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深刻化する医薬品欠乏

2021-12-04 11:55:15 | 医療
 薬の供給が非常に不安定になっています。医師の処方する薬を常用している方は、すぐにでも限度一杯の2-3か月分、処方して貰った方がいいでしょう。特に11月29日に起きた倉庫(日立物流・関西メディカル物流センター)の火災により、製薬企業数社の薬の在庫が全焼しています。今まででさえ、不足気味で不安定だったのが、これから、一層深刻な状況になるであろうことは、想像に難くありません。規則上、90日分までは、あらかじめ処方して貰えるはずです。



愚かなおとめたちは、賢いおとめたちに言った。『油を分けてください。私たちの灯は消えそうです。』賢いおとめたちは答えた。『分けてあげるにはとても足りません。それより、店に行って、自分の分を買って来なさい。』 (マタイ 25:8-9)

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後発薬メーカーで相次いだ業務停止命令をきっかけとする医薬品の供給不足が長引いている。薬局からは「薬剤師になって30年以上になるが、こんな経験をしたのは初めて」といった悲鳴も上がる。医薬品の承認書に記載した詳細な製造方法との照合を徹底する規制が遠因となっている可能性がある。(抜粋)





昨今の医薬品不足はこうして起こった TREND:相次ぐ医薬品の出荷調整に根深い要因、今後の安定供給の見通しは(1/2)
2021/10/26 (日経メディカル)
本吉 葵=日経ドラッグインフォメーション

 2021年、後発医薬品企業3社に業務停止命令が通達される前代未聞の事態が生じた。他企業も相次いで出荷調整・自主回収を行っており、医薬品の供給が危機的状況に陥っている。その背景にある要因と今後の見通しを取材した。

 出荷調整中の医薬品が2021年5月末から8月末までの間で、2220 から5885アイテムに急増─。21年9月19日にウェブ開催された第54回日本薬剤師会学術大会の医薬品の安定供給に関する分科会で、日本医薬品卸売業連合会副会長でバイタルネット(仙台市青葉区)代表取締役兼社長執行役員の一條武氏が、自社の出荷調整アイテム数が直近3カ月間で約2.6倍に増加しているという驚きのデータを公表した(図1)。うち約9割が後発品だった。

図1 バイタルネットの先発医薬品・後発品を含めた出荷調整アイテム数の推移(一條氏による) *クリックすると拡大表示されます


表1 昨今の医薬品不足の主な要因(取材を基に編集部作成)


 海外製造所から原薬の調達ができなくなり供給が滞ったセファゾリン問題が起きた19年以降、医薬品の供給不安がクローズアップされてきた。だが図1のように、21年に入ってからその状況は急激に深刻化している。今、医薬品業界で何が起きているのか。

 自主回収や出荷調整急増の背景には、様々な要因が重なり合っているが、特に大きな要因として3つが挙げられるだろう(表1)。

 最もインパクトが大きかったのが、21年2月、3月にそれぞれ業務停止命令を受けた小林化工(福井県あわら市)と日医工(富山市)の影響だ。20年12月、小林化工が製造販売する経口抗真菌薬のイトラコナゾール錠50「MEEK」にベンゾジアゼピン系睡眠薬のリルマザホン塩酸塩水和物が通常臨床用量を超えて混入していたことが判明。健康被害の報告が相次ぎ、1人の死亡と245人の健康被害(うち車両運転事故38人、救急搬送41人)が明らかとなった(21年3月29日時点)。同社は医薬品医療機器等法(薬機法)に基づき21年2月、116日間の業務停止と業務改善命令を受けた。

 医薬品医療機器総合機構(PMDA)の立ち入り調査などの結果、製造販売承認書と異なる製造工程や二重帳簿の作成、数百品目に及ぶ品質試験結果のねつ造など、過去に例を見ない不正が明らかとなった(図2)。

図2 小林化工のイトラコナゾール製造実態(厚生労働省 21年9月16日第5回医薬品等行政評価・監視委員会「後発医薬品等の製造管理及び品質管理について」より抜粋、一部改変、図3も) *クリックすると拡大表示されます


図3 日医工の製造所の実態 


 さらに、翌月の3月、日医工に製造業として32日間、製造販売業として24日間の業務停止が命じられた。同社は20年2月、PMDAや富山県の立ち入り調査によって医薬品の製造管理および品質管理の基準(GMP)違反の疑いが判明し、製造過程の総点検を実施してきた。20年4月から21年1月にかけて75品目近くを自主回収したが、その後の調査で、製造販売承認書と異なる製造方法で製造したり、品質不適合品を適合品となるよう処理をしていたなどの問題が発覚した(図3)。

 20年12月時点で約1230品目を製造販売していた同社だが、業務再開後の現在も160品目近くを出荷調整している(21年10月18日時点)。

 2社の業務停止命令や出荷停止のあおりを受けて代替薬需要が急増し、他社も出荷調整せざるを得ない状況に追い込まれている。一見、出荷停止となった医薬品については、他社が需要増に応じて増産すれば解決すると思いがちだが、そう簡単ではない。日本ジェネリック製薬協会(JGA)理事長の佐藤岳幸氏は、「後発品企業はもともと他社のシェアなどから自社の供給量を決めて各工場での製造スケジュールを数年先まで組んでいることが多い。昨今の供給不安に対して増産を行っているが、すぐに大幅な増産に対応するのは難しい」と話す。
自己点検で不備が続出

 また、出荷調整品目数が急増した2つ目の要因として注目されるのが、小林化工や日医工が行政処分を受けたことを機に、後発品企業各社がここ最近、一斉に自己点検を実施している点だ。自己点検については、JGAが21年3月、会員企業に対して製造販売承認書と製造実態の調査と結果の公表を要請しており、その状況をウェブサイトで公表している。

