夕闇にゆらめくガンガーは神秘的で神々しく、わたしたち異邦人をどこか寄せ付けない空気が漂っていた。
フェスティバルは夕方まで続いていた。
着いたわたしたちは、ポストカードやお香を売りにくる現地の子どもたちと交渉し、日本語ガイド見習いだというインド青年と文化や習慣、果ては恋愛やウエディングのことまで話して盛り上がって、ただただ時が過ぎるのを楽しんでいた。
陽が沈み辺りが暗くなると、どこからともなく数本の燭台がガートに運ばれ、蝋燭に火が燈された。
一人の男が狭い石畳の上に立ち、大きな燭台を手に祈りを捧げ始めた。
静寂のなか燃える炎の明かりと人々の微かな囁き声に、じんわりと包まれていた。
そこはわたしたちが生活を営む空間とはまるで別世界で、今この場で彼らと同じ時間を共有しているとはとても信じられなかった。
どこにいっても溢れる加工された音声と映像に慣れきった耳目は、どっと流れ込んできたこの刺激を脳に伝えきれずにいた。
麻痺した五感を通ってきたそれらに意識さえも麻酔をかけられたようで、わたしはなすがままにぼんやりと視線を泳がせていた。
ずっとこのままでいたかった。一言でも声を漏らしたら、この心地良い酔いから引き剥がされ夢から覚めてしまいそうだった。
遥か遠く、臨んだ船に積まれた十数もの火が、ガンガーに流された。
まるで死者の魂を慰めるかのように、またそのものであるかのように、いくつもの明かりが暗闇の中をゆらゆらと泳ぎ、いつしか散り散りになって川下へと流されていった。
祈りの儀式が終わり、男は壇を降りた。
すべてがあまりにも夢のようで、現実に還るまで、わたしはまた少し時間を要した。
フェスティバルは夕方まで続いていた。
着いたわたしたちは、ポストカードやお香を売りにくる現地の子どもたちと交渉し、日本語ガイド見習いだというインド青年と文化や習慣、果ては恋愛やウエディングのことまで話して盛り上がって、ただただ時が過ぎるのを楽しんでいた。
陽が沈み辺りが暗くなると、どこからともなく数本の燭台がガートに運ばれ、蝋燭に火が燈された。
一人の男が狭い石畳の上に立ち、大きな燭台を手に祈りを捧げ始めた。
静寂のなか燃える炎の明かりと人々の微かな囁き声に、じんわりと包まれていた。
そこはわたしたちが生活を営む空間とはまるで別世界で、今この場で彼らと同じ時間を共有しているとはとても信じられなかった。
どこにいっても溢れる加工された音声と映像に慣れきった耳目は、どっと流れ込んできたこの刺激を脳に伝えきれずにいた。
麻痺した五感を通ってきたそれらに意識さえも麻酔をかけられたようで、わたしはなすがままにぼんやりと視線を泳がせていた。
ずっとこのままでいたかった。一言でも声を漏らしたら、この心地良い酔いから引き剥がされ夢から覚めてしまいそうだった。
遥か遠く、臨んだ船に積まれた十数もの火が、ガンガーに流された。
まるで死者の魂を慰めるかのように、またそのものであるかのように、いくつもの明かりが暗闇の中をゆらゆらと泳ぎ、いつしか散り散りになって川下へと流されていった。
祈りの儀式が終わり、男は壇を降りた。
すべてがあまりにも夢のようで、現実に還るまで、わたしはまた少し時間を要した。
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