CYCLINGFAN!!

自転車をこよなく愛し、自分の脚と熱いハートで幾つになっても、可能な限り、どこまでも走り続けます~♪

ツール・ド・フランス2024を振り返る(10)

2024-11-23 14:47:20 | ツール・ド・フランス
 今年のツール16日目は2度目の休養日明けでしたが気温が38℃を超える猛暑の中をスタートすることになります。今年はオリンピックの関係でパリ・シャンゼリゼではなくニースでの個人TTで幕を下ろすためスプリンター勢にとっては最後の平坦ステージとなりました。

 そんなスプリントステージをせいたのはフィリップセンでした。昨年はマイヨヴェールを獲得し、今年もミラノ~サンレモでポガチャルを抑えて優勝。今年もマイヨヴェールの最有力候補に名が挙がっていたのですが、降着や落車が響き、ここ迄はギルマイに次ぐ2位でしたが、このステージは完璧なアシストを受け、ファンデルプールの背後から発射したフィリップセンがロングスプリントで完勝。

 この日は残り1.5km地点のラウンドアバウトに差し掛かったところで、集団中ほどに位置していたギルマイが落車に見舞われます。180/1という悲運。188.6kmのステージの残り1.5kmでの落車でスプリンター達の運命が変わってしまうのです。この落車で脚を負傷したギルマイが翌日から続くアルプスの厳しい山岳を乗り切れるのか?そんな疑問さえ頭を過るステージでした。
 17日目からツールの舞台はアルプスへと向かって行きます。今年のツール・ド・フランスは逃げに適したステージが少なく、ここまで逃げ切り勝利はわずか3つ。そんな逃げ屋たちの数少ないチャンスとなったのが、アルプス山脈を舞台にしたサン・ポール・トロワ・シャトーからシュペルデヴォリュイに向かう177.8kmでした。
 大会も17日目ともなると大きなタイム差が付いているので、総合優勝に絡まない選手の逃げが容認される傾向が強くなるのです。また、スプリントステージが無いことから、この日はバイクを降りるスプリンターも出ています。前日の落車の影響が気になっていたマイヨヴェールのギルマイの姿はありました。
 アクチュアルスタートを切った集団には強い横風が吹きつけ、ワウト・ファンアールトやティシュ・ベノートなどヴィスマ・リースアバイクの選手たちが集団分断を試みます。また逃げ切りを狙うEFエデュケーション・イージーポストやDSMフィルメニッヒ・ポストNLも積極的に仕掛けたため、最初の50kmは平均速度47km/hに達するハイペースで進行。

 残り63km地点の中間スプリントは逃げたマグナス・コルト、ボブ・ユンゲルス、ロマン・グレゴワールが通過し、残るポイントを右膝に白いネット包帯を巻いたギルマイがスプリントでフィリップセンを抑えてゲット。どうやら大きなケガにはならなかったようです。
 1級山岳ノワイエ峠(距離7.5km/平均8.1%)の登りではマルタンとマドゥアスが先頭4名に追いつき、人数の絞られていく追走集団からサイモン・イェーツが加速。先頭6名に合流し、そのまま踏み続けたイェーツは単独先頭に立ちます。

 その背後からEFのリチャル・カラパスがスティーブン・ウィリアムズと共に迫って行きました。カラパスはウィリアムズを振り落とすハイスピードでイェーツにジョインし、1級山岳の頂上手前1.8km(残り13.3km)地点でアタックします。cannondaleのSupersix EVOに乗るカラパスが後続を引き離して行くのは爽快でした。

 ここまでもミラノ~トリノのアルベルト・ベッティオルの勝利やジロのゲオルグ・シュタインハウザーのステージ優勝を見て来ましたが、ツール・ド・フランスでのステージ優勝はカラパスの悲願だと知っているので尚更でした。ここまでジロとブエルタでは勝っていて、東京オリンピックの金メダリストでもあるカラパスは何故かツールに縁が無かったからです。昨年は新型Supersix EVOのお披露目でカラパスには期待していたのですが、落車で早々にリタイヤしていたのです。

 懸命に追走するサイモン・イェーツに37秒の差を付けてゴールしたカラパスはツール初勝利を飾ることが出来ました。7分以上後方のプロトンでは、総合優勝争いが起きていて、一度はポガチャルのアタックで遅れかけたものの下りで追いついたレムコ・エヴェプールがプロトンから飛び出しポガチャルから10秒タイムを奪い返します。一度はレムコを見送ったポガチャルでしたが、最後にスプリントを見せヴィンゲゴーから2秒というタイム差を奪うのです。
 3分以上のタイム差がある中で2秒を取りに行くというのは、並みの選手なら無謀と非難されそうですが、ポガチャルは「最後の山岳では脚のストレッチができた」と言ってのけるのですから、次元が違います。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ツール・ド・フランス2024を振り返る(9)