 実際、自己点検の結果、様々な虚偽やずさんな品質管理などが発覚した長生堂製薬(徳島市)は21年10月、31日間の製造販売業、製造業の業務停止命令および業務改善命令などを受けた。徳島県の立ち入り検査で、虚偽の製造指図書や製造記録などを作成したり、試験結果が承認規格を逸脱していると知りながら回収などの必要な措置を講じていなかったほか、添加物の分量が承認事項と異なっていたなど幾つもの悪質な不正が明らかとなった。さらに、その他の企業も不備のあった製品について供給を停止する事態となっている。

 武田テバファーマ(名古屋市中村区)CEO 兼社長の松森浩士氏は、「1997年に医薬品製造承認基準が厳格化され、それ以前に製造承認された製品は一般的に製剤設計が脆弱なものも多い。自社の経験上、各後発品企業は取り扱い製品の1~3割ほど、見直しが必要な医薬品を抱えていると思う」と指摘する。

 しかし、国が後発品使用比率80%の目標を掲げ、使用促進が図られる中で、多くの後発品企業は取り扱い製品の製剤設計の見直しよりも新製品の製造販売を優先させてきたため、今回のような自己点検で相次いで不備が発覚し、出荷調整や供給停止が多発する事態に陥っている。厚労省も21年7月、全国で無通告立ち入り調査を実施。今後も継続して監査指導の強化を図るとしており、この先も行政処分を受けるような企業がさらに出てくる可能性もある。しばらくは供給不安が続くというのが多くの関係者の見方だ。

 さらに3つ目の要因として、昨年から続く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大の影響も見逃せない。例えば21年6月ごろの流行期には、COVID- 19の治療で使用されるプロポフォール(商品名ディプリバン他)、9月にはデキサメタゾン経口薬などの需要が大幅に増加し、医療現場で供給不足になる事態に陥った。

 浜松医科大学医学部附属病院薬剤部教授・薬剤部長の川上純一氏は、「COVID-19患者への対応に医療スタッフが追われる中、ヘパリン製剤などではこまめな管理が必要な点滴静注よりも、皮下注射製剤の需要が増えており、出荷調整になる製品もあった」と話す。また、原薬製造国でのCOVID-19の流行により製造所の操業を縮小・停止せざるを得なくなり生産に影響が出た原薬もある。

(次の記事に続く)


https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/monthly/202110/572451.html




TREND:相次ぐ医薬品の出荷調整に根深い要因、今後の安定供給の見通しは(2/2) 深刻化する医薬品不足、供給回復の道筋は?
2021/10/27
本吉 葵=日経ドラッグインフォメーション


 2021年、後発医薬品企業3社に業務停止命令が通達される前代未聞の事態が生じた。他企業も相次いで出荷調整・自主回収を行っており、医薬品の供給が危機的状況に陥っている。その背景にある要因と今後の見通しを取材した(本レポートは、TREND「昨今の医薬品不足はこうして起こった」〔2021.10.26公開〕の続きです)。

 医薬品の出荷調整・自主回収が相次ぐ未曽有の事態に、現場ではどのように対応しているのだろうか。日経ドラッグインフォメーショ Online(DI Online)の薬剤師会員を対象に、2021年7月に行った後発品に関する調査では(有効回答数2615件)、自由意見として「各後発品を比較した説明のリーフレットを作成した」「できるだけ安定供給している薬剤を選んで丁寧に説明している」など、後発品への信頼が揺らいでいる状況の中でも数量シェアを上げるための様々な取り組みが寄せられた(図1)。

図1 後発品の数量シェアを上げるために薬局として新たに始めた取り組み(日経DI調査より抜粋)*クリックすると拡大表示されます


 東京都薬剤師会常務理事の根本陽充氏は「多くの会員薬局の実態を把握するため、21年6月と8月に後発品の流通に関する調査を行ったところ、医薬品の納入状況が悪化し続けていることが分かった。現場では、医薬品を手配する業務が増えたほか、患者に薬剤変更などについて、これまで以上に時間を割いて丁寧に説明し、なんとか医薬品を供給している」と話す。

 また、21年5月には、薬剤師が安定的に供給可能な後発品を選択するための資料として、会員内における銘柄ごとのシェア率や原薬製造国などの情報を一覧にまとめた「後発医薬品選択の指針」を公表している。今後、ウェブサイトの会員向けページで公開している「後発医薬品比較サイト」にもこの指針の内容を反映していく方針だ。

 一方、後発品企業も信頼回復のために様々な情報開示を始めている。JGAは前述した自己点検の結果のほか、共同開発の有無や製剤製造企業名、製造管理・品質管理への取り組みなどを公開するよう会員企業に要請。また、品質委員会を設けGMPに関する相談窓口を新設するなどの対応を始めている。佐藤氏は「JGAでは会員以外の企業にも自己点検などを呼び掛けており、後発品業界全体で信頼回復に取り組んでいく」と話す。まずは21年内に全ての会員企業に自己点検を終えてもらう予定だという。

 国も後発品の品質確保と安定供給のために、より注力していく方針だ。厚労省医薬・生活衛生局の22年度予算概算要求の中で、新規事業としてGMP調査体制や承認申請資料の適合性調査の強化、後発品の安全性情報の効率的な収集・評価を盛り込み、新規に2億4600万円を計上している。
供給回復に数年はかかる

 現場の薬剤師が今、最も気にしているのは、この状況がいつまで続くのかということだろう。COVID-19の影響で供給不足となっている製品については、流行が下火になれば元に戻ると思われるが、その他の要因については改善までに年単位の時間がかかるというのが多くの関係者の見方だ。

