知らない世界へ帰りたい(日本探求)

自分の祖先はどんなことを考えていたのか・・・日本人の来し方、行く末を読み解く試み(本棚10)。

「小島一郎写真集成」

2010年12月05日 20時49分56秒 | 日本人論


39歳で夭折した津軽の写真家、小島一郎氏の写真集です。
発行はなんと「青森県立美術館」。

津軽の風景をモノクロ写真中心に収めています。
なんといっても暗雲垂れ込めるような空の表現が特徴的で、暗室での現像の際「覆い焼き」という技法を使っているそうです。
自然の厳しさを演出するその表現は、絵画的ですらあります。

もう一つの特徴は、写真の中の人物がほとんど背中を向けていること。
当然、喜怒哀楽の表情は読めません。
しかし、影となった人物は、特定の個人ではなく「その時代にその場所で生きた人々」という普遍性を帯びる効果を醸し出しています。

厳しい雪国で黙々と農作業を続ける人々。
生きることの辛さを物語る背中。

日本の歴史を底辺で支えてきたのは、間違いなくこのような名も無き人たちです。
祖先であり、私であり、あなたであり、未来の子ども達でもあります。

私自身、その昔学生時代を津軽で過ごし、自分のルーツを探すべくもがいていました。
小島氏はその答えを写真で示してくれたような気がします。

私にとっての「原風景」。
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「遠野物語」by 森山大道

2010年12月05日 20時29分00秒 | 日本の美

カメラマンの森山大道が柳田国男の「遠野物語」に触発されて撮り下ろした写真集です。
森山氏は幼少期、父親の仕事の都合で転居・転校を繰り返し、お盆に帰るような田舎がありません。
自分の「原風景」とは何ぞや?
その問いへの答えとして、半分シンボリックな感覚で漠然と「遠野」に憧れていることを彼自身が書いています。

訪れた遠野は観光崩れしておらず、人々が黙々と生活を続ける日本の田舎町でした。

ひたすらシャッターを切り続けた写真は、その生活を切り取った断片です。

・・・残念ながら、写真にあまり魅力は感じませんでした。
文庫本を出張中の電車の中で斜め読みしたので、写真が小さくて迫力が十分に伝わらないのかなあ。

この本は「フォト・エッセイ」の形をとっています。
写真で勝負するプロが文章で自分の作品を解説するのはタブーじゃないんだろうか、と思ってしまう私です。

大好きな村上春樹氏でさえ、彼が自分の作品を語るインタビューは見たくも聞きたくもない人間なので(苦笑)。

実は私もシンボリックな「遠野」に憧れる一人で、その点では森山氏と同じ穴のムジナです。
学生時代は「民俗研究部」というサークルに属し、日本の辺境に生活する名も無き人々に自分のルーツを探そうともがいていました。

だから、それ以上のモノ、その先にあるモノを求めてしまうのかもしれません。
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