2024-11-17 15:05:05 | ツール・ド・フランス
 ツールの14ステージはピレネー2連戦に突入し、総合争いが佳境に入ります。レース前のインタビューでアダム・イエーツでステージ優勝を自分はタイム差をキープすると冗談めかして話していたポガチャル。超級トゥールマレーを越え、最後の超級プラ・ダデではマルク・ソレルからパヴェル・シバコフへと牽引が引き継がれ、残り8kmからは総合4位のジョアン・アルメイダに牽引が代ると、ポガチャルと言葉を交わしたアダムがアタック。

 これにはアダム本人も疑心暗鬼だったようで、何度も後ろを振り返ります。本当にポガチャルは来ないのか、来たら牽引かという迷いがあったとレース後に勝っているのです。ポガチャルはアダムにたた「行って」と使えただけだったようです。
 前日に逃げに乗り、総合でも7位につけるアダムは軽快に飛ばし、逃げていたベン・ヒーリーを視界に捉えます。そしてフィニッシュまで残り4.6km地点で今度はポガチャルがアタック。ヴィンゲゴーやレムコは付いて行けず、どんどんタイムは開いて行きました。
 ポガチャルはあっという間にヒーリーを捉えたアダムに追いつき、アダムがハイペースでポガチャルの前を牽くことになります。前待ち作戦がハマったポガチャルは残り4kmで単独先頭に立ち、ヴィンゲゴー&エヴェネプールとの差を拡げていきました。そして大歓声を浴びながら登るポガチャルのスピードは最後まで落ちることなく、超級山岳プラ・ダデを制覇。ハルクポーズで雄叫びを上げ、区間2勝目を掴み取ったのです。

 レース後「アタックしたのは作戦ではなく本能に従っただけ。スプリントでのステージ勝利を狙っていたのだが、アタックしたアダムに追いつけば独走勝利できると思った」と語ったポガチャル。彼は「本能」という言葉を良く使いますが、経験や観察に裏付けられた「直感」に近いものと見ています。勝負勘が抜群に優れているのです。
 その勝負勘の良さは翌15ステージのプラトー・ド・ベイユでも遺憾なく発揮されました。前日はUAEに主導権を握られていたヴィスマは、この日は積極的にハイペースで前を牽き、ポガチャルのアシストを削る作戦に出ます。ただ、今年のポガチャルは2022年のポガチャルとは別物に進化していたのです。

 マッテオ・ヨルゲンソンが懸命にペースを上げ、残り10.5kmでヴィンゲゴーが発射するも、ポガチャルはシッティングのままヴィンゲゴーに付いて行きます。残り5.4kmで初めて後ろを振り返ったヴィンゲゴーに隙ありと感じたのか、ポガチャルがアタックしピレネーで連勝してしまうのです。
 この時のプラトー・ド・ベイユのポガチャルの登坂タイムは何と39分58秒で、1998年のマルコ・パンターニの記録を3分30秒も更新しているのです。この時のデータを振り返り、ヴィスマの監督にヴィンゲゴーは今のポガチャルには敵わないと言わしめたほどなのです。というのも、ヴィンゲゴーの登坂タイムもパンターニより2分22秒も速かったのですから。ツールを連覇している二人の登りの強さは別格なのです。

 「子どもの頃マーク・カヴェンディッシュが勝利を重ねる姿を見て、”彼は違う星から来た選手だ”と手の届かない存在だと思っていた。だが、夢は追いかければこうやって掴めるんだ」と語っていたポガチャル。今年、ツール通算35勝という大偉業を成し遂げたカヴェンディッシュですが、ポガチャルは今年もツールで6勝を挙げていますので、スプリンターではない選手がここまででツール通算16勝というのも驚きです。流石にカヴェンディッシュの35勝は無理かもしれませんが、エディ・メルクス等に並ぶ総合優勝5度というのは現実味を帯びて来ました。
 



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ツール・ド・フランス2024を振り返る(8)

2024-11-12 14:30:30 | ツール・ド・フランス
 ツールの第12ステージは総合優勝争いからログリッジが脱落する大きなアクシデントがありました。残り12kmでの大きな落車に巻き込まれたログリッジは大きなタイムを失ってしまうことになってしまいます。

