10年位前のこと、新聞に「烏に単は似合わない」の紹介が載っていました。大学生が書いたファンタジーです。読んでみようかと文庫本を4冊、そのあとに出版された単行本を2冊買いました。
その八咫烏シリーズが、今年、NHKでアニメで放送されました。それを観て、もう一度、本を読み返してみようと思いました。
八咫烏の住む山内の世界の物語です。八咫烏は、人間の姿で生きています。そして、烏として飛ぶこともできます。朝廷で貴族たちが勢力争いをしたり、まるで人間の世界のままです。
最初は、八咫烏の長の若宮のお妃選びから始まります。(「烏に単は似合わない」)そして、若宮が地方の豪族の少年を近習としようとするのですが、少年は反発して、1年だけの側仕えとして若宮に仕えます。(「烏は主を選ばない」)
いろいろなことが起こり、それを若宮とその少年雪哉を中心とした人々が活躍して解決していき、お妃は決まり雪哉も自分の故郷に帰ります。登場人物の心の襞が描かれ、若宮と雪哉とのつながりが生き生きと描かれています。
そして、この後大きな事件が起こります。人食い猿に八咫烏が食われるのです。山内というのは、大きな山を中心にして、その周りに建物を建てて、八咫烏だけが住んでいます。そこに外界から猿が侵入してきます。(「黄金の烏」)
八咫烏の世界は、八咫烏だけの世界ではなく、猿や山の神や人間もいる世界なのです。最初はただのファンタジーとして、人間のような烏を生き生きと描いているのだと思っていました。でもそうではなく、八咫烏の世界は、人間の生きている今の世界とつながり、その異世界のありようを魅力的に描いているのです。(「玉依姫」)
なぜ八咫烏は人間の姿になったのか、なぜ八咫烏の山内の世界は他の世界と連絡が取れなくなったのか、そういうことも解き明かされていきます。
作家の阿部智里は、大学生の時にこの本を出版し始め、今も続いています。こんな異世界のあり方をその若さで構想したことをすごいなと思います。
私は、雪哉が魅力的で好きです。勁草院での若者たちの熱い思いに心が奪われました。(「空棺の烏」)
八咫烏シリーズは「烏に単は似合わない」「烏は主を選ばない」「黄金の烏」「空棺の烏」「玉依姫」「弥栄の烏」までで第一シリーズは終わりました。そのあともまだ続いていますが、私はまだ読んでいません。これから楽しみにしています。
八咫烏シリーズは、人(烏)の心の触れ合いと、得たもの、失ったものを厳しい目で描いています。たくさんの感動をもらうことができます。
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