さて、この旅行最後の日になった。
この日私は東京に戻らなければいけない。
帯広の町に出てみれば、なんと気温は35度。東京と変わらない暑さ。
↑ 帯広駅前。鉄道が現役で通っているだけあって、開けた町だった。駅ビルで食べた蕎麦がうまかった。
↑ 帯広駅前のロータリー。バスの発着所あり。暑かった。
↑ この日の帯広の気温は、なんと35度!北海道でも、こんなに気温が上がるんだね。
だが、湿気がないぶん、東京よりは快適だ。
やはり、北海道の夏は実にいい。
あらためて、そう思った。
東京に帰ったら、またあの湿気に包まれるのだろう・・・そう思うと、ちょっとうんざりで、東京に戻りたくなかった。
このまま夏を北海道で過ごせたら、どんなにいいだろう。
それは、夏に北海道に来るたびに、いつも思うことだ。
最後のこの日、飛行機の時間まではけっこう余裕がある。
なので、帯広の町から近くて手ごろに行ける真鍋庭園に行ってみた。
庭園というと、日本庭園みたいなものを連想していた私。
そういえば、春に名古屋に行った時にも日本庭園には行ったっけ。
そう思うと、最初はさほど気乗りしなかったのだが、帯広の町からの近さや、飛行機の時間までの空白時間を考えると、最後の日に少し立ち寄るにはもってこいの場所にも思えたので、行ってみた。
バスを降りて庭園に向かう道には、白樺が並び、いきなり良い雰囲気。
↑ 真鍋庭園に続く道。白樺と日影が、避暑地っぽくて、いい感じ。
で、庭園内に入ってみたら・・・これが予想以上に良かった。
↑ 真鍋庭園、入口。この入口だけでも、武家系の庭園ではないことがわかる。 しゃれた感じ。
そこは、私が連想していた日本庭園みたいな庭園ではなく、植物が見事な色合いで並び、ルートは、絵になる場所がいっぱい。そこは洋風庭園という感じであった。
では、真鍋庭園内の様子を、写真で紹介していこう。
↑ この風景は、日本庭園っぽさがあった。
↑ 晴れてると、やはり気分がいいね。
↑ 洋風の建物が庭園の中に。日本庭園にはこういう建物はない。
↑ 植物の色合いがきれい。 色合いが絵になっていた。
↑ こういう風景、何気に好きかも。歩く私はそんなオシャレじゃなくても、風景がオシャレ。
↑ 歩いてて、中々楽しい。青空によく映える植物たち。 のどかだ。優しくなりたい。
↑ お気に入りの風景。ほんと、よく手入れされている。スタッフの努力だね。
↑ 庭園内の展望台から、見下ろす。ふう・・・と、ちょっとひとやすみ。
↑ 存在感がある。 どうですか、この感じ。もうちょっと引いて、木のてっぺんまでアングルに入れればよかったかな。
↑ なんとなくパチリ。
↑ せせらぎにかかる木橋。 日影が優しい。
↑ 日影に入ると、涼しい。
↑ 水面に映る木々。上下一体となった風景。 水面鏡という感じ。
↑ こんなの、見つけた。
↑ 河童の形に掘りこまれた木。愛嬌があって、カワユス。
↑ お気に入りの風景。空と木と、池に絨毯のように浮かぶ水草。その対比が好き。
↑ いやあ、よく手入れされている。この色合い、オシャレだなあ。
↑ 向こうの木々が、クリスマスツリーのようにも見え。
帯広の町で何時間か余裕があるなら、車で15分くらいで行ける真鍋庭園は、お勧め。
さて。
襟裳岬に行く・・ということを目的で計画した、この旅行。
襟裳では天候に苦労したが、行けたという意義は自分の中では大きかった。
帯広ではそれなりに天候に恵まれたが、肝心の襟裳岬では、決して天候には恵まれなかった。
それを襟裳岬は、私に対して申し訳なく思ったのか(??)、最後の最後に襟裳岬は最高の姿、とっておきの風景を私に見せてくれた。
それは去りゆく私への襟裳の挨拶だったのかもしれない。
で、その最高の姿、襟裳の挨拶は何だったか・・・というと。