 JGAの佐藤氏は、「取り扱い品目の多い日医工の影響が大きく、同社製品の出荷再開の見通しが立つことが、安定供給に向けて大きな要素になるだろう」と話す。日医工は現在出荷調整中の約160品目について、多くは22年4月以降に出荷を再開するとしているが、具体的な時期は公開していない。同社は21年8月に医薬品卸のメディパルホールディングス(東京都中央区)と資本業務提携を締結したほか、人事の刷新を進めており、「こうした動きを注視していく必要がある」(業界関係者)。

 松森氏は、「製品によっては半年~1年ほどで出荷調整が解消されるものもあるが、業界全体で出荷調整が落ち着くには5年くらいかかる可能性がある」と推測する。

 後発品企業の根深い問題が顕在化したが、今、問題解決に向けて何をすべきなのだろうか。

 厚労省は21年9月、医薬品産業政策の5~10年の中長期的な方向性を示す「医薬品産業ビジョン2021」を8年ぶりに公表。後発品について、安定供給に関する責任の法的位置付けや、効率的な情報収集と適切な情報公表の仕組みなどを検討するとしている(表1)。

表1 厚生労働省の「医薬品産業ビジョン2021」における後発品に関する主な内容 (厚労省の資料より抜粋、一部改変)*クリックすると拡大表示されます


 松森氏は、「日本は医薬品の販売中止を“ 悪”とする風土がある。そのため販売中止品目より新たに製造する品目が多くなり、現場の生産能力に余裕がない製薬会社もある。規模に見合った製品数に絞って製造すべきだ」と指摘。現状に懸念を抱き、21年7月に日本エスタブリッシュ医薬品研究協議会を設立し、後発品の製品数の最適化や原薬の安定的確保などを議論していくとしている。「持続可能な供給体制を確立する時期に来ている」と松森氏は話している。
後発医薬品調剤体制加算の算定に時限的措置
どうなる? 2022年度調剤報酬改定

 医薬品が手に入りにくく、後発品の数量シェアの維持が困難なケースも出ている中、現場で死活問題となっているのが、後発医薬品調剤体制加算などの算定だ。

 厚労省は21年9月21日、「後発医薬品の出荷停止等を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱いについて」と題した事務連絡を発出。21年7月1日時点で供給が停止されていると医政局経済課に報告があった医薬品のうち、取引数量が多く影響が大きいと判断した1000品目近くを、後発品数量シェアの算出対象から除外可能とした。対象となる加算等は、後発医薬品使用体制加算、外来後発医薬品使用体制加算、後発医薬品調剤体制加算および調剤基本料の後発品に関する減算における実績要件。

 厚労省保険局医療課薬剤管理官の紀平哲也氏は、「『出荷調整』には定義がなく、様々な要因が絡んでいて一律の評価は難しいため、まずは客観的に評価できる出荷停止品に絞った」と説明し、今後も状況に応じて対応していくという。

 事務連絡は22年3月31日までの時限的な措置としている。次回の調剤報酬改定における後発医薬品調剤体制加算等のあり方について紀平氏は、「既に後発品使用率80%の目標はおおむね達成しているとの財務省からの指摘もある一方、現場からは80%を維持するためには労力がかかるので加算が必要だとの声もあり、今後議論していく」と話している。


https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/monthly/202110/572452.html






医薬品不足は医療機関にどのような影響を与えている?
2021/10/29 山崎大作=日経メディカル


 2021年、後発医薬品企業3社に相次いで業務停止命令が通達された。さらに他の企業が出荷調整や自主回収を行ったことで、医薬品の供給が危機的状況に陥っている。この前代未聞の事態に、当初は薬局の仕入れに関する問題とされていたが、その余波はついに医師の処方への影響へと発展しつつある。

 アレルギー科、リウマチ科を掲げる北原医院(大阪府守口市)院長の井上美佐氏は、「最近、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)のブシラミンが欠品しており、一部の院外処方をしている患者の処方に対して、小さな薬局から『休薬してもいいか』という問い合わせが来た」と明かす。しかし、そんなことはできるわけがない。「『ないならば大手薬局を紹介して!』と電話を切った」と苦笑する。ブシラミンは、後発品を手掛ける日医工、小林化工が業務停止処分を受けた影響で、東和薬品や先発品を扱うあゆみ製薬が出荷調整を行う事態となっている。あゆみ製薬は2021年7月に新規注文を中止、11月からは既存顧客に対しても出荷数を割り当てて運用することを発表している。

 実は同院ではおよそ9割の患者は従来から院内処方で、「早めに在庫を積んだのでまだなんとかなっている」(井上氏)。しかし、薬剤が入手できないからといって、DMARDsで症状が安定している患者を経済的負担の大きな生物学的製剤には変えられない。とはいえ「ブシラミンがなくなったら、今はまだ入手できるサラゾスルファピリジンに変えるしかない」と井上氏は言う。医学的に必要性がないのに薬剤を変更せざるを得ない事態になりそうだ。

 後発品不足が患者負担に跳ね返っている例も出てきている。笹川皮膚科(大阪市城東区)で後発品不足の影響を受けたのは抗ヒスタミン薬。21年3月、エピナスチンドライシロップでの自主回収以降、「常に卸に連絡しながら、在庫にあるものをキープしているが、抗ヒスタミン薬は綱渡りの状況だ。しかも代替品がドミノ倒しのように入手できなくなっていて、先発品に変えざるを得なくなったケースもある」と院長の笹川征雄氏はため息をつく。

 先発品に変えれば薬剤費は上がる。抗ヒスタミン薬を先発品に変更するだけで、患者の負担増は年間7000円程度。「『高くなるならば塗り薬だけで飲み薬いらない』と言う患者さんも出ている。その結果、症状の増悪が危惧される」(笹川氏)。また、同クリニックは院内処方にしているため、採用薬の変更をアルバイトの医師にも全て説明する必要があるほか、同種同効薬を複数調達する必要が出てきたことから在庫スペースも増やさざるを得なくなったし、レセコンの設定も変更が必要となった。「様々な形で負担が増している」(笹川氏)。
医師は気付いていない?

