中谷 勇 理学博士 元山形大学教授
「おふくろの味」というと具体的にいくつかの料理名があるようですが、私は、もっと広く考えたい。家庭によってそれぞれの味があります。同じ料理を作ってもつくる人によって微妙に味が違い、それぞれ作る人の味があります。一般に、子供からみれば家庭で料理をつくるのは母親なので、日常の家庭料理の味がおふくろの味と言ってよいでしょう。鳥の雛に「刷り込み」(孵化して最初に見た動く物を親と認識する)があるのと同様に、人間にも子供の時から食べていた食べ物の味が刷り込まれています。そのため家を離れて生活していると時々、おふくろの味が懐かしく想いだされます。おふくろの味は、親を想いださせる大切な味です。
今の時代、便利になりいろいろな食べ物が、スーパーやコンビニから買ってきて電子レンジで温めただけで食べられるようになりました。これらはどこの家庭で食べても同じ味です。また、いろいろな料理のレシピがあります。レシピ通りにつくれば誰が作ってもほとんど同じ味になります。このように、親子の絆が無くなってゆくのかと思うと寂しくなります。
レシピは必ずしも完璧ではありません、あくまでも参考にして、料理を作る人の好みでモデファイし、より美味しくご自分に合ったのを作ることが大切です。子育て中のお母さんはいろいろ多忙で大変と思いますが、自分だけの味を子供に味わせることが大切と考えます。それは特別な料理ではなく、お母さんがつくる日常のごく普通の食べ物です。漬け物は、「漬け物の素」などを使わないものも漬けましょう。
大人になって家を離れた息子さん、娘さん達は、おふくろの味が恋しくなるのです。現在のように、何かと多忙であると家庭料理を作るのは大変と思いますが、家族の絆のためには家庭料理は大切です。
必ずしも家庭での料理は母親でなく、父親でもよろしいです。時々、母親と父親が日常の料理をつくるとお子さんには両親それぞれの味がこいしくなるでしょう。