バフェット氏の見事なApple株売り(NY特急便)
2024年8月7日 6:29 日本経済新聞(ニューヨーク=竹内弘文)[会員限定記事]
著名投資家ウォーレン・バフェット氏=ロイター
6日のダウ工業株30種平均は前日比294ドル(0.8%)高の3万8997ドルで引けた。前日に1033ドル安と約2年ぶりの下げ幅を記録した直後にしては物足りない反発となり、市場にくすぶる不安感の根強さを伺わせた。市場が動揺に陥る前に見事に利益確定していたのが著名投資家ウォーレン・バフェット氏だ。
同氏率いる投資会社バークシャー・ハザウェイが3日発表した2024年4〜6月期四半期報告書によると、アップル株の保有株式数を約半減させたことが明らかになった。アップル株売却は3四半期連続。バークシャーの主要保有銘柄筆頭であることに変わりないものの、株式投資ポートフォリオに占めるアップル株の比率は3月末時点の4割から6月末には3割に急低下した。
5月の株主総会でバフェット氏は1〜3月期のアップル株売りについて、売却益にかかる法人税率が今後上昇していくという見立てが背景にあると説明した。11月大統領選で民主党候補のハリス副大統領は法人税の引き上げを公約に掲げるとみられている。
米投資情報誌バロンズによるとバークシャーのアップル株取得原価は1株約34ドル。6月末株価は210ドルで評価益は膨らんでいた。「今後もう少し高い税率で売却するのなら、今年アップル株を多少売ったという事実を皆さんが気にすることはない」とバフェット氏は総会で語った。
税金の要因抜きにしてもバリュー(割安株)投資家であるバフェット氏のアップル株は必然だったと見る向きもある。米運用会社センパー・オーガスタス・インベストメンツ・グループのクリストファー・ブルームストラン社長はその1人。「バークシャーのアップル株投資は大幅に削減されると確信している」。発表前の7月31日にX(旧ツイッター)に書き込んだ。
予想PER(株価収益率)でみた割高さ、鈍い増収率や限定的な利益率の拡大余地などを理由に挙げた。バリュー性がなくなれば売るのは当然という指摘だ。8月3日の開示を受けてブルームストラン氏はXを更新し「7〜9月期にさらに保有株数を半減しても不思議でない」と予想した。
バークシャーのアップル株売りの妙技は、時宜を得た利益確定というだけでない。得たキャッシュをすぐさま再投資に充てずに確保しておいた点も見逃せない。現金などに米短期債の保有額を合わせた広義の手元資金は6月末に2769億ドル(約40兆円)となった。すでに過去最高水準にあった3月末と比べて5割近くも積み増した。
バフェット氏は2月に公開した株主への手紙で「私が若い頃とは比べものにならないほど市場はカジノ的な振る舞いを見せる」とつづり、楽観と悲観で極端に振れる市場に警鐘を鳴らしていた。一方で「バークシャーは巨額な資金と確実な投資で市場動揺に即座に対応する能力を持っており、時折大規模な機会が得られるかもしれない」とも書いていた。
折しも7月半ばからテクノロジー銘柄の相場が崩れ、足元では米景気の先行き不安が首をもたげている。要塞のようなキャッシュの山を抱えるバフェット氏は新たな大型投資の好機とみているのではないか。
https://youtu.be/At-8uau8T_8?si=nyZhg-zLrHT0mbNF
バフェットの売りと円キャリーの崩壊 石原順チャンネル
https://www.youtube.com/live/VH0Uh26wi48?si=XoRFx527c3tkGfg-
円キャリー取引の巻き戻しで巨額の損失を抱えたヘッジファンドが、日経平均先物売りでパニック売りを誘い、損失埋め合わせに動いたという。高速取引が副次的要因ではなく、リスクヘッジの先物取引を儲けの対象する金融情報資本主義の歪みが本質だ。
日刊ゲンダイの連載で「追い込まれた末の日銀「利上げ」に効果は見込めない」を書いた。金融情報資本主義に翻弄され、株価が乱高下し円安バブルが崩れた。だが、アベノミクスの負の遺産は重く、政府日銀にのしかかっており、日本経済の基本的脆弱さに変わりはないのだ。
日銀が先月末の金融政策決定会合で、政策金利の0.25%の引き上げと、国債買い入れ額を縮小する方針を示した。いよいよ金融が正常化するかのような報道が繰り返されているが、ちょっと待て。今回の決定は、アベノミクスをズルズル続けてどうしようもなくなり、追い込まれた結果ではないか。
CTA(Commodity Trading Advisor)
直訳すると商品投資顧問業者にあたるが、一般的にはヘッジファンドなど、商品先物のみではなく、通貨、株価指数先物など広範な金融商品に分散投資して、顧客から預かった金融資産を運用する企業や運用者を指す。
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