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UCIが一酸化炭素吸引に警鐘(3)

2024-12-14 08:50:52 | ドーピング問題
 今回、高度トレーニングが効果的に体に作用しているかを確認するために、UAEチームエミレーツやヴィズマ・リースアバイク、イスラエル・プレミアテックなど数チームがこの計測器を使用していたというのです。具体的には、高度トレーニングの前と後で計測、どれだけヘモグロビン量が有意に変動したかを確認するために使用していたのです。これはサイクルロードレース界だけでなく、他の競技でも使用されているものだそうです。

 最初に問題視されたのは、この行為自体がパフォーマンス向上に寄与しているのではないか、ということではなく、これら機材を使うことで、選手たちの血中ヘモグロビン量を把握することで、ドーピングしやすくなるのではないか、という指摘から起きたものだったのです。つまりは具体的な数値がわかれば、ドーピングをしやすいのでは、という問題提起から発生した話題だった訳です。
 今現在の段階でWADA(世界アンチドーピング機構)やMPCC(反ドーピング倫理運動)は、この一酸化炭素計測の行為自体が直接的にパフォーマンス向上につながるものではないとして、禁止を検討する予定すらないとしているのですが、UCIは「複数回の吸引が最大酸素摂取量(VO2 Max)を向上させる可能性がある」と指摘し、WADA(世界アンチドーピング機構)に見解を求めたというのです。

 これは一酸化炭素の摂取量を意図的に変えることで、パフォーマンス向上につながる方法があり、それを実行しているスポーツ(自転車ではない)があるという指摘がアメリカでなされていたことに端を発しているようです。この真偽のほどは定かではありませんが、火のないところに煙は立たずということからも、悪意ある使い方をされる可能性があるのではないかということなのでしょう。この方法では理論上は適切な量の一酸化炭素を吸引することで、最大酸素摂取量(VO2Max)を増やすことができるようなのです。ただ、現段階ではWADAは「我々が把握している限りでは、悪意を持ってそのような行為が行われている形跡も証拠もない」としているのです。

 ただ、難しいのは、この血中に一酸化炭素を計測のためとはいえ入れるという行為自体が、WADAのルールブックにある「血液の人工的操作」に該当しないのかというところでしょう。今のところ「計測システム自体が医学・薬学界で20年以上の実績のあるものであること、パフォーマンス向上のために行われているものではなく、トレーニング効果数値確認のため」という目的がはっきりしているだけに、規制対象にはなりえないということのようです。
 AFPによるとUCI(国際自転車競技連合)は12日、合法ながらもトップ選手が使用して物議を醸している一酸化炭素吸入に関し、禁止する動きを見せたとのことです。来年1月31日と2月1日に行われる次回の会議で、「選手による一酸化炭素の使用を医療上の理由で禁止することを管理委員会に提案する」としているようです。
 
 



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オペラシオン・プエルトの記憶

2024-12-13 11:25:54 | ドーピング問題
 ツール・ド・フランス期間中に話題に上がった一酸化炭素吸引とはいったい何なのか?パフォーマンス向上に本当に影響はあるのか?について少し書いてきました。「カーボンモノオクサイドリブリーザー」については現段階で選手組合も世界アンチドーピング機構も制限しないと断言しているのですが、UCIの今回の警鐘に私の中では過去の暗い記憶が蘇りました。ステロイドから始まったドーピングが血液ドーピングという時代に入り、2006年にスペイン国家警察が行ったドーピング摘発作戦のコードネームであるオペラシオン・プエルトです。

 2006年5月23日、スペイン人の医師エウフェミアノ・フエンテスを始めとする数名が国家警察に拘束さるという前代未聞のドーピングスキャンダルだったのです。フエンテスらはスポーツ選手の血液を事前に採取しておいて競技直前に選手の身体に戻す、いわゆる血液ドーピングを行っていたとされ、フエンテス医師のアパートから200個ほどのサンプルが発見された。そして、この医師と関係があったとされたロードレースの選手の名前が50以上も公表されたのです。

 この結果、ツール・ド・フランスの主催者(A.S.O)はこれらの選手の出場を拒否。ヤン・ウルリッヒやイヴァン・バッソら優勝候補が出場出来なくなるという事態となったのです。この時代のロードレース界はドーピングまみれで、後にランス・アームストロングがツール7連覇を含む全ての記録を抹消され、自転車界を永久追放される事態に発展しているのです。ランス・アームストロングの走りに魅せられてロードバイクの世界に足を踏み入れていた私には大きなショックだったのです。

