「生涯投資家」
村上世彰著、文藝春秋、2017年6月
2000年代前半、物言う株主として名を馳せ、
その後証券取引法違反で逮捕された村上世彰氏の著書。
フジサンケイグループとの対立のあたりからマスコミの論調も厳しくなった記憶ですが、
村上氏の言い分も知りたいと思い購読しました。
「はじめに」からいきなり、
・両親が世彰氏が大学に入るまで毎年11万円贈与し、世彰氏の名義で株を買い続けた
・小学三年生の時、大学入学まで10年分のお小遣いとして百万円を一括前払いで貰い、株の投資を始めた
・父親の教訓は「上がり始めたら買え、下がり始めたら売れ」
など、「生涯投資家」らしいエピソード。
通産省出身でファンド立ち上げの際はその時代の人脈を生かしたそうです。
本書には、世間を騒がせていた当時名前が挙がっていたオリックス元社長宮内義彦をはじめ、
多くの経営者の名前が実名で出てきます。
第3章 東京スタイル
第4章 ニッポン放送
では、当時世間を騒がせた両社株の大量買い付けについて、
村上氏の考えを述べています。
結局は儲けが第一で正論は後から付いてきているように感じました
(批判ではありません)。
第5章 西武や阪神への接近は、目立ちたかったのかな~、という印象です。
ただいずれのケースも経営側が最善を尽くしていなかったことは確か。
村上ファンドに限らず物言う株主の動きを受けて、
会社側が経営に最善を尽くして黙らせてくれればいいのですが、
買収防衛策を講じるようになってしまうと、どっちもどっちだな~と思ってしまいます。
第6章 IT企業への投資では、
サイバーエージェント代表の藤田氏との意外な関係が明らかにされています。
最後の方で本書が出版された2017年頃までの活動について。
お金が余っているようで、チャリティ、NPO、介護、飲食など、
多方面でお金を使っているようです。
いまは文庫版が出版されています。