して私の目の前から消えたY君は・・・
きっと、バツが悪いとでも思ったのではないか。間が悪かった・・とでも思ったのだろう。
なぜか、Y君は気まずく思ったようだった。
Y君も私も、何も悪いことなどしていないのに。
今でこそ誰かと会ったり、遊んだりする時は、あらかじめ約束をしておいたり、携帯などでやりとりをして「アポイント」をとった上で合流するが、子供時代の「いきなり相手の家の玄関に行って、あ~そ~ぼ~と呼び出す」パターンは、相手が家にいて、しかも暇している時にいいのだろうね。
相手にも都合や気分はあるわけだし。
相手の家にいきなり行って、相手が何かをやってる最中の姿が目に見えたりしたら・・・・そりゃ、誘いづらく思っても不思議じゃないし、相手の家までわざわざ出向いたのが無駄になったりするリスクもあるし・・。
へたしたら気まずかったり、あるいは「たまたま通りがかっただけ・・という振る舞い」をして、その場からフェイドアウトするしかなかったりする。
あの時のY君の気持ちは、理解できる。
今となっては、あの時「あんたを呼びにきたんだよ。だから行ってあげなさい」と私に諭した親には感謝している。