去年の夏に「図書館の魔女」を読んで、本を読むことの醍醐味を思い知らされました。この「烏の伝事」もきっと気持ち持っていかれるなあと思いながら読み始めたのです。
ところが、図書館の魔女が出てこない、えっという気持ちでしたが、でも面白い。今回は山賊(やまがつ)と呼ばれる山で暮らす者たちが、ニザマの姫君を南のほうへと向かう船の出る港に案内するというところから始まります。
山賊たちと姫君とそれを守る護衛の近衛たちの旅は、港の廓に着いたところで終わったはずだったのに、山賊たちは、自分たちの命が危ないことに気が付き、夜のうちに逃げ出します。近衛たちは3人ばかりが命からがら逃げ出すことができたのですが、姫君は廓に留め置かれます。
港は荒れ放題の様相で、山賊も近衛も逃げ出すことができません。そして、地下の穴倉に住む鼠と呼ばれる子供たちに助けられます。
そして、姫君の救出やつかまっていた仲間の救出などするのですが、誰も何に追われているのか、なぜ追われているのか、が分かりません。
そして、最後のころになって、図書館の魔女が登場します。港の寺院に置いてあった本を水に痛められないように救出するためにです。
マツリカが登場すると、待ってました、という感じです。とても魅力的な女性がちょっとひねくれた様子でいるのです。
誰に追われていたのか、ということを言うとあまり面白みがなくなるので、言わないことにします。
大変な冒険を山賊たち、近衛たち、鼠たち、そして一の谷のスパイなどが、大活躍して、解決するのです。図書館の魔女がそれを見通していて、手助けしたのは当然のことです。
そして、エゴンという鳥飼と烏の活躍を言わなければなりません。エゴンは子供のころのけがで顔に傷があり、口もゆがんであまりしゃべることができません。人は皆彼を痴呆のように思い、烏を飛ばすことだけに力を認めていました。
しかし、彼は物事の自然な姿を見ることができ、成り行きの流れを見ることができ、文字さえも読み書きできるのでした。彼と烏の活躍が無くしては、事件は無事解決しなかったかもしれません。烏の伝事という題もエゴンの活躍を言っているのです。
「図書館の魔女」「図書館の魔女 烏の伝事」のどちらにも大きな政治の動きがあり、一の谷、ニザマ、アルデシュなどの国々のこれからがどうなるのかと、楽しみです。きっと続編があるだろうと思います。そこには、キリヒトも出てくるかなあと想像しています。
作者は、高田大介です。緻密な美しい日本語の文章にひきこまれます。彼の教養の豊かさがよくわかる魅力的な本です。
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