渋沢栄一のアンドロイド完成 深谷市の記念館で3日公開
2020年7月2日 ・東京新聞地域版
新1万円札の肖像に選ばれた深谷市出身の実業家・渋沢栄一(1840~1931年)の功績を後世に残そうと、生前の姿を再現したアンドロイドが完成した。同市下手計の渋沢栄一記念館で3日から、一般公開される。
「皆さん、こんにちは。渋沢栄一です」。6月30日、記念館で開かれた除幕式。披露された渋沢のアンドロイドは、深々と頭を下げ、経済と道徳は両立するという「道徳経済合一説」を、身ぶりを交えて丁寧に説明した。
アンドロイド製作は、渋沢が新1万円札の顔に選ばれ、2021年のNHK大河ドラマの主人公にも決まったことを機に、同市出身の鳥羽博道・ドトールコーヒー名誉会長の発案と1億円の寄付で実現した。2体が計画され、今回完成したのは70歳ごろの洋装の立ち姿。もう1体の、和装でくつろぐ80歳ごろの姿のものは、旧渋沢邸「中の家(なかんち)」の耐震補強工事が終了する22年春ごろに公開予定。製作費は2体で計約8200万円。
約153センチの身長など体形は、残された服や帽子、写真などを参考にした。声は、1923(大正12)年に都内の日本蓄音器商会で講演した際のレコード録音の肉声を参考に、似た声優の声で再現した。今後、「道徳経済合一説」を含め7種類程度の講演を準備する予定だ。
除幕式には、渋沢が晩年を過ごした東京都北区の花川与惣太区長も出席。「ぜひ(北区でも)出張講演をお願いしたい」と語り、会場を和ませた。
製作を監修した大阪大大学院の石黒浩教授(ロボット工学、アンドロイドサイエンス)は「渋沢翁の存在や考え方をよりリアルに後世に伝えられる」と製作の意義を強調。鳥羽さんは「想像以上のものができた。多くの人が功績を知るきっかけになる」と喜び、小島進市長は「深谷市の魅力を知ってもらう目玉になる」と期待を込めた。
アンドロイドによる講演会は1回約20分で、1日計8回開催予定。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、記念館への来館は原則2日前までの事前予約が必要。講演会聴講も1回につき最大20人に制限される。問い合わせは、記念館=電048(587)1100=へ。