↑ 帯広空港。今回の旅行で初めて来た空港。
帯広空港に戻った私は、東京に向かう飛行機に乗った。
行きは、私は飛行機内の真ん中の席であったが、帰りは進行方向右側の一番窓際の席になった。
飛行機はテイクオフ時間を多少オーバーして、動き始めた。
で、一気に加速し、フワッと宙に浮き、空に進んだ。
せっかく窓際の席になったのだから、なんとなく窓の外の景色を私は見ていた。
離陸して、北海道の大地が窓の下に広がっていた。どこまでも広い。
しばらく窓の外を見てたら、飛行機は海にさしかかった。
陽光に照らされた広大な海は、ちょっとした鏡のように太陽の光を反射させていた。
すると・・目の前に、斜めに長く続く海岸線が現れた。
海面には白波が立っている。きっとこの日も波は高かったのだろう。
その海岸線は、長く長く続いていたかと思うと、いきなり大地が細くなった。極端に。
どんどんやせ細っていく大地は、やがて剣先のように尖って、海に突き出ていた。
「あれ??」
「これって、もしや・・」
そう思い私は、機内の座席のポケットにあった本の中の、その飛行機の空路案内のページを開いた。
すると・・・私の「もしや」は「確信」に変わった。
今自分が乗っている飛行機の空路のルートに、ぴったり合致する位置関係、見え方。そして、テイクオフしてからの時間的なタイミング。
そして眼下の、あの特徴的な地形。
今窓の下に見えている、剣先のように尖って海に突き出ている場所は・・・
どう見ても
明らかに
あの襟裳岬ではないか!!!
太陽の光を反射した広大な海の上に、とてつもなく大きな北海道の大地の一部が、剣先のように鋭くとがって、海に突き出している、その様。
襟裳岬を今私は、リアルタイムで大空から見おろしていたのだ。
見れば、襟裳近辺のエリアは快晴。なので、かすむことなく襟裳の穂先の全景が見えていた。
襟裳は私に別れの挨拶をするために、見送りにきてくれたかのようだった。
↑ おお! あの地形は、さては・・。
↑ この地形! 鋭い剣先のようにとがった大地が、海に突き出ている!こんなに尖っていたら、海としては、痛いだろうな。
↑ 尖った大地よ、君の名は・・・襟裳岬だね? 北海道を去る私を、見送ってくれてるんだね。こんな天気の日に、君を訪れた旅人は幸せだろうね。快晴じゃないか。
↑ 襟裳岬が遠ざかる。北海道が後方に消えてゆく・・。それにしても、よく尖っている・・。あの尖った剣先のような場所に、数日前私は居たのだ・・。そして、あの岬の近辺で私は遭難しかけたのだ(笑)。なんともはや。
その時、襟裳岬に感情がもしあれば、こんな風に私に声をかけていたのかもしれない。
「ごめんね、せっかく来てくれたのに、雨や霧が多くて。特に最初の日は苦労させちゃったね。せめてものお詫びに、去ってゆく君に見送りをさせておくれ。」とでも言ってるかのようであった。
さらに、視界から消える瞬間には「バイバイ。これに懲りず、ぜひまた来ておくれ」とも。
大空からの襟裳岬の剣先の全景の眺めを、私は凝視した。
写真を撮りながらも。
感動的だった。
もしもその飛行機内での私の席が、真ん中だったり、進行方向左側の窓際の席だったりしたら、襟裳の見送りは見れなかっただろう。
進行方向右側の窓際の席で、しかも去ってゆく襟裳が翼で隠されない、飛行機後方の席だったから見れたのだろう。
襟裳岬は、最後の最後に、その剣先の全景を、快晴の空の元、「航空風景」で見せてくれたのだった。
私の去り際に。
バイバイ、襟裳岬。
やがて襟裳岬は・・・視界の遥か後方に消えていった。
海の広がりと共に。
襟裳を無情に遥か後方に押しやった広大な海は、相変わらず陽光に照らされ、キラキラ光り続けていた。
襟裳岬・帯広の旅 おわり
↑ 北海道を離れて、陽光を浴びて光る海。 海水で隠された地形は、いかに?
