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「闇に香る嘘」 下村敦志

2016年02月10日 01時04分01秒 | 読書
「闇に香る嘘」 下村敦志



27年間も兄と信じてきた男は、偽物なのか?

戦後満州から母と引き上げてきた村上和久には兄がいたが、満州で引き上げ途中にはぐれてしまう。
兄はそのまま中国残留孤児となり、中国人の手で育てられる。

ようやく日本政府が重い腰を上げて孤児の調査を始めたおかげで、兄は身元が判明し、無事に再会を果たすことになる。

しかし、その兄は、和久の孫娘が腎不全のため、腎移植に適合するか否かを確かめる検査をかたくなに拒否する。
疑惑が疑惑を呼び、日本に渡りたいがために日本人孤児と偽っている別人ではないのか?

そうこうするうちに、老いた母親が不審な死に方をする。果たして事故死か、殺人か?

村上和久は帰国後長年の無理がたたり、失明している。
北海道の極寒の中で、不審さを重ねる兄と、目の見えない不便さと闘いながら、謎を追及していく和久。

隅々まで張り巡らされた伏線。

最後には、意外なというより、とてつもない痛みを伴う真実が明かされる。

中国残留孤児の悲惨な体験描写も胸を打つ。
苦悩と謎が駆け巡る、本当に骨太で素晴らしい小説だ。
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