 ただし、多くの医療機関は必ずしも危機感を覚えていないのが実情のようだ。「『昨春、マスクでも同様のことが起こった。だから薬も一過性で、慌てる必要がない』と考える医師は多いのではないか」と指摘するのは大西内科ハートクリニック(津市)院長の大西勝也氏だ。大西氏が専門とする心不全領域でもβ遮断薬のビソプロロールが欠品となっており、日本心不全学会は8月、0.625mg錠の長期処方を避けることなどをまとめた提言を出している。

 心不全の患者が4割を占める同クリニックでは、門前の薬局がビソプロロールを多く在庫していたため、今のところは確保できているものの、自院の門前以外で調剤を受けていた患者が「薬がないので、門前で調剤してもらってほしい」と言われたケースや、門前薬局から特定の用量の錠剤がないとの報告を受けたりしているという。大西氏は症状が頻脈のみの患者などビソプロロールの優先順位が低いケースの処方を変更するによって供給の回復を待つ意向だが、「まだまだ危機感のない医師は多い」(大西氏)。大西氏は医師に現状をきちんと把握してもらうためにも、「各企業の生産量と、レセプトから推測される年間の使用量、さらには企業からいつ供給が回復するかの情報をきちんと開示してほしい」と訴える。

 国が後発品使用比率80%の目標を掲げて使用促進を急ぐ中で、1997年の医薬品製造承認基準の厳格化に伴う見直しがおざなりになってしまっているとの指摘もある(関連記事:昨今の医薬品不足はこうして起こった)。後発品使用比率の向上は、日本の医療の持続性の点で重要な施策ではあるが、医薬品供給で優先すべきは適切な品質管理に基づいた安全性の担保と安定供給ではないだろうか。国も企業もその原点に立ち返って信用を取り戻す必要があるだろう。


https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t337/202110/572504.html




後発品の供給不足は医師の処方にも影響 NEWS◎京都府保険医協会の会員調査の速報結果
2021/10/27 (日経メディカル)

 京都府保険医協会は2021年10月22日、後発医薬品の供給不足に関する同会の代議員へのアンケートの速報を公表した。それによると、院内処方の医療機関の86.4%が「納入がなくなった・減った医薬品がある」と解答。また、院外処方の医療機関についても94.1%が「在庫がない、あるいは少ないため調剤できない」などと言われた医薬品があるとした(回答数は35)。

 2020年12月、小林化工(福井県あわら市)が製造販売するイトラコナゾール錠50「MEEK」にリルマザホン塩酸塩水和物が混入していたことに端を発し、後発品企業の製造上の不備が相次いで発覚したことから後発品の供給がひっ迫している。これを受けて、日本骨代謝学会と日本骨粗鬆症学会は7月19日、新規に骨粗鬆症治療を開始する場合にはエルデカルシトールとアルファカルシドールを避けることや他の薬剤への変更を検討することなどを求める提言を出した他、日本心不全学会が8月16日付けでビソプロロール0.625mg錠の長期処方を避けることやカルベジロールへの切り替えなどを求める提言を出す事態となっている。

 京都府保険医協会のアンケートで医薬品の供給不足による影響として最も多かったのは、「同効の他薬剤への切り替えに手間がかかる」で71%(母数は「院内調剤で納入がなくなった・減った」と回答、および「院外調剤で在庫がない、あるいは少ないため調剤できないと言われた医薬品がある」と回答した22件)。以下、「先発医薬品になり、患者負担が増した」(38.7%、12件)、「休薬せざるを得なくなった」(25.8%、8件)と続いた。「患者が後発医薬品を拒否した」という例も9.7%(3件)あった。


https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/202110/572453.html

副反応経験者に3回目接種を促すことは、今までよりきっと難しい(日経メディカル)

2021-11-13 14:33:31 | 医療
結局、私は3回目どころか初回接種もまだしていませんが。既往症再発の恐れ、親類に心筋梗塞や脳梗塞で亡くなっている人が多いこと、服用している薬が副反応を強める可能性(しかも、そう日経メディカルに載っている)、生活習慣、等々を総合的に勘案して、私にはワクチン接種は向かないと思ったためです。この記事では、ワクチンは本人の希望の下に行われねばならない、ワクチン接種者に副反応のリスクに対する休業手当としてお金を配ってはどうか、と提案しています。私はそんなやり方は嫌いですが、給付金10万円とワクチン接種をリンクしてしまえば、接種率は上がるでしょうね。


副反応経験者に3回目接種を促すことは、今までよりきっと難しい 2021/10/04 安藤 亮=日経メディカル

 いよいよ日本でも、新型コロナウイルスワクチンの3回目接種(ブースター接種)を行う方向性が固まってきました。2021年9月17日の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会では、ワクチンの3回目接種を実施する方針が示され、了承されました(外部リンク:3回目接種実施決定「間隔8カ月以上」 医師らに年内にも)。田村憲久厚生労働大臣は9月21日の記者会見で、年内にも3回目接種を開始できる体制整備の必要性を示しています(外部リンク:3回目接種「年内にも体制整備を」 厚労相)。

 記者として情報を収集している限りは、2回目接種から一定期間経過後にワクチンの有効性が低下する、3回目接種後に中和抗体価が増加する──など、3回目接種の実施を後押しする要素は多いと見ています。しかし、2回目接種で発熱の副反応を経験した一市民としては、3回目接種を多くの人に受けてもらうことは、これまでより格段に難しいのではないかと感じます。その理由を端的に言えば、3回目接種の対象者には、多くの「副反応を経験した人」が含まれるからです。

