第121回パリ~ルーベが4月7日に開催され、ディフェンディングチャンピオンのマチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク)が予想通り連覇を果たしました。それも60km/hを独走し、後続に3分もの差をつけてしまったのです。これで今年のモニュメントはCANYONのCFRが3連勝という結果になりました。
ロンドの直後は疲労困憊で心配だったファンデルプールでしたが、パヴェ(石畳)区間に入ると水を得た魚のように軽快に走り始めると、途中パンク等で遅れたチームメイトを待つ余裕さえ見せ、ゴールまで残り60kmでセクター13のオルシーの石畳へ入ると、決定的なアタックを決めるのです。彼は瞬く間に差を広げ、5km先で15秒に広がっていました。
後方ではリドル・トレックのピーダスンがアタックを試みる度に、ヴェルメールシュがそれを抑えに動き、ゴールまで残り48.5kmの、難易度5つ星のモン・サン・ペヴェールの石畳セクターを通過した時、ファンデルプールのアドバンテージは1分半を越えていたのです。UCIでは後続と1分以上差が開くとチームカーが入ってこられるというルールがあり、個人的にはこのチームカーが上がって来た段階で、ファンデルプールの勝利を確信しました。
独走に入ったファンデルプールの最大の敵はパンクを含めた機材トラブルだけでした。チームカーが後ろに付くことで、万が一の時にバイク交換が可能になったのですから。それにしてもアルペシン・ドゥクーニンクのチームの強さが際立ったレースでした。後半の抑えに回ったヴェルメールシュは2022年UCIグラベル世界選手権でファンデルプール等を抑えて初のチャンピオンになっているのです。
また。3分離されたものの、ヴェロドロームのスプリントで、鮮やかにインを差して2位表彰台を決めたフィリップセンは今年のミラノ~サンレモの優勝者で昨年のツールドフランスのマイヨ・ヴェールを獲得したスプリンターなのです。
ファンデルプールを含めたアルペシンのこの3人は強烈で、他のチームが次々とアシストを失い孤立して行く中、アルペシンはパリ~ルーベの表彰台に2人、TOP10に3人きっちり揃えて見せたのです。
この3選手の中でパンクも機材トラブルが無かったのはファンデルプールだけでした。同じバイクや機材でも乗り手によってここまで違うのかというのが正直な感想です。タイヤはVittoriaのCORSA PROの32Cで、空気圧は選手の体重や好みによって違うのでしょうが、同じバイクに同じタイヤでも、あのパヴェをノーパンクで走り切るのもファンデルプールのテクニックなのだと痛感させられました。荒れた路面でもバイクはほとんど跳ねることもなく、まさに水を得た魚でした。
それでもフィリップセンがパンクで遅れた時には、集団の中でしっかりコントロールをしながら合流を待つ動きも見せているのです。その上で、自分は独走に入る。後続にはチームメイトが2人でアルペシンの鉄壁体制の完成でした。