置かれた場所で咲く

教育のこと、道徳のこと、音楽のこと、書籍のこと、つれづれ、あれこれ

「みんな、素敵な人なのよ」

2007-08-27 00:04:16 | インド旅行記
次の駅で、男は列車を降りていった。

入れ違いで入ってきたのは、30代くらいの小綺麗な女性だった。フィリピン共和国のアロヨ大統領に、どことなく似ていた。
手にはハードな鞄にパンジャビードレスという、若干妙な姿。柔らかい笑みを湛えてわたしの前に座ると、荷物の整理を始めた。


いい加減疲れた足を折り曲げ、悪いことをして拗ねた子どもみたいに縮こまって、膝を抱えて体育座りをしながらぼーっと窓の景色を眺めていた。ゆっくりと、時が流れていった。


いつしか眠ってしまったわたしは、電車の大きな揺れで目を覚まし、自分の目の前に伸びる何かに気づいた。


にゅっと伸びる、二本の足。


目の前の大統領の足だった。サンダルを床に散らばせ、わたしの座るシートに裸足でかけている。

こんな状況下、自分の足を伸ばしたくなるのはわたしだけだろうか。



流石に、初対面で言葉を交わす前に、足を跨いで偉そうに座るのは心苦しすぎる。
初対面でなくても、どうなのだ、そのような格好は。
しばらくもぞもぞとお尻を動かしながら、大人気なく儚い抵抗を試みたが、相手のあっけらかんとした様子に、2分ももたずに諦めた。


横では、またもや友がちっちゃな蟹になっていた。


またうとうとして、はっと目が覚めた。
足が自由になっている。

目の前の、大統領の視線を感じた。
・・・・・・声をかけてみようか・・・?

先刻の男のとき散々だっただけに、躊躇は大きかった。


・・・失敗しても、いいじゃない。
いざ。





最新の画像もっと見る

コメントを投稿