京の昼寝~♪

なんとなく漠然と日々流されるのではなく、少し立ち止まり、自身の「言の葉」をしたためてみようと・・・そんなMy Blogに

「日曜日の夕刊」(重松 清著)

2005-08-28 | Book


「日曜日の夕刊」(重松 清著)【新潮文庫】


 日曜日、お父さんがいてお母さんがいて「僕」がいて、
  お兄ちゃんとお姉ちゃんは恋人がいて・・・。
   春夏秋冬、日常の些細な出来事を12の短編小説でラッピング。
    忘れていた感情が鮮やかに蘇る。
     夜空のもとで父と息子は顔を見合わせて微笑み、
      桜の木の下、若い男女はそっと腕を組み・・・。
       昨日と同じ今日なのに、何故だか少し違って見える。
        そんな気になる、小さな小さなおとぎ話。


 重松作品は6作品目になります。 今回は12編からなる短編集です
 
チマ男とガサ子
  “潔癖症の男と片付けられない女”、割とどこにでもあるテーマだけれど、主人
  公たちは妙に活き活きしている。何故か男と女の出会いにこういう匂いのする
  物語があって不思議ではない。むしろ懐かしい「想い」が胸に去来した。
  「はがゆさ」ではない「可愛さ」「可憐さ」がそこにはあった。
  この二人、結構好きになった
カーネーション
  誰しも心に、母への感謝を赤いカーネーションに込める・・・母の日に。死別
  した二人の子持ち男と、その子供たちを受け入れた女性。新しい母にカーネー
  ションは新たな「意味」を持つ。受け入れる優しさは誰の心の中にはあるもの
  だと感じさせられた
桜桃忌の恋人
  太宰治に傾倒し、自ら「死」を選択する女。太宰を一切読んだことのなかった
  男が、太宰を読んで変わる。その死を見取って生き続けることへの彼女に
  対する微妙な気持ち。これは所詮分からない気持ちかも
サマーキャンプへようこそ
  会話のない父子がキャンプを安易に考え、息子にカッコイイ父を見せるはずが
  全く予想外の結果に。キャンプという普段のテリトリーから離れ、持てなかった
  父と息子だけの時間が、この二人の間の距離を縮める。息子でなくても娘でも
  こういう瞬間は子供を持つ親なら経験のあるところだ
セプテンバー’81
  二度と会わない僅かな時間の出会いと別離。東京にあこがれ、でも東京を
  捨てる。たった数時間の二人の時間は、薄っぺら恋愛よりも存在感のある
  爽やかな時間の経過を感じさせる。羽目を外すのではなく、枠から出てみる
  ことも人間必要かな(笑)
寂しさ霜降り
  心の中では許しているのに、出てくる言葉は父親に対する恨みつらみ。 
  でも・・・その父も癌で死に直面し、その父に対する今までの自省を痩身して
  返す娘。血のつながりって言葉じゃないよね
さかあがりの神様
  子供の頃って妙に父を意識することがある。それは鉄棒でさかあがりができる
  時や自転車に乗れるまでの時、決まって母ではなく父だ。果たして父ができた
  のかどうかはわからないけど、教えてもらってかなり頼れる“父”を印象に残し
  たことが誰しもある。さかあがりの神様はきっといるんだと信じて
すし食いねェ
  僕の子供の頃は、まだ回る寿司などなく、ましてや寿司屋の暖簾をくぐること
  なんてなかった。一元さんお断りの銀座の一流寿司屋。誕生日とはいえ、偶然
  出会った高級寿司を食えるチャンス。普段着では通用しない世界で、家族は
  それまでとは違った息子の誕生日に遭遇する。母は極限状態で強し
サンタにお願い
  1時間ポッキリのサンタさん。 お金じゃなくて温かさが欲しい。 何もいらない
  から人肌の温かさが欲しいことが誰しもある。 
   街頭募金の決まり台詞・・・。 「恵まれない子供たちに愛の手を」。 
  「恵まれない子に取りあえず必要なのはお金で、愛が必要なのは恵まれた
  子供のほうなんだと思いません?」 ・・・思います
後藤を待ちながら
  本当に会いたかった人は? 昔は嫌がられていた人も時間が経てば懐かし
  い。 たとえ他の人たちがどう思っていても、会いたい人は誰の心にも居る
  はず。 「おまえが僕たちと同じ教室にいたあの頃の話をしながら、おまえを
  待とう。 ずっと、待つ。」
柑橘系パパ
  娘を持つオヤジは誰でも経験すること。 幼い頃はまとわりついていた娘も
  いつか、オヤジを臭いと言う。 本心からそう思われていたら本当に哀しい
  生き物だなぁ、オヤジなんて・・・。
卒業ホームラン
  
息子とのキャッチボール。 息子が産まれた日から父親は誰しもが憧れる風景。
  少年野球の監督としての父、補欠ギリギリの息子。 監督と選手、父と子、この
  関係において父としての想い、監督としての面子、そんな葛藤を見事に描いて
  みせている

 この12編の短編小説は、それぞれに趣があり、誰しも何となく巷にあるような題材を、重松カラーで描いている作品群だと思います。 通勤時間の行き帰りに一つの作品を読み終わられるほど良い長さの小説でもあり、中途半端に終われないので(かといって最寄駅では降りないといけないので)、キリのいいところまでは駅のホームで読みきってしまう12編でした~

   

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