「発熱して寝込む注射」だと感じてしまう人もいる
 私はワクチンの2回接種を完了し、ごくありふれた副反応を経験しました。1回目接種の後は腕に強い痛みが出ましたが、発熱はなかったため心には余裕があり、2回目接種をためらう気持ちは生じませんでした。ですが2回目の接種後、同日夜に強い寒気を感じました。体温は38℃を超えており、翌日には最高で39.3℃に達しました。アセトアミノフェンを複数回服用し、38℃前後の熱が続いた後、接種3日後に平熱に戻りました。意識は比較的はっきりしていましたが、普段発熱する機会がほとんどない私にとっては、負担の大きい副反応でした。この時感じたことを正直に吐露するならば、「できればもう二度と、副反応を経験したくない」。

 私自身はもともと、ワクチン接種を受けることにためらいはありませんでした。今も接種したことに全く後悔はありませんが、「何のためらいもない」状態には戻れなくなりました。どうしても「接種を受ければ、また発熱して寝込む羽目になる」と思ってしまうのです。接種のメリットが上回ると頭では理解していても、好き好んで「発熱して寝込む注射」を打ちたいなどとは思えません。それでも私は、気が進まないながらも3回目接種を受けるでしょう。しかし、誰もが同じような判断をするでしょうか。


 厚生労働省のウェブサイト(新型コロナワクチンの接種後の健康状況調査)では、ファイザー社および武田/モデルナ社のワクチンについて、医療従事者や自衛隊員への接種後の副反応について調査結果をまとめています。これによると、2回目接種後の発熱(37.5℃以上)の発生率は、ファイザー社製ワクチンでは38.1%、武田/モデルナ社製ワクチンでは78.9%となっています。

 ちなみに、私の知人(20~30歳代、首都圏在住)に話を聞いた限りでは、ほぼ全員が2回目接種後に発熱していました。知人はほとんどが武田/モデルナ社ワクチンを接種しており(ワクチン接種済みの知人は、ほぼ全員が職域か大規模接種会場で接種したため。この世代では、9月以前には自治体での接種予約は取れない状態でした)、ごく限られたサンプルの情報ですが、発熱の発生率が約8割というデータは肌感覚に近い印象です。

 「(経験していないが)発熱が心配」というのと、「実際に経験した発熱を、もう経験したくない」のとでは心持ちが大きく異なります。そして、3回目接種の対象者には、私のように「発熱を経験した人」が多数含まれるはずです。副反応を経験していない人々に行ってきた1~2回目接種と同じやり方では、3回目接種を広げるには不十分だと感じます。ここで必要になると考えられるのが、丁寧な「コミュニケーション」と、積極的な接種を促す「インセンティブ」です。

実体験を伴う「副反応への不安」を否定しない
 哲学者の岸見一郎氏は、日経メディカル Onlineでの連載(岸見一郎の「患者と共に歩む心構え」)で、副反応を恐れる人への説明として「大切なのは、不安を否定しないことです」と指摘しています(関連記事:「ワクチンを打ちたくない」人に何を伝えるか)。3回目接種でこの姿勢の重要性は増していると思われます。

 というのも「副反応への不安」は、副反応経験者の中では、実体験を伴う具体的な恐怖や嫌悪感に姿を変えている可能性があるからです。もし「その程度の副反応は大したことない」と言われたら、かえって接種を受ける気をそがれるかもしれません。自身が抱える不安、経験した痛みを「否定」されたも同然だからです。その人にとって接種するメリットの方が大きいのだと伝える必要があるとしても、その人が経験した副反応の大変さ、それをもう一度経験することへの忌避感を、決して否定しないコミュニケーションの形が求められるのではないでしょうか。

 米国でナースプラクティショナーとして勤務する緒方さやか氏は、自身の連載(緒方さやかの「米国NPの診察日記」)である知人の例を挙げています。ワクチン接種を拒否し続けていたこの知人は、周囲からの説得に折れてようやく接種を受けましたが、ありふれた副反応を経験した後、その後悔と恨みをSNSに投稿して波乱を引き起こしました。緒方氏は「嫌でたまらなかったワクチンを、恐怖に凝り固まりながら接種したからこそ、もともとあった被害者意識が、副反応を経験したことでさらに増幅されてしまったのだろう」と分析しています(関連記事:「無理に説得してワクチン接種」ではダメな理由)。

 緒方氏はこの経験を、「何かを強く勧めて同意させることは、後悔を生む。最終的には、本人自身の判断に委ねなければならないのだ」と振り返っています。この視点も、3回目接種で忘れてはならない点だと感じます。接種率を向上した方がよいと考えるならば、「発熱をもう経験したくない」と思っている人にも、心から納得して接種を受けてもらわなければなりません。その人の不安や経験を否定せず、メリット・デメリットを丁寧に説明し、自身の行動に納得してもらうこと。これらが今後のコミュニケーションにおいて重要性を増していると感じます。

「副反応休業手当」というインセンティブ

 もう一つの観点が、進んでワクチンを接種してもらうためのインセンティブを設けることです。その方法として最もシンプル(捉え方によっては安直)で、手っ取り早く効果が得られそうなのが「お金」です。

 米国では2021年7月、国民へのワクチン接種を促す施策として、ワクチン接種者に100ドルの報奨金を与える制度を設けるよう、バイデン政権が各地方政府に要請しました(外部リンク:米、ワクチン接種で100ドル配布を 政府職員にも要請)。国内でも9月ごろから、ポイントなどによるインセンティブを設ける動きがあります。奈良県では、ワクチン2回接種済みの県民に対して、飲食店などで利用できるクーポン券3000円分を配布する方針を盛り込んだ補正予算案が、県議会に提出されました。兵庫県知事の齋藤元彦氏は、県の公式オンラインショップで利用できる2000円相当分のポイントを、ワクチン接種済みの県民に付与する方針に言及しています。