 加えて、2010年には「ツール期間中のドーピング検査でコンタドールに陽性反応」とツール後に報道されます。検出された薬物はクレンブテロール(clenbuterol)でした。クレンブテロール(clenbuterol)は脂肪の少ない身体を作るために使われたり、畜産物の痩肉剤としても使われる薬物です。

 過去には中国で食肉に含まれたクレンブテロールを摂取した選手がドーピングを疑われましたが、クレンブテロールが肉に含まれていたことが立証され、ドーピングに当たらないという裁定が下っていたこともありました。

 この時に検出されたクレンブテロールの量は僅か50ピコグラム(1ピコグラムとは0.000 000 000 001グラム)と見積もられており、これは規定された禁止量の約400分の1程度の量に過ぎないのです。コンタドールはスペインで食べた食肉に含まれていたと主張するも、それが証明できず2012年にドーピングと認定され、2010年のマイヨジョーヌと2011年のマリアローザを剥奪されてしまったのです。
 UCIはコンタドールから検出されたクレンブテロールについて、規定に比べると400分の1と微量だったことを発表。ただ、例え量がわずかだとしても、薬物使用の痕跡が明らかになれば2年間の出場停止処分が科せられるとの方針を発表したのです。ならば、禁止薬物量の規定は無意味となるのではないでしょうか?本来病気の治療や健康保持のために使われる薬物が,競技能力を向上させることを目的として使用されることをドーピングとよびます。つまり、競技能力を向上させる効果のない量の薬物はドーピングに当たらないはずなのです。
 2011年の2月にスペイン自転車競技連盟は、この3度のツール・ド・フランス総合王者を出場停止にする自らの裁定をくつがえすことを決めたのですが、UCIとWADA(世界反ドーピング機関)はCAS(スポーツ仲裁裁判所)へ提訴し、2012年に違反と認定されてしまった訳です。CASが有罪の判断を下した理由は、クレンブテロール検出の原因を、含有サプリメントの摂取によるものだとしています。
 こうした過去の前例があるので、今回の一酸化炭素問題を危惧しているのです。今のところはWADAが承認しているので、大きな問題にはならないだろうとは思っていますが、UCIが現在WADAに正式な見解を求めているのが気がかりです。渦中にいるのがポガチャルやヴィンゲゴーというビッグネームなのですから。
 



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UCIが一酸化炭素吸引に警鐘(2)

2024-12-12 11:54:09 | ドーピング問題
 近年はとてもクリーンになったロードレース界に今年のツール・ド・フランスの最中、唐突に話題に上ったものがあるのです。それが一酸化炭素吸引機の使用でした。果たしてそれは何なのか、私を含め多くの人が聞いたことなかった言葉に困惑したのではないでしょうか。まずはそれがいったいどんなものなのでしょう?
 一般的に一酸化炭素と聞いて多くの人が思い起こすのが一酸化炭素中毒でしょう。ヘモグロビンは血中で酸素を運搬する役割を担っているのですが、酸素の200倍ヘモグロビンと結びつきやすいとされる一酸化炭素が体内に入ることで、酸素がヘモグロビンと結合できずに、血中酸素運搬能力が低下し、酸素不足となることで発症します。最悪の場合死を迎える恐ろしい中毒なのです。つまり一酸化炭素を体内に取り込むことは本来は”毒”なのです。

 ところが、このヘモグロビンと結びつきやすい性質を利用して、血中の的確なヘモグロビン量を計測するのに使われているのが、今回話題に上がった「カーボンモノオクサイドリブリーザー」と呼ばれる機械なのです。これは適切な量の一酸化炭素を体内に取り込み計測することで、ヘモグロビンの量を計測する機械で、医学や薬学の世界では普通に使われてきた機材なので、何も新しいものではなかったのです。
 では、今回これが各チームで何に使われていたのかと言えば、高度トレーニングでどれだけのヘモグロビン変動があるかを確認するために使われていたのです。まず高度トレーニングとは、標高の高い場所、つまり酸素が薄い場所で体に負荷をかけることで、体内でヘモグロビン量が増加させるものです。その結果ヘモグロビン量が増えると、酸素をより多く筋肉へ運搬できるようになるのです。マラソン選手らが高地トレーニングを行うのもこれらが目的で、特に持久力が問われるスポーツで行われるトレーニングなのです。ポガチャル等のGCライダー達もその例外ではありません。特に高高度に弱いとされたポガチャルが近年多く取り入れているといわれているのです。
 



