障害児のありのままの魅力をより多くの人に 広告モデルで多様性訴え 都内企業「華ひらく」の挑戦
2022年6月5日 06時00分・東京新聞
障害の有無の違いを認め合える、誰もが堂々と生きられる社会へ—。障害児支援事業を展開する民間企業「華ひらく」(東京都新宿区)の経営者内木うちき美樹さん(39)=千葉県市川市=が、障害のある子どもが企業広告などのキッズモデルとして活躍するマネジメント事業を立ち上げた。自身も障害児の母親。見て、知ってもらうことこそが認め合う前提になると信じる。内木さんは「ありのままの障害児の魅力を、より多くの人に知ってほしい」と願う。
◆こんなに楽しんで撮影できるなんて…来て良かった
雨傘に、ピンクや紫のカラフルな雨粒が降り注いでいた。同県鴨川市にある一軒家の窓ガラス。華ひらくに所属するなぎさちゃん(6)とすみれちゃん(7)の2人は窓の外の雨を見て、チョークで思い思いに絵を描いた。
日本理化学工業(川崎市)が開発した、つるつるした面に使え、簡単に拭き取れるチョーク「キットパス」。その広告写真の撮影現場で、同社商品企画部の雫しずく緑さん(42)は「誰にでも、多くの人に使ってほしい商品。多様性を訴えるメッセージにぴったり」と手応えを語る。
軽度の知的障害と自閉症と診断されるなぎさちゃんの初仕事を見守った父親(34)=千葉県習志野市=は「娘は絵が大好きで、普段通りの姿が出た。こんなに楽しんで撮影できるなんて。来て良かった」と喜ぶ。
2010年に設立した華ひらくに所属する障害児モデルは、現在、ゼロ歳から10歳までの21人。当初は主に英会話のレッスン事業を展開していたころ、2歳になった内木さんの長男尊たけるちゃん(8)が重度の知的障害と自閉症と診断された。どんな風に育つのか、不安と恐怖に襲われた。内木さんは「障害について何も知らなかった。無知だったから、障害者に対して偏見もあった」と振り返る。
◆障害を知り、理解してもらうきっかけをつくりたい
インターネットで調べ関連本を読みあさった。知識を身に付けるたび、不安が徐々に和らいだ。そんな経験から「まずは知的障害について知ってもらわないと」と思い立ち、長男と暮らす日々の動画を、ユーチューブで発信し始めた。
「大半の人は、障害者に触れる機会がないから、どう接すればいいのか分からないだけ。見てもらう機会を増やそう」。たどり着いたのがモデル事業だった。
「障害児だからと、つくられたポーズをするのではなく、そこにいるありのままの姿を、より多くの人に知ってほしい」と内木さん。シナリオ、演出に沿うには難しさがあるため写真の仕事に限定し、企業側から「障害児モデルと分からないのではないか」と懸念されることもあるが、障害の種類などを写真に付記してもらうようにしている。
内木さんは言う。「モデルの親たちは決してわが子を芸能人にさせたいわけではない。障害を一度公表すれば、2度と削除できないかもしれない。それでもモデル登録を決めるのは、障害を知り、理解してもらうきっかけをつくりたいからなんです」。
2022年6月5日 06時00分・東京新聞
障害の有無の違いを認め合える、誰もが堂々と生きられる社会へ—。障害児支援事業を展開する民間企業「華ひらく」(東京都新宿区)の経営者内木うちき美樹さん(39)=千葉県市川市=が、障害のある子どもが企業広告などのキッズモデルとして活躍するマネジメント事業を立ち上げた。自身も障害児の母親。見て、知ってもらうことこそが認め合う前提になると信じる。内木さんは「ありのままの障害児の魅力を、より多くの人に知ってほしい」と願う。
◆こんなに楽しんで撮影できるなんて…来て良かった
雨傘に、ピンクや紫のカラフルな雨粒が降り注いでいた。同県鴨川市にある一軒家の窓ガラス。華ひらくに所属するなぎさちゃん(6)とすみれちゃん(7)の2人は窓の外の雨を見て、チョークで思い思いに絵を描いた。
日本理化学工業(川崎市)が開発した、つるつるした面に使え、簡単に拭き取れるチョーク「キットパス」。その広告写真の撮影現場で、同社商品企画部の雫しずく緑さん(42)は「誰にでも、多くの人に使ってほしい商品。多様性を訴えるメッセージにぴったり」と手応えを語る。
軽度の知的障害と自閉症と診断されるなぎさちゃんの初仕事を見守った父親(34)=千葉県習志野市=は「娘は絵が大好きで、普段通りの姿が出た。こんなに楽しんで撮影できるなんて。来て良かった」と喜ぶ。
2010年に設立した華ひらくに所属する障害児モデルは、現在、ゼロ歳から10歳までの21人。当初は主に英会話のレッスン事業を展開していたころ、2歳になった内木さんの長男尊たけるちゃん(8)が重度の知的障害と自閉症と診断された。どんな風に育つのか、不安と恐怖に襲われた。内木さんは「障害について何も知らなかった。無知だったから、障害者に対して偏見もあった」と振り返る。
◆障害を知り、理解してもらうきっかけをつくりたい
インターネットで調べ関連本を読みあさった。知識を身に付けるたび、不安が徐々に和らいだ。そんな経験から「まずは知的障害について知ってもらわないと」と思い立ち、長男と暮らす日々の動画を、ユーチューブで発信し始めた。
「大半の人は、障害者に触れる機会がないから、どう接すればいいのか分からないだけ。見てもらう機会を増やそう」。たどり着いたのがモデル事業だった。
「障害児だからと、つくられたポーズをするのではなく、そこにいるありのままの姿を、より多くの人に知ってほしい」と内木さん。シナリオ、演出に沿うには難しさがあるため写真の仕事に限定し、企業側から「障害児モデルと分からないのではないか」と懸念されることもあるが、障害の種類などを写真に付記してもらうようにしている。
内木さんは言う。「モデルの親たちは決してわが子を芸能人にさせたいわけではない。障害を一度公表すれば、2度と削除できないかもしれない。それでもモデル登録を決めるのは、障害を知り、理解してもらうきっかけをつくりたいからなんです」。