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新しい逃げの型(2)

2024-10-14 13:08:32 | プロ・ツール
 逃げが不利とされる最大の理由が空気抵抗の大きさです。一人で風を切るのと、複数人交代で風を切るのとでは選手一人が受ける空気抵抗が大きく違ってくるからです。且つてはこの差が大きくて、単独の逃げは圧倒的に不利とされていたのですが、近年のエアロ化でその差が少しずつ小さくなりつつあるようです。
 例えばパリオリンピックで2冠に輝いたレムコ・エヴェネプール。身長171cmという小柄な選手ですが、TTが断トツに速い。これまではトラック競技選手のように大柄でパワーがある選手が強いとされていたTTですが、何故、小柄なエヴェネプールがこれほど強いのかが大きなヒントになるはずです。

 個人TTは選手が一人一人走るので風の抵抗は選手がまともに受けることになります。これまではパワーがある大柄な選手が強かった分野なのですが、近年のエアロ化の進歩により、ロードレーサーにとって最も大きな抵抗を軽減させることで、小柄な選手でも大きなギアが踏めるようになったことが大きいと思っています。勿論、誰もがエヴェネプールのような走りが出来る訳ではありませんが、少なくともエアロバイクにDHポジションに近いフォームで走ることが出来れば、アマチュアでもギア2~3枚分は大きなギアが掛けられるのは事実です。

 エヴェネプールの特徴はその理想的なフォームにあります。ジュニア時代はサッカーでベルギー代表にまでなった身体能力の高さが加わり、今の強さになっているようです。ただ、まだ若くアップダウンの厳しいコースではポガチャルに完敗していますが、TTでは大きく勝ち越しているのです。
 空気抵抗が少なくなれば自ずとスピードは上がりますし、追走するプロトンとの速度差は大きく開かないので、一発のアタックで開いたタイム差がなかなか詰められないことが多くなっています。ステージレースでチームが一丸となって隊列を組めば確実に縮まるタイムも、ワンデーレースのアタック合戦ではチームメイトがバラバラになってしまい、追走のためのチームメイトが不足することも影響しているようです。

 つまり、アタック合戦の直後、チームがバラバラになった時が残り距離に関わらずアタックのタイミングで、このアタックが決まれば独走も可能になるという理屈です。おそらくポガチャルは本能的にこのタイミングを見つけるのに長けているのでしょう。先日のイル・ロンバルディアでは最後のアシストのシバコフが仕事を終える前にアタックを決め、48.5kmの独走勝利を飾っています。また、自分が一度築いたタイム差は縮まり辛いことも知っていると思われます。

 先日のグラン・ピエモンテで52.5kmから逃げたニールソン・パウレスのアタックのタイミングもまさにそれでした。ポガチャルのように1分を越えるタイム差を付けることは出来ず、苦しい展開でしたが14秒という微妙な差をキープし続けました。10名以上の追走集団が何故追いつけなかったのか不思議に思う人も多いと思いますが、そこは一人の強みでしょう。考えが複数あり、思惑も人それぞれの集団は力が発揮出来ないのです。
 集団での意思統一に長けた日本人には理解が難しいのかもしれませんが、欧米人は基本的な考え方が個なので、チームが異なると纏まって前を追うという意思統一が難しいのです。これがチームメイト同士なら勝利を目指すという目的がはっきりしているので、14秒という差は無いに等しいのですが、チームがバラバラだとわずか10数秒という差さえ埋められないのです。
 さらに、このレースでは追走集団にチームメイトのシュタインハウザーがいてくれたのも大きかったと思います。追走集団から誰かがアタックしてもシュタインハウザーがマークに入るはずだと誰もが考えていたはずだからです。これはチーム戦術になりますが、追走集団にチームメイトがいるのが理想でしょう。
 




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