 こうしたインセンティブは、早期に2回接種を促すことに一定の効果があると期待されます。また、副反応を経験した人に3回目接種を促す上では、「副反応休業手当」としても機能すると感じています。発熱の副反応が出ると、程度の差こそあれ丸一日は日常生活が大きく制限されます。寝込むほどの発熱なら仕事は休まざるを得ず、家事などにも影響します。「発熱して寝込む注射」とも思えるワクチンを接種するなら、失われる1日分の手当を受け取りたいと考えるのは、決して傲慢なことではないと私は思います(個人的には、1日分の手当という意味を持たせるなら数千円では見合わない印象で、米国の施策にある100ドル[約1万1000円]程度の支給があってもよいのではないかと感じます)。

 「ワクチンを打ちたくても打てない人がいるのに、接種できた人にだけ税金を使うのは不公平だ」という批判も当然出るでしょう。この不公平感を完全に解消することは不可能ですが、「接種できた人にお金を出す」のではなく、「副反応で失われる1日分の手当として支給する」のであれば、不公平感は一段階軽減されるのではないかと感じます。「副反応が出なかった人は丸もうけになる」という指摘もあり得ます。ただ、前述のデータに基づいて、接種した国民の半数前後が発熱を経験したと考えると、もし国として3回目も十分な接種率を達成したいのであれば、発熱しなかった人の分くらいは目をつむっても致し方ないのではないでしょうか。

 もちろん、財源の問題もありますし、医療体制の拡充に予算を使うべきだという考え方もあるでしょう。3回目接種でどの程度副反応が発生するのか、データも十分ではありません。ましてや、副反応を経験した人が皆「手当」を必要と考えているはずもありません。しかし、2回目接種で発熱がありふれた副反応であった以上、どんな形であれ何らかのインセンティブがない限り、3回目接種では1~2回目よりも接種率が下がる可能性を否定できないと思います。経験は我々の思考にある種の不可逆的な変化をもたらすからです。

 コロナ禍全体が世界に及ぼした影響と比べれば、一人の人間が発熱して寝込むことなど、些末なことかもしれません。しかしその一人にとって、発熱の副反応を「経験した」ことはやはり不可逆的な変化をもたらします。コミュニケーションやインセンティブの形態は、いくらでも議論の余地があると思います。しかし、「3回目接種の対象者には、発熱の副反応を『経験した』人が多く含まれる」という事実だけは、その議論の中で決して忘れてはならないと強く感じます。

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/eye/202110/572197.html

ファイザーのコロナワクチンは接種後6カ月で抗体価がピーク時の7%に低下 (日経メディカル)

2021-10-27 11:15:32 | 医療
ファイザーのワクチンは2回接種後、最初の1か月で抗体価が40%低下し、半年後には僅か7%になってしまうそうです。


ファイザーのコロナワクチンは接種後6カ月でIgG抗体価がピーク時の7%に低下 他 2021/10/01 040.日経メディカル 聴く論文(2021.09.27-10.01)

(1)The Lancet Regional Health-Europe誌から BNT162b2は接種後6カ月でIgG抗体価がピーク時の7%に低下
 エストニアTartu大学のPaul Naaber氏らは、Pfizer社のBNT162b2ワクチンを2回接種した医療従事者を6カ月後まで追跡して液性免疫および細胞性免疫応答を評価し、接種後には5種類の変異株に対しても抗体反応が起こるが、IgG抗体価は比較的短期間のうちに低下すると報告した。結果は2021年9月6日のThe Lancet Regional Health-Europe誌電子版に掲載された。

(2)JAMA Surgery誌から ロボットを使用しても胃癌切除後の腹腔内感染症は減らない
 和歌山県立医科大学の尾島敏康氏らは、根治的胃切除術を受ける患者に対して、ロボット支援手術(RG)と腹腔鏡下手術(LG)の成績を調べるランダム化比較試験を行い、両群の術後腹腔内感染症発症率に差はなかったと報告した。結果は2021年9月1日のJAMA Surgery誌電子版に掲載された。

(3)Lancet誌から AZD1222は3回目の接種でブースター効果が期待できそう
 英国Oxford大学のAmy Flaxman氏らは、AstraZeneca社のワクチンChAOx1 nCov-19(AZD1222)の臨床試験に参加した人を対象に、初回と2回目の接種間隔を44~45週間と長くした場合のワクチンの効果と、2回目の接種からさらに28~38週後に3回目の接種を受けた場合の効果を検討し、2回接種の場合は接種間隔が長い方が抗体価は高くなり、3回目の接種を行うとブースター効果が観察されたと報告した。結果は2021年9月1日のLancet誌電子版にに掲載された。

(4)EClinicalMedicine誌から COVID-19患者に対する抗体カクテル療法は入院を減らす
 米国Mayo ClinicのRaymund R. Razonable氏らは、2020年11月に米国で緊急使用許可を受けた2種類のSARS-CoV-2中和抗体(カシリビマブとイムデビマブ)を併用するカクテル療法の効果を検討する後ろ向きコホート研究を行い、この治療は危険因子を持つ軽症から中等症のCOVID-19患者の入院リスクを減らしていたと報告した。結果は2021年8月30日のEClinicalMedicine誌電子版に掲載された。

(5)JAMA Otolaryngol Head Neck Surg誌から デキサメタゾン術前投与は甲状腺摘出後の低カルシウム血症と音声障害を減らす
 英国Royal Infirmary Hospital Edinburgh のAdeel Abbas Dhahri氏らは、甲状腺摘出手術を受ける患者の術前にデキサメタゾンを投与すると、術後の低カルシウム血症や音声障害のリスクを減らすことができたと報告した。結果は2021年9月2日のJAMA Otolaryngol Head Neck Surg誌電子版に掲載された。