↑ 雲海の上は、いつも快晴。大気を宿す、地球。
私の拙い「襟裳・帯広旅行記」に、最後までお付き合い下さり、ありがとうございました。
最後になりますが、今朝襟裳岬の近海に物騒な武器が飛んだみたいですが、それはこんなきれいな景色の中を飛んでいたことになります。
このあたりの空を飛んでいたことになります。
それで・・いいいんですか?この景色をよく見れば、答えは明解なはず。
なにより、この景色が答えを提示していると思いませんか。
雲の上はこんなに晴れてるのに。
窓から襟裳岬の姿が見えた時、感動しました。
その気持ちが文章に出てたかもしれませんね。
故郷を離れる時の風景は、電車などから見るのと、飛行機から見るのとでは、感じ方が違うでしょうね。
飛行機からだと、ふるさとの全景が見えたりしますから、かなり幅広い記憶を映し出してくれるんじゃないでしょうか。
で、そこには、ふるさとへの愛情も溢れてくるのでしょう。
感受性の強い方なら、なおさらでしょう。
私など、宿に着いたら、なにもしない、、、というのも最高の贅沢であり、それもまた旅の楽しみだと思います。
部屋で、ただただ窓の外の景色を見て、自然の音を聞いて時間を過ごすのは、実に良いもんです。
私は、宿では、テレビもつけないことが多いです。
静けさもまた良い。
本をよむ、、、それも良い過ごし方でしょう。
私など、静かな環境の中、ハンディーゲーム機で遊んだりしたこともあります。
なにもしなくていい、、、ってのが良いんです。
宿から出て散歩してもいいですし、しなくてもいい。自由に過ごせばよいとおもいますよ。
初めて泣きました・゜・(つД`)・゜・
「襟裳岬」が旅行最後の日、最後の瞬間に、だんぞうさんを見送ってくれたんですね!
涙が止まりません!
だんぞうさんの文章と写真と、そして温かい心が共演していて、これほど美しい風景を見たことがありません。
なお私も、故郷大分県から飛行機で東京へ帰る日のことです。
離陸した飛行機の窓の下を見ると、海です。
私たちを海水浴や潮干狩りで楽しませてもらった故郷の海。
それが、だんだんと遠くなっていく…。
故郷の山も町も、遠くなっていく…。
私の瞳は、熱いものが込み上げてきます。
やがて飛行機が旋回して、全く故郷が見えなくなり…。
他のお客さんやCAの方が驚くほど号泣したことがあります。
お互いに飛行機の中でのドラマ、持っているんですね( °∇^)
音楽をやってらっしゃるからか、読んでる間ギターの弾き語りが聞こえてくるような気がします。
私が今回のような旅行記を読んで思うのは、旅を楽しめる人が本当に羨ましいという事。
いえ、別に事情があって旅行ができないという事ではありません。私もいい歳ですから、公私ともに国内外そこそこ旅行はしています。でも、仲の良い友人と行った時も、付き合ってた女性と行った時も、自分自身が楽しかったという記憶がありません。
例えば温泉に行って、紅葉がきれいな渓谷が近くにあっても足を伸ばしてみようという気になりません。温泉にしても多分湯に入るのは一度だけ、普段の入浴と何も変わりません。だから宿に着いたら何をしていいのか分からず、ヘッドホンで音楽聞きながら持ってった文庫本を読む…もちろんツアーなんかだと状況は変わりますよ。なにしろスケジュールが決められてますからね、勝手に動く訳には行きません。「バスに残りたい」と言ってもほとんどの場合「困ります」って言われますし(笑)。だからと言って、だんぞうさんのように「ひとり旅」をしようとはまず端から思わない…。
自分でも思いますね「俺って人生すごく損してるな」って。
こんな私ですが人が旅した話を聞いたり読んだりするのは好きなんですよね。
次のだんぞうさんの旅行記にも期待しています。