 ログリッジは前日のステージでも最後の下りで落車していましたが、3kmルールの適用でタイム差は生じていませんでした。この件をきっかけにUCIは来年から3kmルールを変更し、単独落車は救済の対象外になるそうです。
 それにしてもログリッジはつくづくツールに縁がないようです。今回の落車はアスタナの選手が中央分離帯に乗り上げたのがきっかけでしたが、後々問題になりそうな大落車に巻き込まれた格好で、不運としか言いようがありませんし、2021年、2022年と連続で落車リタイヤしているのですから。しかも2020年はポガチャルに大逆転を許し、シャンゼリゼの直前で悲願のマイヨジョーヌを失っているので、ジロとブエルタを征しているログリッジにとってツールはどこまでも遠い存在になりつつあるようです。

 ステージ優勝はレース後に「マイヨヴェールを着てから力が増している」と答えていたビニヤム・ギルマイが区間3勝目を挙げました。ワウト・ファンアールトがまたまた斜行による不利を受けながら2位と奮闘を見せます。ワウトも前日、カーブを曲がり切れず歩道の縁石に乗り上げて落車していたのです。

 ここまで昨年のマイヨヴェールのフィリップセンの調子がイマイチ上がり切れていないような気がしていました。春先のミラノ~サンレモでモニュメントを征したことの反動が出ていたのかもしれないと思っていたら、13ステージで早目の仕掛けからワウトを抑えて区間2勝目を飾るのですから、驚きました。典型的な気分屋なのかもしれません。

 ツールの13日目は前日の落車の影響でログリッジがスタート前に、新型コロナ感染でUAEのアユソが途中リタイヤするという波乱がありました。ログリッジに関しては前日の様子から無理かもしれないと思っていたのですが、今年、ティレノアロレアティコでもヴィンゲゴーに次ぐ総合2位と健闘していたアユソのリタイヤはポガチャルにとっても大きな痛手になるかもと思っていたら、横風区間で先頭を牽くは、ゴールスプリントに加わる等、ポガチャルはどこ吹く風といった感じでした。
 マイヨヴェール争いはギルマイとフィリップセンの二人に絞られましたが、フィリップセンにとっては第6ステージの降格が大きく影響しそうな感じです。それにしても平坦とはいえ165.3kmを3時間23分というタイムはクレイジーです。横風区間がありクラシックレースのようなハイペースで進んだことが影響したのでしょう。翌日からピレネーに入るというのにアシスト勢の疲労が気になります。
 



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ツール・ド・フランス2024を振り返る(7)

2024-11-09 09:23:06 | ツール・ド・フランス
 ツール・ド・フランス2024の2週目は、ツールらしい平坦コースで、予想通りのスプリント勝負になりました。勝ったのは1週目が振るわなかったやスペル・フィリップセンでした。昨年のマイヨヴェールは1週目に進路妨害で降着処分を受けるなど苦しみます。6月に2028年までの契約を延長して臨んでいただけに、予想外の結果でした。今年のさいたまクリテリウムにも参戦していましたが、流石に真直ぐ走っていました。
 休養日明けで逃げも生まれず、淡々としたレースでしたが、これが私が且つて観ていたツールのレース模様なのです。途中何度も寝落ちし、結局、ゴール前だけ観てTVを消すというのが、ツールの平坦ステージの決まり事だったのです。

 この日はファンデルプールの牽引から解き放たれたフィリップセンが圧勝しましたが、降着の影響が大きく、本人もマイヨヴェールではなくステージ優勝に切り替えているようでした。
 第11ステージはヴィンゲゴーの復活に湧きました。ポガチャルがアタックし、一度は30秒以上のタイム差が生まれたものの、ヴィンゲゴーがしぶとく食らい付き、ゴールスプリントでポガチャルを下して見せたのです。今年4月に大怪我を負ったヴィンゲゴーが97日振りの復活勝利に涙を流したのです。

 4月のバスク1周の集団落車で骨折に加え肺の損傷に見舞われ、ツールの参戦すら危惧された状況からの勝利ですから、ヴィンゲゴーの喜びは格別なものだったのでしょう。それにしてもポガチャルがゴールスプリントでヴィンゲゴーに負けるというのは衝撃でした。
 昨年の悪夢が頭を過りましたが、マイヨジョーヌの表彰で表彰台に上がったポガチャルの姿を見て安堵しました。何かを食べながら表彰台に上がったポガチャル。おそらく、補給の失敗があったのでしょう。まあ、ガス欠状態でスプリント勝負に迄持ち込んだポガチャルはやはり強かった。昨年は一機に遅れ、取り返しの付かないタイム差を付けられてしまったのですから。
 ポガチャルはその反省から、補給を科学的に分析し、意識的に必要な補給を取ることを心掛けていたようですが、このステージは最後の補給を忘れたというのです。ジロ・デ・イタリアでは沿道の子供に補給のボトルを手渡す余裕があったのですが、この日はヴィンゲゴーの猛追が焦りを生んだのか、珍しくミスをしてしまったようです。

