イスラエルでは、ファイザーワクチン接種後、若い男性3000‐6000人に1人に心筋炎が起きている模様です。ただし、重症ではなく、数週間で症状は改善した、とのことです。
COVID-19 mRNAワクチン接種後の心筋炎 Vaccine誌より 2021/06/09 平山幹生(春日井市総合保健医療センター参事)(日経メディカル)
PfizerとBioNTechが開発したBNT162b2ワクチン接種後早期に起きた6例の心筋炎に関するイスラエルからの報告である1)。イスラエルでは、2回投与BNT162b2ワクチン接種プログラムの全国展開が2020年12月に開始され、16歳以上の人が対象となった。
今回の検討の対象は、胸の痛み/不快感のために救急受診した6人の男性患者(16〜45歳;中央値22歳)。過去あるいは現在COVID-19に感染していないことを確認した患者を対象としている。5人の患者は2回目のワクチン接種を受けた24〜72時間後に発症し、1人の患者は1回目のワクチン接種を受けた16日後に発症した。すべての患者は心電図異常およびCRP上昇(56-347 mg/L;正常レベル<5.0 mg/L)を呈していた。5人の患者では血清トロポニンT値(ピークレベル392-1062 ng/L;正常レベル<13 ng/L)が上昇し、1人の患者では高感度心臓トロポニンT値(14350 ng/L;正常レベル<34 ng/L)が上昇していた。
経胸壁心エコー検査では、4人は正常であり、2人で左心室駆出率低下の傾向にあった。心臓MR検査では、全患者において心筋炎(心筋浮腫および後期ガドリニウム増強)と矛盾しない所見を示した。心臓CT検査を実施した1人の患者と冠状動脈造影検査をした別の患者では冠状動脈の有意な狭小化は観察されなかった。
心筋炎の経過はすべての患者で軽度だった。非ステロイド抗炎症薬およびコルヒチンで治療され、入院後4〜8日で退院し、外来でフォローされた。
BNT162b2ワクチン接種後に心筋炎が発生したという報告は、予防接種後の副反応の可能性がある。ただし、今回の結果は慎重に解釈すべきであり、さらなる調査が必要であると考えられる。なお、過去5年間に該当病院での冬期(12月~3月)の心筋炎の発生率を調査すると、1カ月で平均1.17例の心筋炎(月0~3例)が報告されている。一般に、心筋炎はワクチン接種後の有害事象としては珍しい。成人における天然痘ワクチン接種後の心筋炎での罹患率は1万例に1例である。
Dr. Hirayama’s Eye―若い男性でのワクチン接種後心筋炎が注目されている
Scienceの記事2)によると、イスラエル保健省に提出された報告書の中で、PfizerとBioNTech製新型コロナワクチン接種を受けた16~24歳の男性3000人~6000人に1人の割合でまれな心筋炎を発症したと結論づけている。ただし、全例が症状は重篤ではなく、数週間で改善している。ハダッサ大学医療センターのMevorach氏は、2回のワクチン接種を受けたイスラエルの500万人のうち、110人の心筋炎症例を特定している。若い男性においてワクチン接種後の心筋炎の割合は高かった。心筋炎は通常若い男性の間でより一般的であるが、イスラエルでの症例の90%は男性に現れ、ワクチン接種を受けた人の割合は一般的な発症率(ワクチンを接種しない状態での発症率)の5〜25倍となる。
今後、日本でも若い人へのワクチン接種が始まるので、適切な情報提供を行い、リスクとベネフィットを考えて、接種するかどうかを判断してもらう必要がある。
文献
1)Mouch Set al. Myocarditis following COVID-19 mRNA vaccination. Vaccine
Available online 28 May 2021
https://doi.org/10.1016/j.vaccine.2021.05.087
2)Vogel G et al. Israel reports link between rare cases of heart inflammation and COVID-19 vaccination in young men. Science June 1, 2021
https://www.sciencemag.org/news/2021/06/israel-reports-link-between-rare-cases-heart-inflammation-and-covid-19-vaccination
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/infection/202106/570639.html
若い男性の心筋炎が予想外に多発、ファイザーやモデルナ製ワクチン By Reuters Staff(ロイター)
米疾病対策センター(CDC)が10日発表した暫定調査の結果から、メッセンジャーRNA(mRNA)を利用した新型コロナウイルスワクチンの2回目接種後に心筋炎が発症するケースが、年齢16─24歳で想定以上に多いことが示された。写真は2014年9月撮影(2021年 ロイター/Tami Chappell)
[ニューヨーク 10日 ロイター] - 米疾病対策センター(CDC)が10日発表した暫定調査によると、ファイザーやモデルナが開発したメッセンジャーRNA(mRNA)型の新型コロナウイルスワクチンについて、接種後に心筋炎を発症するケースが若い男性の間で想定以上に多いことが分かった。
心筋炎を発症した人のうち半数以上が12歳から24歳の若者で、この年齢層が接種者全体に占める割合は9%未満だったという。また、16─24歳の若者のうち2回目の接種後に心筋炎を発症したのは283人で、予想の10─102人を大幅に超過。発症した人の年齢は中央値で24歳に偏っており、8割未満が男性だった。
CDCでは、引き続き検証作業を行っており、ワクチンと心筋炎もしくは心膜炎との因果関係について結論は出ていないと表明。また発症者の大半は完全に回復していると強調した。
ファイザーは、心筋症に関するCDCの検証を支持するとしながらも、接種数と比較して発症数が少ないと指摘した。米国では、約1億3000万人がいずれかのmRNAワクチンを2回接種している。
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-vaccines-myocarditis-idJPKCN2DM20B