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UCIが一酸化炭素吸引に警鐘

2024-12-06 13:03:31 | ドーピング問題
 UCI(国際自転車競技連合)が一酸化炭素の吸引に関する声明を発表しました。パフォーマンス向上の可能性が指摘される一酸化炭素の「複数回の吸引」の中止を要請し、現在WADA(世界ドーピング防止機構)へ正式な見解を求めているのだそうです。
 英語メディアEscape Collectiveが7月に報じた記事によると、一部の選手たちは血中ヘモグロビン濃度の測定と高地トレーニング効果の評価を目的に、一酸化炭素を吸引していることが明らかとなっていました。タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)とヨナス・ヴィンゲゴー(ヴィスマ・リースアバイク)は使用を認めています。これが今年のツール・ド・フランス開催中だったこともあり話題になっていたのです。

 UCIは男女レースの関係者を集めたセミナーを開催し、複数回の一酸化炭素吸引によるパフォーマンスへの影響について最新の知見を共有したようです。特に懸念されているのは、複数回の吸引が最大酸素摂取量(VO2 Max)を向上させる可能性があることだそうです。
 そのためUCIは、チームと選手に対して複数回の一酸化炭素吸引を行わないよう強く要請するとともに、医療環境下における単回の使用のみを容認する方針を発表。さらにこの問題の法的・倫理的側面を明確にするため、世界ドーピング防止機構(WADA)に対して正式な見解の明確化を求めたとのことです。

 報道によると現在、UAEチームエミレーツとヴィスマ・リースアバイク、そしてイスラエル・プレミアテックが一酸化炭素吸引による検査を実施しているようです。またシクロワイアードが10月に行ったインタビューにて、マイケル・ウッズ(イスラエル・プレミアテック)は使用を認めながらもパフォーマンス向上には繋がらないと強調していました。
 



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アンチ・ドーピングについて考える(3)

2013-01-19 08:13:26 | ドーピング問題

 スポーツ界でドーピングが禁止されている理由は3つあります。1)スポーツの基本理念、スポーツ精神に反する(アンフェア、反則)。2)選手の健康に有害である(副作用)。3)社会悪である(青少年への悪影響)がそれです。医学技術の進歩によって2)の副作用が少なくなくなったことがドーピングを加速させたのではと考えています。しかし、最も大きいのはスポーツ界で大量の金銭が動くようになったことにより、スポーツ選手のモラルが低下したことではないでしょうか?選手の地位や名声がお金に換算されるようになってしまったのです。
Lance2013
 個人的には規制は最低限にして、競技中にドーピングが発覚した選手はモラルに欠ける選手とみなし即永久追放にするくらいの覚悟が必要だと考えています。今のままでは規制は厳しいけれど、1度のドーピングは2年間の出場停止で許されるのであれば、発覚するまでドーピングを続ける価値はあると考える選手が出ても不思議ではありません。Lancearmstrong01

 ある意味、これは1度のドーピングはOKとも取れる措置といえるでしょう。発覚してもCASに提訴すれば、CASの判決が出るまではレースに参加することが出来、CASで敗訴してもその間のタイトルが剥奪されるだけで、実質的な出場停止期間はぐっと短くなると考えることも可能なのです。
 建前上は必要以上に規制を厳しくしてますと言いながら、1回は許しますよとUCIが言っているに等しいと私などには思えてしまうのです。このような曖昧な規則の上に胡坐をかき、「アンチ・ドーピング意識」を云々するUCIの態度には腹が立つのを通り越して、あきれてしまう他ありません。
 プロ・アマを問わず真摯に競技に取り組んでいる選手が損をしたり不利益をこうむることはあってはいけない。それは規則で定められているからそうしなければならいのではなく、人として当然のことだと思うのです。ましてプロのアスリートであればなおさらではないでしょうか?

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