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19世紀のイギリスが舞台のミステリーです。作者は、チャールズ・パリサー、1998年に日本で出版された本です。
この本は、ずいぶん前に買って一度読んだことがあるのですが、すっかり内容は忘れてしまい、ただ、悲惨な物語だったとしか覚えていません。これでもかこれでもかと、悲惨なことが続いた本だったなーと覚えています。
それが、4cmくらいの厚さの単行本で2冊、本当に読み応えのある本でした。あまり内容を覚えていなかったので、もう1度読んでみようと思ったのです。
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「五輪の薔薇」の紋章のついた馬車が、少年ジョンに与えた印象が、物語の始まりです。2・3人の召使とともに暮らす、少年とその母が、それから陥っていく波乱万丈の物語です。
人とはかかわらない二人の今の暮らしの謎、母が隠している秘密の文書の謎が、解き明かされないままに、裏切りや悪意の中で、どんどん苦しい生活に落ちていきます。
莫大な遺産の相続の話だということは、分かってきますが、誰が敵なのか、どれだけ敵がいるのかなど、謎は深まるばかりです。
誰にも助けられず、人に裏切られ、母の無残な死にも会い、それでも、ジョンは、ひたすら自分と母の正義のために、生きていきます。
少しずつ、何が起こっているのか、ということが分かってくるのですが、少年ジョンの一人だけの戦いは、いつも無残な形で終わります。そのうち、味方も現れてきて、最後にはすべての謎が解け、戦いも終わりを告げます。
その時には、たぶん17才くらいになっていたジョンは、正義ということの意味を考えるようになります。自分にとっての正義、それは本当に正義なのかと、考えます。正義と自分の欲との区別がつかないと思うのです。お金と財産について振り回されてきた人間にとっては、そういう風になるのでしょう。
この小説の、遺産相続の大きさに驚きますし、人が人を痛めつけるすごさにも驚きます。
それよりもすごいのは、19世紀の初めのころのロンドンの庶民の生活のすさまじさなどに驚きます。庶民は、時代が過ぎるほど、生きていきやすくなってきたのだと感慨深いです。
下巻になったころには、次から次へと新しい展開が起こり、もう少しもう少しと、なかなか読み止まれませんでした。
最後には、何とか平安な日が来るのですが、長い年月、世の中の悪意と戦ってきた少年ジョンは、17才くらいで、もう大人の顔を持っています。死ななかっただけ良かったかもしれませんけれども。
とにかく、分量も知識もものすごい本だなというのが感想です。もし、この長さのものすごい物語を読みたいと思われるなら、挑戦してみてください。
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