今朝は北口榛花選手の金メダルのニュースで盛り上がっているようですが、その前に スポーツクライミングの女子の競技が終わり、日本の森秋彩選手はリードで最高得点を出したものの、ボルダリングの成績が響き4位でパリオリンピックを終えました。メダルには届きませんでしたが、身長の低い日本人でもここまで出来るという可能性を十分に示してくれた価値ある4位だと思っています。
身長は日本人としても小柄な154cmで、元々ジュニアの時代からリードを得意とする選手で、ボルダーとの複合のオリンピックに参加するかどうか迷っていた時期もあるそうです。ボルダーを課題として挑んだオリンピックでしたが、身長の低さの影響が出てしまった第1課題でポイントが取れなかったのは止むを得ないことでした。その替わりパワーを要求される第3課題は見事に完登しているのです。上から覆いかぶさるような壁面を登る姿はまさにくノ一でした。
確かに男子の安楽宙斗選手のようにボルダーとリード両方に秀でた選手も魅力的ですが、森選手のようにリードなら誰にも負けないというのも素晴らしい魅力です。彼女がボルダーにもチャレンジしているのは、リードにも活かせることがあるからでしょう。今回のリードでもフック間の距離があるセッティングもあり、身体の小さな選手に有利にならないような配慮も見られているのです。
ボルダーもそうですが、小柄な選手が苦戦しそうなセッティングが多かったような気がしています。SNS上では不公平というコメントが見られるようですが、スポーツクライミングに関しては大きさが有利になるとは限らないのです。
自転車のロードレースもそうですが、単にパワーだけは勝てない競技で、パワーウェイトレシオが重要になるので、重力との戦いは小柄で軽量な選手が逆に有利なることもあるのです。従って、ボルダーで小柄な選手が不利なセッティングになるのは止む終えないのです。そもそもバスケットボールやバレーボールだって小柄な選手は明らかに不利なのですから。それを、日本人のスピードや俊敏性で補っているのが実情なのです。ハイキューの星海光来君ではありませんが「小さいことはバレーボールに不利な要因であっても不能の要因ではない」のですから。
逆に重力に抗う体操やスポーツクライミングでは小柄で軽量なことがむしろ有利に働くことになるので、オリンピックはあえてボルダーとリードの複合にしているのだと思います。東京ではボルダー・リード・スピードの3種目の複合でした。パリからはスピードが独立しているので、今後、ボルダーとリードが分かれることも考えられます。ワールドカップではそもそも種目別で行われているのですから。
東京オリンピックから「追加種目」として採用された競技ですが、2028年のロスオリンピックでは「正式種目」になることが決まっています。リードが単独種目になれば森の金メダルは確実なのですが、このオリンピックでボルダーを経験したことは必ず今後の競技人生で活きて来るはずです。最後のリードをトップで終えた後も壁の上を悔しそうに見つめていた森の表情が印象的でした。完登できなかったのが悔しかったのでしょう。小柄な身体で機敏に懸命に一手一手着実に登って行く彼女の姿には感動を覚えました。これぞ日本人という粘り強さを存分に発揮してくれました。ありがとう。
彼女も筑波大学の3年生で、スポーツだけという選手ではありません。一時は競技を休んで迄進学の準備をしていた期間もあったようです。若干12歳でリード・ジャパンカップを優勝した天才少女は、リードでは無敵ですが、今後、ボルダーとどう向き合って行くのかが楽しみです。
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