 2021年10月1日に公開したポッドキャスト配信「日経メディカル 聴く論文」のアーカイブです。ご興味のある方は是非ご登録ください。
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新型コロナの存在証明

2021-10-03 16:48:33 | 医療
当然ながら存在しますし、証明されています。いまだに「新型コロナの存在は未証明」などと主張する方がいて、驚いています。ウイルスが単離されれば、そのウイルスの存在は証明されたと言えます。そして、既に去年の1月の段階で、新型コロナウイルスの単離は成功しています。ワクチン反対運動も別にいいのですが、新型コロナが存在しないとまで言ってしまうのは、かなりやばいでしょう。

感染研、同研究所が開発した細胞で新型コロナウイルスを単離 感染細胞の変性、多核巨細胞像を確認 2020/02/03 久保田文=日経バイオテク トレンド◎新型コロナウイルス感染症

 国立感染症研究所は、2019年1月31日、新型コロナウイルス(2019-nCoV)の単離・培養に成功したと発表した。今後、単離されたウイルスは国内外へ配布され、ウイルス研究のほか、抗体検査や抗ウイルス薬、ワクチンの開発に用いられる予定。

写真1 新型コロナウイルスの電子顕微鏡像(提供:国立感染症研究所、写真2、3も)

 今回、国立感染症研究所ウイルス第三部は、VeroE6/TMPRSS2細胞を用いて、国内で採取された臨床検体から新型コロナウイルスの単離・培養に成功した。VeroE6/TMPRSS2細胞は、TMPRSS2(transmembrane protease, serine 2)遺伝子が恒常的に発現しているアフリカミドリザル腎細胞亜株(VeroE6細胞)であり、同研究所が開発したもの。

 同研究所によれば、単離された新型コロナウイルスを電子顕微鏡で観察したところ、粒状の粒子の周囲をコロナウイルス特有の冠状のスパイク(S)蛋白が囲んでいる様子を確認。また、VeroE6/TMPRSS2細胞に、新型コロナウイルスへの感染が確認されている臨床検体を接種したところ、VeroE6/TMPRSS2細胞が変性し、多数の核が集積した様子(多核巨細胞像)が認められたという。

写真2 新型コロナウイルスに感染した細胞の蛍光抗体染色像

 また、VeroE6/TMPRSS2細胞で新型コロナウイルスを培養し、その細胞上清中からウイルスのゲノムを抽出し、ほぼ全長のウイルスゲノム配列(約30kbのRNA配列)を同定した。その結果、中国湖北省武漢で解析された新型コロナウイルス(Wuhan-Hu-1株)と、99.9%の相同性が認められたという。

 国立感染所研究所は今後、単離したウイルスや細胞を国内外に配布する予定。同ウイルスを用いて、ウイルスの感染機構、病原性の解析、抗体検査の開発、抗ウイルス薬のスクリーニング、ワクチンの開発などが進むと期待される。

  なお、国内で病原体等を取り扱うに当たっては、世界保健機関(WHO)の「実験室バイオセーフティ指針第3版」の考え方などに基づき、病原体等のヒトや動物への病原性や治療法の有無などを考慮してバイオセーフティレベル(BSL)分類をレベル1(BSL1)からレベル4(BSL4)まで定めることになっている。

写真3 新型コロナウイルスに感染した細胞の細胞変性像。画面中央に多核巨細胞像が認められる。

 国立感染症研究所のバイオリスク管理員会は、2020年1月30日、新型コロナウイルスの取り扱いについて、暫定的に、(1)病原体はBSL3の取り扱いとする、(2)新型コロナウイルスの感染疑い患者由来の臨床検体はBSL2取り扱いとする――ことを決めている。なお、同研究所では、SARSコロナウイルスの病原体もBSL3の取り扱いとされている。

(以上に紹介するのは日経メディカル/バイオテクの記事ですが、最初の行の2019年は2020年の間違いだと思われます。日経が信じられないミスを、と思いもしますが・・・)

https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/20/02/02/06501/

なお、新型コロナの存在を疑う人たちは、厚労省や各国の保健省に質問メールを送り(それも、まともでない文面であることがしばしばです)、対して「あなたのご要望に沿う資料は見つかりませんでした」という返答を以って、新型コロナウイルスは存在しないのだ、などと主張しています。あまりにずさんな理屈と言うしかありません。何かに反対運動をするのは、別にいいのです。しかし、その論理や論拠はしっかりした方がいいでしょう。


新型コロナワクチン接種後の中和活性は最初の1か月で40%低下(日経メディカル)

2021-06-18 05:18:02 | 医療
(要約)ファイザーワクチンの抗体値は、2回目接種後1か月で平均40%低下し、1年後にはほぼ防御力を失うようです。よって、毎年、追加の接種が必要になります。また、ファイザーワクチンはデルタ株に対しては、中和活性が半分になり、ベータ株に対してはさらに弱まります。


新型コロナワクチン接種後の中和活性は意外と早く低下する? トレンド◎国内の医療者に対するワクチン効果の検証速報が相次ぐ 2021/06/16 加藤勇治=日経メディカル

 国内の医療者を対象とした新型コロナワクチン接種が進み、大学病院などから接種後の抗体価の変化などの報告が相次いでいる。国内の医療者に接種されたワクチンは米Pfizer社/ドイツBioNTech社のmRNAワクチンであるBNT162b2。接種後の中和活性の変動や抗体価が上がりやすい因子の検討結果などが発表された。

ワクチン接種後の血清の中和活性を検討

 国立国際医療研究センターは6月15日、メディア向けの勉強会で、新型コロナウイルスワクチンであるBNT162b2の接種を受けた医療者における中和抗体の産生と抗体価の減衰について紹介した。同センター研究所研究所長の満屋裕明氏が発表したもので、熊本総合病院(熊本県八代市)病院長の島田信也氏との共同研究の結果だ。

