お正月スペシャル「100分de日本人論」
2015年1月2日、NHKで放送
録画してから2年以上経過してから見ました。
見応え十分の刺激的な番組で、「日本人ってすごいんだ」と再認識させてくれました。
<番組内容>
「日本人論」といいますと、とかく「政治的」な取り扱い方をされがちなテーマですが、今回は、「名著」から読み解くというスタンスに立って、あえて「哲学的」に、かつ「縦方向に奥深く」、日本人のアイデンティティや文化の基層に迫ってみる手法をとりました。また、通常は、「平易にわかりやすく」を旨とする「100分de名著」ですが、スペシャル版ということで、少しだけディープな議論にも挑んでみました。
今回のゲストの皆さんは、プロデューサーAにとっては、大変思い入れの深い方々でした。私が大学一年生の頃出版された中沢新一さんの「チベットのモーツァルト」は夢中になって読みふけった本の一冊で、以来、ほぼ全ての著書を読ませていただいています。また、ちょうどその頃発刊を終えた、松岡正剛さんが編集されていた「遊」は、私に知への扉を開いてくれた憧れの雑誌でした。斎藤環さんの著書「社会的ひきこもり」は、マスコミ業界に入って中堅になってから読んだ本で、精神医学が社会批評としても大きく機能しうるということを気づかせてくれた本ですし、赤坂真理さんの小説「東京プリズン」は今年読んだ本の中で最も衝撃を受けた本。そう、今回ご出演いただいた皆さんは、私の「知」を育ててくださった恩人でもあったわけです。同世代の方で私と同じ感慨を持たれる方も多いかもしれません。また、赤坂真理さんはもちろん、他のベテラン三人も現在でも第一線で活躍されている方々なので、若い世代の皆さんの中にも、大いに刺激を受けているという人が大勢いるかもしれませんね。
収録は実に5時間以上にわたり、日本人についてとことん語りつくしていただきました。そのエッセンスをお伝えすべく奮闘いたしましたが、あれだけ情報量の多い名著を解説するにはやはりどうしても時間が足りなかったというのも実感です。もしかしたら物足りないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。去年の「100分de幸福論」に引き続き、後日、ムック本という形でも展開させていただこうと考えております。ぜひご一読いただけたらと思います。
1.九鬼周造「いきの構造」
★ 解説:松岡正剛(日本文化研究者)
九鬼周造は軍人のお偉いさんと芸者さんの間にできた子。そして京都大学教授でありながら京都の芸妓と結婚しました。そういうエリートとアウトサイダーの微妙なバランスから生まれたのがこの書ということを初めて知りました。
2.折口信夫「死者の書」
★ 解説:赤坂真理(小説家)
折口信夫は柳田国男の弟子でありながら、ちょっと毛並みが違うなあと以前から感じていました。
なんというか、民俗学の中にファンタジーが入ってくるのですよね。
この番組を見てその理由が判明。
彼はコカイン常習者で、生と死の間を行ったり来たり(トリップ)していたようです。
戦前はコカインが薬局で違法ではなく入手可能だったらしく、晩年の川端康成もラリッていたと読んだことがあります。
3.河合隼雄「中空構造日本の深層」
★ 解説:斎藤環(精神科医)
この番組の中でいちばん盛り上がったセクション。
少し前に河合先生の著作を読んでいたこともあり、うんうん頷きながら聞きました。
4.鈴木大拙「日本的霊性」
★ 解説:中沢新一(人類学者)
平安時代は貴族の宗教であった仏教が、鎌倉時代になり民衆の手に降りてきた。その際に不必要な者はそぎ落とされ、南無阿弥陀仏の浄土真宗が残った、という解説は非常に説得力がありました。
殺生する生業は「悪」と見なされ、それまでは仏教で救済対象から筈さて板武士、山の民(猟師)、川の民(漁師)。
親鸞はそれら「悪人」も浄土に行けると自信を持って強く主張しました。
ここで初めて、仏教が日本の宗教として受け入れられたのでした。
この本は、日本人より先に外国人に理解されました。
ヒッピー〜ビートルズ世代、そしてスティーブ・ジョブズ。
この本に啓発され、影響を受けた人達です。
内容が深すぎて、今の私には消化不良気味。いずれトライしたい書物です。
※ この番組内容が書籍(別冊100分de名著 「日本人」とは何者か? )になって発売されています。