 このミスがあってもヴィンゲゴーに奪われたタイムは僅か1秒。昨年のロズ峠でヴィンゲゴーに5分45秒もタイム差を付けられたことを考えれば、ひとつのミスで1秒というのはポガチャルにとっては幸いでした。ただ、ミスをすれば確実にタイムを失うことは実感したと思います。
 ポガチャルの強さの秘密のひとつがこの修正力でしょう。昨年もロズ峠の大敗の後、第20ステージでは復活勝利をしているのです。補給に注力するようになったポガチャルは今のところ無敵のようです。ツールで総合優勝出来なかった時期も含め4年連続世界ランク1位で、今年は断トツでしたから、今後はポガチャル1強時代に突入するかもしれません。
 



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ツール・ド・フランス2024を振り返る(6)

2024-11-06 14:21:53 | ツール・ド・フランス
 ツール8日目はビニヤム・ギルマイの強さが証明されたステージとなります。第3ステージで驚きのツール初勝利を挙げていたギルマイですが、誰もがフィリップセンのマイヨヴェールはほぼ確実だと思っていたのです。
 所属のアンテルマルシェというチーム自体の強さにも懐疑的だったのですが、この日はアシストが見事な働きを見せ、ギルマイをベストポジションに運びました。登りのゴールスプリントでフィリップセンを退けたギルマイの力は本物だったのです。

 今年のさいたまクリテリウムにも参加してくれたギルマイですが、優勝と同時にヤングライダーも獲得していたのです。21日間のツールでは流石にレムコ・エヴェネプールたちには及びませんでしたが、ギルマイはレムコと同い年なのです。フィリップセンがポガチャルと同い年なので、この二人はこれからも熱いバトルを見せてくれるはずです。
 一週目の最後となる9日目は、ツールに初登場する白い道(グラベル区間)が話題になっていました。今年、ストラーデ・ビアンケ(イタリア語で白い道を意味します)で80km以上を独走勝利しているポガチャルにとってはビッグチャンスと思っていたのですが、早々に逃げが決まってしまったのです。

 ステージ優勝は逃げ集団でのスプリントを征したのはトタルエナジーのアントニー・テュルジスでした。MTBのXCで2大会連続金メダルのトム・ピドコックは惜しくも2位でした。
 タイム差があり逃げを容認したプロトンでは、ポガチャルが果敢にアタックを見せるも、ひとつひとつの未舗装路区間が短いため、舗装路で集団が追いつくという苦しい展開になってしまいました。一度はヴィンゲゴーと二人が抜け出すシーンもありましたが、グラベルを得意としないヴィンゲゴーはパンクのリスクを考えてアシストを待つ選択をしたのです。

 ヴィンゲゴーのようにツールにグラベルは相応しくないと主張する選手もいますが、個人的には登りや平坦に加え、石畳やグラベルといったステージが増えることは歓迎です。特に平坦ステージが多くなると、途中がとても退屈になってしまうからです。逃げとそれを逃がすスプリンターチームという構図が出来やすいからです。
 山岳ステージでも同じことになることもありますが、プロトンの人数が途中で減り、逃げが決まる確率が上がるので。まだ緊張感があるのです。ジロやブエルタに比べ平坦ステージの比率が高いのがツールです。ただ、主催であるA.S.Oは徐々にそうした傾向を改善しつつあるように見えるのです。今年のグラベルの導入もその一環でしょう。加えて、恒例となっていた最終日のシャンゼリゼゴールもオリンピックの関係でニースでの個人TTに変更しているのです。
 グラベルを最初に取り入れたのはジロの主催者RCSスポルトでした。長年のライバル関係ということもあり、ジロの真似と見られるのを嫌ったのか、パヴェ(石畳)のステージはあってもグラベル(未舗装路)ステージが無かったことが不思議なほどなのです。
 総合を争う選手たちは、集団でゴールしたためタイム差は付かず、ポガチャルがマイヨジョーヌを手にしたまま終わりました。レムコとは33秒、ヴィンゲゴーとログリッジには1分以上の差で2週目に突入することになりました。
 



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする