情緒の中心の調和がそこなわれると人の心は腐敗する。 社会も文化もあっという間にとめどもなく悪くなってしまう。 そう考えれば、 四季の変化の豊かだったこの日本で、 もう春にチョウが舞わなくなり、 夏にホタルが飛ばなくなったことがどんなにたいへんなことかがわかるはずだ。 これは農薬のせいに違いないが、 農薬をどんどんまいてはしごをかけて登らなければならないような大きなキャベツを作っても、 いったい何になるのだろう。 キャベツを作る方は勝手口で、 スミレ咲きチョウの舞う野原、 こちらの方が表玄関なのだ。 情緒の中心が人間の表玄関であるということ、 そしてそれを荒らすのは許せないということ、 これをみんながもっともっと知ってほしい。 これが私の第一の願いなのである。
「 春宵十話 」 ( 情緒と日本人 26頁)
「 春宵十話 」 ( 情緒と日本人 26頁)
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