2015年1月2日、NHKで放送
録画してから2年以上経過してから見ました。
見応え十分の刺激的な番組で、「日本人ってすごいんだ」と再認識させてくれました。
<番組内容>
「日本人論」といいますと、とかく「政治的」な取り扱い方をされがちなテーマですが、今回は、「名著」から読み解くというスタンスに立って、あえて「哲学的」に、かつ「縦方向に奥深く」、日本人のアイデンティティや文化の基層に迫ってみる手法をとりました。また、通常は、「平易にわかりやすく」を旨とする「100分de名著」ですが、スペシャル版ということで、少しだけディープな議論にも挑んでみました。
今回のゲストの皆さんは、プロデューサーAにとっては、大変思い入れの深い方々でした。私が大学一年生の頃出版された中沢新一さんの「チベットのモーツァルト」は夢中になって読みふけった本の一冊で、以来、ほぼ全ての著書を読ませていただいています。また、ちょうどその頃発刊を終えた、松岡正剛さんが編集されていた「遊」は、私に知への扉を開いてくれた憧れの雑誌でした。斎藤環さんの著書「社会的ひきこもり」は、マスコミ業界に入って中堅になってから読んだ本で、精神医学が社会批評としても大きく機能しうるということを気づかせてくれた本ですし、赤坂真理さんの小説「東京プリズン」は今年読んだ本の中で最も衝撃を受けた本。そう、今回ご出演いただいた皆さんは、私の「知」を育ててくださった恩人でもあったわけです。同世代の方で私と同じ感慨を持たれる方も多いかもしれません。また、赤坂真理さんはもちろん、他のベテラン三人も現在でも第一線で活躍されている方々なので、若い世代の皆さんの中にも、大いに刺激を受けているという人が大勢いるかもしれませんね。
収録は実に5時間以上にわたり、日本人についてとことん語りつくしていただきました。そのエッセンスをお伝えすべく奮闘いたしましたが、あれだけ情報量の多い名著を解説するにはやはりどうしても時間が足りなかったというのも実感です。もしかしたら物足りないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。去年の「100分de幸福論」に引き続き、後日、ムック本という形でも展開させていただこうと考えております。ぜひご一読いただけたらと思います。
1.九鬼周造「いきの構造」
★ 解説:松岡正剛(日本文化研究者)
九鬼周造は軍人のお偉いさんと芸者さんの間にできた子。そして京都大学教授でありながら京都の芸妓と結婚しました。そういうエリートとアウトサイダーの微妙なバランスから生まれたのがこの書ということを初めて知りました。
2.折口信夫「死者の書」
★ 解説:赤坂真理(小説家)
折口信夫は柳田国男の弟子でありながら、ちょっと毛並みが違うなあと以前から感じていました。
なんというか、民俗学の中にファンタジーが入ってくるのですよね。
この番組を見てその理由が判明。
彼はコカイン常習者で、生と死の間を行ったり来たり(トリップ)していたようです。
戦前はコカインが薬局で違法ではなく入手可能だったらしく、晩年の川端康成もラリッていたと読んだことがあります。
3.河合隼雄「中空構造日本の深層」
★ 解説:斎藤環(精神科医)
この番組の中でいちばん盛り上がったセクション。
少し前に河合先生の著作を読んでいたこともあり、うんうん頷きながら聞きました。
4.鈴木大拙「日本的霊性」
★ 解説:中沢新一(人類学者)
平安時代は貴族の宗教であった仏教が、鎌倉時代になり民衆の手に降りてきた。その際に不必要な者はそぎ落とされ、南無阿弥陀仏の浄土真宗が残った、という解説は非常に説得力がありました。
殺生する生業は「悪」と見なされ、それまでは仏教で救済対象から筈さて板武士、山の民(猟師)、川の民(漁師)。
親鸞はそれら「悪人」も浄土に行けると自信を持って強く主張しました。
ここで初めて、仏教が日本の宗教として受け入れられたのでした。
この本は、日本人より先に外国人に理解されました。
ヒッピー〜ビートルズ世代、そしてスティーブ・ジョブズ。
この本に啓発され、影響を受けた人達です。
内容が深すぎて、今の私には消化不良気味。いずれトライしたい書物です。
※ この番組内容が書籍(別冊100分de名著 「日本人」とは何者か? )になって発売されています。