COVID-19 mRNAワクチン接種後の心筋炎 Vaccine誌より 2021/06/09 平山幹生(春日井市総合保健医療センター参事)(日経メディカル)
PfizerとBioNTechが開発したBNT162b2ワクチン接種後早期に起きた6例の心筋炎に関するイスラエルからの報告である1)。イスラエルでは、2回投与BNT162b2ワクチン接種プログラムの全国展開が2020年12月に開始され、16歳以上の人が対象となった。
今回の検討の対象は、胸の痛み/不快感のために救急受診した6人の男性患者(16〜45歳;中央値22歳)。過去あるいは現在COVID-19に感染していないことを確認した患者を対象としている。5人の患者は2回目のワクチン接種を受けた24〜72時間後に発症し、1人の患者は1回目のワクチン接種を受けた16日後に発症した。すべての患者は心電図異常およびCRP上昇(56-347 mg/L;正常レベル<5.0 mg/L)を呈していた。5人の患者では血清トロポニンT値(ピークレベル392-1062 ng/L;正常レベル<13 ng/L)が上昇し、1人の患者では高感度心臓トロポニンT値(14350 ng/L;正常レベル<34 ng/L)が上昇していた。
経胸壁心エコー検査では、4人は正常であり、2人で左心室駆出率低下の傾向にあった。心臓MR検査では、全患者において心筋炎(心筋浮腫および後期ガドリニウム増強)と矛盾しない所見を示した。心臓CT検査を実施した1人の患者と冠状動脈造影検査をした別の患者では冠状動脈の有意な狭小化は観察されなかった。
心筋炎の経過はすべての患者で軽度だった。非ステロイド抗炎症薬およびコルヒチンで治療され、入院後4〜8日で退院し、外来でフォローされた。
BNT162b2ワクチン接種後に心筋炎が発生したという報告は、予防接種後の副反応の可能性がある。ただし、今回の結果は慎重に解釈すべきであり、さらなる調査が必要であると考えられる。なお、過去5年間に該当病院での冬期(12月~3月)の心筋炎の発生率を調査すると、1カ月で平均1.17例の心筋炎(月0~3例)が報告されている。一般に、心筋炎はワクチン接種後の有害事象としては珍しい。成人における天然痘ワクチン接種後の心筋炎での罹患率は1万例に1例である。
Dr. Hirayama’s Eye―若い男性でのワクチン接種後心筋炎が注目されている
Scienceの記事2)によると、イスラエル保健省に提出された報告書の中で、PfizerとBioNTech製新型コロナワクチン接種を受けた16~24歳の男性3000人~6000人に1人の割合でまれな心筋炎を発症したと結論づけている。ただし、全例が症状は重篤ではなく、数週間で改善している。ハダッサ大学医療センターのMevorach氏は、2回のワクチン接種を受けたイスラエルの500万人のうち、110人の心筋炎症例を特定している。若い男性においてワクチン接種後の心筋炎の割合は高かった。心筋炎は通常若い男性の間でより一般的であるが、イスラエルでの症例の90%は男性に現れ、ワクチン接種を受けた人の割合は一般的な発症率(ワクチンを接種しない状態での発症率)の5〜25倍となる。
今後、日本でも若い人へのワクチン接種が始まるので、適切な情報提供を行い、リスクとベネフィットを考えて、接種するかどうかを判断してもらう必要がある。
文献
1)Mouch Set al. Myocarditis following COVID-19 mRNA vaccination. Vaccine
Available online 28 May 2021
https://doi.org/10.1016/j.vaccine.2021.05.087
2)Vogel G et al. Israel reports link between rare cases of heart inflammation and COVID-19 vaccination in young men. Science June 1, 2021
https://www.sciencemag.org/news/2021/06/israel-reports-link-between-rare-cases-heart-inflammation-and-covid-19-vaccination
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/infection/202106/570639.html
若い男性の心筋炎が予想外に多発、ファイザーやモデルナ製ワクチン By Reuters Staff(ロイター)
米疾病対策センター(CDC)が10日発表した暫定調査の結果から、メッセンジャーRNA(mRNA)を利用した新型コロナウイルスワクチンの2回目接種後に心筋炎が発症するケースが、年齢16─24歳で想定以上に多いことが示された。写真は2014年9月撮影(2021年 ロイター/Tami Chappell)
[ニューヨーク 10日 ロイター] - 米疾病対策センター(CDC)が10日発表した暫定調査によると、ファイザーやモデルナが開発したメッセンジャーRNA(mRNA)型の新型コロナウイルスワクチンについて、接種後に心筋炎を発症するケースが若い男性の間で想定以上に多いことが分かった。
心筋炎を発症した人のうち半数以上が12歳から24歳の若者で、この年齢層が接種者全体に占める割合は9%未満だったという。また、16─24歳の若者のうち2回目の接種後に心筋炎を発症したのは283人で、予想の10─102人を大幅に超過。発症した人の年齢は中央値で24歳に偏っており、8割未満が男性だった。
CDCでは、引き続き検証作業を行っており、ワクチンと心筋炎もしくは心膜炎との因果関係について結論は出ていないと表明。また発症者の大半は完全に回復していると強調した。
ファイザーは、心筋症に関するCDCの検証を支持するとしながらも、接種数と比較して発症数が少ないと指摘した。米国では、約1億3000万人がいずれかのmRNAワクチンを2回接種している。
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-vaccines-myocarditis-idJPKCN2DM20B