シマノが現行モデルのUltegraとDura-Ace Di2(R8100とR9200)を発売したのは2021年夏のことです。前世代のグループセット(R8000、R9100)は2017年に導入されていますので、今年は新製品発表サイクルの年になります。このローテーションスケジュールに基づき、シマノは2025年にUltegraとDura-Aceの新たな製品を発表するだろうと予測しています。ミドルグレードの105に関しては機械式12速を残していますが、電動シフトや油圧ディスクブレーキをほぼ全ラインナップに採用するようになっています。
12速ギアをどのグレード迄にするのかは分かりませんが、既存の12速スプロケット、チェーンリング、チェーン等との互換性を考えると、あまり下位のグレードまで広げることは考え辛いのです。
変わる可能性があるのはバッテリーシステムでしょう。シマノは新しいグループセットで、Di2ドライブトレインを今のセミワイヤレスからフルワイヤレス化する可能性が高いはず。これは新型SRAM REDが完全ワイヤレス化しているので、時間の問題だと思っています。変速は12速のままでしょう。
さらに、シマノはSRAMの製品に匹敵する信頼性の高いパワーメーターを提供することになりそうです。変速システムの正確性に関しては一歩も二歩もSRAMをリードしてきたシマノですが、変速数や電動化では常にSRAMの先行を許して来ました。それでも、UCIプロツアーにおけるシマノのコンポーネントの信頼性は高まる一方なのです。18のワールドチーム中、シマノのコンポを使用するチームは14にもなります。SRAMが3チーム、カンパが1チームという状況なのです。以前に比べると価格が上がってしまったシマノのコンポですが、信頼性が高く製品も手に入りやすいというメリットは私たちユーザーにとってはありがたいと思っています。
ただ、MTBのコンポーネントに関してはSRAMに先行されてしまった状況が続いています。特に新型MTB用コンポーネント「イーグルトランスミッション」は画期的でした。新規格「ユニバーサルディレーラーハンガー(UDH)」に対応したフレームのエンド部分に直接リアディレーラーを取り付けることで、フレームに一体化させているのです。既にスペシャライズドやTREKはこのリアディレイラーに対応したMTBフレームを発売し始めています。ディレイラーハンガーを排除するこのシステムは業界のメーカーに対して、フレーム側に新しいダイレクトマウントインターフェイスを採用してもらう必要があったのですが、いち早くスペシャライズドやTREKが対応を見せたため、業界全体が右へ倣への姿勢を見せています。
最近では、MTB以外にもCANYONの新型GRAIL、ENVEのMOG、Santa CruzのSTIGMATAなどグラベル領域にもUDHの普及の波が広がり、ロードバイクでもRIDELY FALCONにUDHが搭載され話題になっています。シマノは新しいロード用グループセットの前に、XTR、XT、SLX等のマウンテンバイクの電動化を追加することに時間を費やすことになるかもしれないのです。