ジロ・デ・イタリア第19ステージはモルテリアーノからサッパーダまで157kmの丘陵コース。前半は晴れていたもののレース終盤は雨の中での決戦となった。距離が短いこともあり前半からアタック合戦が始まるも中々メンバーが絞られず、一度は10人が抜け出すことに成功するも、逃げにメンバーを入れ損ねたアルペシン・ドゥクーニンクやジェイコ・アルウラーが捕まえるために牽引。15秒前後のチェイシングはレース開始から32km走った街中の上り坂で追いつかれ、一度は30名ほどの集団になる。
しかし、ジュリアン・アラフィリップ(スーダル・クイックステップ)のアタックに、ジョナタン・ナルバエス(イネオス・グレナディアーズ)、ニコラ・コンチ(アルペシン・ドゥクーニンク)、アンドレア・ヴェンドラーメ(デカトロン・AG2Rラモンディアル)、ペラヨ・サンチェス(モビスター)が付いていく。すこし遅れてルーク・プラップ(ジェイコ・アルウラー)も合流。
中間スプリントポイントはアラフィリップが先頭通過、追走の4人と第2追走の9人が合流し19人の大きな先頭グループとなったが、上りに入るとアラフィリップ、ナルバエス、ゲオルグ・シュタインハウザー(EFエデュケーション・イージーポスト)、マヌエーレ・トロッツィ(VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)が先行、インテルジロはトロッツィ、2級山岳ポイントはアラフィリップが先頭通過、下って上る3級山岳ポイントはシュタインハウザーが先頭通過し山岳賞2位へと躍り出た。第17ステージで優勝を飾ったシュタインハウザーはこの日も元気だった。明日はマリア・アッズーラ(山岳賞ジャージ)を繰り下げながら着用して走ることになる。今日2度登る1級山岳モンテ・グラッパの頂上を2度とも征すれば、ポガチャルから正式に奪取することができるのだが…
ジロ2勝目を期待したシュタインハウザーだったが、下り巧者のヴェンドラーメが雨で濡れたダウンヒル区間でアタックし、下りでタイム差を広げ2級山頂を後続に1分差で先頭通過してしまう。そのままペースは緩むことはなく、後続のサンチェスもシュタインハウザーも1分ほどの差を詰めることはできずラスト31kmの独走逃げ切り勝利。2021年以来2度目の区間優勝となった、今大会イタリア人が区間優勝するのは5回目。地元が近いヴェンドラーメのモチベーションが高かったようだ。
2級山岳パッソ・ドゥロンの上りでアラフィリップ、ナルバエス、シュタインハウザー、ペラヨ・サンチェスといった今年のジロでステージ優勝しているメンバーから遅れたものの、ベテランらしい落ち着いた走りで、下りで逃げる4人に追いつき、リスクを取って下りだけで1分という差を稼ぎ出したのだ。
ヴェンドラーメは最初の逃げにも加わっていたメンバーで、途中のアラフィリップの動きにも動じず、じっとチャンスを待っていたのかもしれない。逆にシュタインハウザーやサンチェスはアラフィリップのペースに脚を削られてしまった感がある。
ステージ優勝はヴェントラーメ、2位はサンチェス、3位がシュタインハウザーという結果になった。ポガチャルを含むメイン集団は16分という大きな差を与え、明日に向けてのマイペース走行になっていた。今年のジロでメイン集団が逃げに10分以上もの差を与えたのは初めてだ。気が緩んだのか、有力選手に絞られた残り6kmほどの集団で、総合3位のゲラント・トーマスが落車するというアクシデントもあったが、集団はトーマスを待つ判断をした。過去には良く目にする光景だったが、近年では珍しいようだ。
今年のジロも今日で総合順位が決まる大切なステージとなる。1級山岳を2度登り、最後は下ってゴールという難しいコースだ。頂上ゴールならポガチャルなのだろうが、このタイム差なら下りでリスクを取るとは思えない。エディ・メルクスの記録よりWツール制覇に向けた準備にシフトしているようだ。