 満屋氏らは先行研究の結果として2021年3月に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染し、回復した43人の血漿を対象とした解析(発症から100日後まで)の結果を報告している(Scientific Reports, 2021,vol11,Article number: 5563)。この報告では、国立国際医療研究センターに入院した43人のうち、(1)16人(37.2%)は中和活性が認められず、(2)16人は入院後20~30日までに中和活性の上昇が認められ、入院から92日後まで中和活性の50%が維持されていた。(3)11人(25.6%)は中和活性は上昇したものの、全員平均24日で中和活性が60%以上減少し、11人中6人は検出限界以下まで低下していた。(1)の中和活性が上昇しなかったケースの8割は軽症/中等症例であったが、(2)の中和活性が上昇し、高く維持されていたケースの8割弱は重症/重篤例だった。(3)の中和活性が上昇するものの24日程度で減少してしまったケースは軽症/中等症と重症/重篤例が半数ずつだった。

 今回、BNT162b2の接種を受けた医療者223人(男性68人、女性155人)を対象とした研究結果を紹介。解析の結果、接種で得られる中和抗体価は女性の方が有意に高いことが分かった。さらにBNT162b2の1回目接種から7日後の中和活性と比べて2回目接種から7日後の中和活性はおよそ8倍(中和活性の平均値として)上昇していたが、2回目接種から30日後では多くのケースで中和活性は低下しており、2回目接種から7日後に比べて中和活性がおよそ40%減少していた(平均値として)。満屋氏は、「追跡結果を待ちたいが、1年後の中和活性は感染防御に必要なレベルにない可能性もあり得る」と語る。また、BNT162b2によって誘導された中和活性は、従来株(いわゆる武漢株)に対する中和活性を1としたとき、アルファ株(英国株)、デルタ株(インド株)に対する中和活性はおよそ半分ほど誘導されるが、ベータ株(南ア株)に対する中和活性は低いケースも少なくないことも示された。

 満屋氏は、今後さらに追跡を進めるとともに、抗ウイルス薬の開発も重要であると語った。

抗体価が上がりやすい/上がりにくい背景因子は?

 千葉大学病院でも医療者を対象としたワクチン接種に関連し、効果に関する検討結果を6月3日に発表している。同院でBNT162b2を接種した職員1774人(2回目の接種後に採血・唾液採取できた人数で、1回目の接種前に採血・唾液採取したのは2015人)の抗体価を検討したところ、1773人で抗体価の上昇が確認された(MedRxivサイトにリンク)。1774人のうち、医師は494人、看護師が559人、薬剤師57人、歯科医11人、その他653人だった。

 詳細な検討の結果、ワクチン接種前の段階で抗体が陽性だったのは21人(1.1%)、2回目の接種後に抗体が陽性だったのは1773人(99.9%)だった。接種前の抗体価の中央値が0.4 U.mLに対し、接種後の抗体価の中央値は2060 U/mLと大幅に上昇した。なお、この報告では、SARS-CoV-2のS蛋白質に結合する抗体を測定しているが、中和活性を検討したデータではない。

 また、抗体価が上がりやすい因子を解析したところ、(1)COVID-19感染歴あり、(2)女性、(3)1回目と2回目の接種間隔が長い(18日~25日)、(4)抗アレルギー薬の内服あり(花粉症薬など)、が見いだされた。一方、抗体価が上がりにくい因子は、(a)免疫抑制薬の内服あり、(b)高齢、(c)副腎皮質ステロイド薬の内服あり、(d)飲酒の頻度が高い、などが見いだされた。

2回接種後に無症状感染例はCOVID-19診断例の4割

 国立感染症研究所は、ワクチン接種円滑化システム(V-SYS)と新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)に登録されたデータを活用し、医療従事者を対象とする先行接種が始まった2021年2月17日から高齢者の接種が開始される前の4月11日までの期間にワクチンを少なくとも1回接種した医療従事者をピックアップし、接種からCOVID-19と診断された日数を検討した(「新型コロナワクチンBNT162b2(Pfizer/BioNTech)を接種後のCOVID-19報告率に関する検討(第1報)」)。

 この期間に約110万人の医療者に1回目の接種が行われ、4月30日時点で2回目の接種が終了していたのは104万人だった。この期間に報告された医療者のCOVID-19症例は281例。このうちワクチン接種後28日以内に診断されたのは256例だった。

 2回目の接種後に診断された症例は47例(47例のうち、1回目接種後27日以内は23例、1回目接種後28日以降は24例)で、全体の16.7%だった。47例のうち、COVID-19と報告された時点で無症状だったのは計19例(40.7%)だった。

 1回目接種日からどれくらいの期間でCOVID-19と報告されたかについて検討したところ、0~13日が181人、14~20日が41人、21~27日が34人、28日以降が25人だった。1回目接種日から0~13日時点での報告をレファレンスとして各グループの報告比率を算出すると、14~20日は0.42、21~27日は0.39、28日以降は0.14となった。

 本報告書では、1回目の接種日から12日を前後にCOVID-19の報告率が低下していく傾向があると指摘している。また、イスラエルからの報告では、1回目接種後から2回目接種までの期間におけるワクチン接種による感染報告数の減少率は46~60%とされており(関連記事:「ファイザーのワクチンはイスラエルでCOVID-19を防いだか?」)、日本におけるBNT162bの効果はイスラエルで確認された効果と同等である可能性があるとしている。

 これらの結果から現時点では、COVID-19に感染し、回復したからといって必ずしも中和抗体ができるとは限らないこと、中和抗体ができても1カ月程度で中和活性がなくなってしまう人が少なくないこと、ワクチン接種から2週間以上経過すると防御能は高まっていくが、免疫賦活の程度は背景因子によって違いがあること、中和活性が低下していく人も少なくないことなどが言えそうだ。


https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t344/202106/570792.html