祖父が他界した。
三歳の時父親を亡くして以来祖父母の隣の家に住み、大学進学で上京するまで一緒に生活してきた。
祖父は頑固で厳しい人だった。しかし冗談もよく言った。
「これはアメリカンジョークだ」なんて 言っていたこともある。
うーん、それはよくわからなかった。
葬儀に参列してくださった方々が、
酒の飲み方に厳しい人だったと口を揃えて言っていた。そして、豪快に飲む人だった とも。
そんな祖父は家族の中で私と一番気が合った。たぶん。
食後にボレロをBGMに踊ったり、一緒にラジオ体操に行ったりした。
私のラジオ体操のキレが甘いと、帰り道「あの動きは何か」と叱られた。
ラジオ体操のお供は、もう一人いた。
「もこ」だ。
もこは うちで飼っていた犬。
とにかくモコモコしていた。それで 名前はもこ。
もこは迷い犬で、仔犬だった時、ふらりとうちにやってきた。私が生まれる何年も前のこと。
若き日の父と叔母が餌を与えてしまい、うちに居着いてしまったのだそう。
「動物は命が短いから飼うのは嫌」という祖母の反対で、いったんはもこを遠くに連れていった。
しかしもこは戻ってきた。後ろ足を怪我し、血を流しながら。
動物病院に連れていき、もこは一本、足を無くした。
三本足になったもこは 梅野家に加わった。
もこは とてもおとなしく、幼い私が乗ろうとしても、黙って振り落とすだけだった。
お客さんや郵便屋さんにも吠えることはなかった。
そんなもこは、祖父との散歩が異常に好きだった。
一日二回、祖父が同じ時刻に外に出ると、取り乱したように嬉しがって跳びはねた。
どうやら人が好きらしく、散歩中にいろんな人と会うのを楽しんでいた。
祖父がちょうど、小学校の登下校時間に散歩していたので、「三本足のもこ」と「もこじいちゃん」は小学生によく知られていた。
もこは、うちにやってきて18年生きた。犬にしてはかなりの長生きだ。
もこが死んだという噂は、またたく間に近所に広まった。
ある日、隣組の大木さんの奥さんが、
「この度は大変でしたね」
と 訪ねて来た。
「ええ、まぁ、大往生ですよ」
「ほんとにねぇ…おいくつだったのですか?」
「うちに来て18年…」
「…?」
大木さんの奥さんはその時、祖父が死んだのだと思っていたのだ。
その一部始終を垣間見ながら、もこの知名度に感心したものだった。
祖父の棺に、もこの写真を入れた。
散歩の時 いつもかぶっていた帽子と、靴とズボンも入れた。
亡くなる前の日の昼間、祖父はいつものように近所を散歩していた。
その日はたまたま、仲良くしている何人かのご近所さんと遭い、話をしたのだそう。
帰ってきていつものように晩御飯を食べ、風呂に入り、後は寝るだけ、という時に倒れ、
25時間後、本当に「ふっ」と、心臓が止まった。
今も、祖父はちょっと散歩に出掛けているだけなのではないかと思う。
祖父は、もこに会えたかな。
また、名コンビで、散歩してね。
2/2のライブ、急に中止することになってしまい、申し訳なく思っています。
連絡が行かず、お店まで足を運んでくださった方、本当にごめんなさい!
今日出演予定だったMebiusでのライブもお休みさせていただきます。
また、気持ちを新たに頑張ります。
三歳の時父親を亡くして以来祖父母の隣の家に住み、大学進学で上京するまで一緒に生活してきた。
祖父は頑固で厳しい人だった。しかし冗談もよく言った。
「これはアメリカンジョークだ」なんて 言っていたこともある。
うーん、それはよくわからなかった。
葬儀に参列してくださった方々が、
酒の飲み方に厳しい人だったと口を揃えて言っていた。そして、豪快に飲む人だった とも。
そんな祖父は家族の中で私と一番気が合った。たぶん。
食後にボレロをBGMに踊ったり、一緒にラジオ体操に行ったりした。
私のラジオ体操のキレが甘いと、帰り道「あの動きは何か」と叱られた。
ラジオ体操のお供は、もう一人いた。
「もこ」だ。
もこは うちで飼っていた犬。
とにかくモコモコしていた。それで 名前はもこ。
もこは迷い犬で、仔犬だった時、ふらりとうちにやってきた。私が生まれる何年も前のこと。
若き日の父と叔母が餌を与えてしまい、うちに居着いてしまったのだそう。
「動物は命が短いから飼うのは嫌」という祖母の反対で、いったんはもこを遠くに連れていった。
しかしもこは戻ってきた。後ろ足を怪我し、血を流しながら。
動物病院に連れていき、もこは一本、足を無くした。
三本足になったもこは 梅野家に加わった。
もこは とてもおとなしく、幼い私が乗ろうとしても、黙って振り落とすだけだった。
お客さんや郵便屋さんにも吠えることはなかった。
そんなもこは、祖父との散歩が異常に好きだった。
一日二回、祖父が同じ時刻に外に出ると、取り乱したように嬉しがって跳びはねた。
どうやら人が好きらしく、散歩中にいろんな人と会うのを楽しんでいた。
祖父がちょうど、小学校の登下校時間に散歩していたので、「三本足のもこ」と「もこじいちゃん」は小学生によく知られていた。
もこは、うちにやってきて18年生きた。犬にしてはかなりの長生きだ。
もこが死んだという噂は、またたく間に近所に広まった。
ある日、隣組の大木さんの奥さんが、
「この度は大変でしたね」
と 訪ねて来た。
「ええ、まぁ、大往生ですよ」
「ほんとにねぇ…おいくつだったのですか?」
「うちに来て18年…」
「…?」
大木さんの奥さんはその時、祖父が死んだのだと思っていたのだ。
その一部始終を垣間見ながら、もこの知名度に感心したものだった。
祖父の棺に、もこの写真を入れた。
散歩の時 いつもかぶっていた帽子と、靴とズボンも入れた。
亡くなる前の日の昼間、祖父はいつものように近所を散歩していた。
その日はたまたま、仲良くしている何人かのご近所さんと遭い、話をしたのだそう。
帰ってきていつものように晩御飯を食べ、風呂に入り、後は寝るだけ、という時に倒れ、
25時間後、本当に「ふっ」と、心臓が止まった。
今も、祖父はちょっと散歩に出掛けているだけなのではないかと思う。
祖父は、もこに会えたかな。
また、名コンビで、散歩してね。
2/2のライブ、急に中止することになってしまい、申し訳なく思っています。
連絡が行かず、お店まで足を運んでくださった方、本当にごめんなさい!
今日出演予定だったMebiusでのライブもお休みさせていただきます。
また、気持ちを新たに頑張ります。