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数学的実在とは-幾何学-1-

2010-01-09 06:45:00 | 数学基礎論/論理学
 現代的見知では数学とは公理系を設定し、そこから様々な命題を証明するものです。そして公理系が正しいかどうかは問いません。しかし公理系を"解釈"した"モデル"があるかどうかは問われます。考慮に値する"モデル"があることが、その公理系が研究に値するかどうかの判断基準だとも言えるでしょう。数学基礎論における"モデル"という言葉は、公理系が適用される具体的例を指します。物理学など、数学以外の自然科学や社会科学ではモデルと言えば具体的現象を抽象化したものを指しますから、数学基礎論での"モデル"は方向性が逆ということになり、読むときは注意が必要です。
 そして良い公理系の条件のひとつは、調べたい"モデル"における様々な命題を全て導いてくれることです。この性質は「完全性」と呼ばれます。【「完全性」には他の意味もあるので注意】。例えばユークリッド幾何学を例にとれば、その様々な定理を全て導いてくれる必要最少限の公理から成るものが良い公理系です。「ある公理系を仮定したら、正しいと考えられていた定理が証明できた。ゆえにこの公理系は正しい。」というわけです。

 ここで、公理系を仮説に定理を観測事実に置き換えれば、これはまさに仮説演繹法に他なりません。仮説を立ててみて、そこから演繹された命題が観測事実と一致すれば、立てた仮説が正しいと結論するわけです。

 すなわち公理系とは、既に知られている様々な命題の集合から仮説演繹法により構成されるものであり、なんらかの真理としての公理系が最初に存在するわけではありません。既に知られている様々な命題の集合がどんなものかは、考察する対象によります。それがユークリッド空間であればユークリッド幾何学の命題群であり、負の曲率の空間を対象とするなら、非ユークリッド幾何学の命題群です。
 では"モデル"における命題群の正しさの根拠は何かといえば、それは観察以外にはないでしょう【断定注意(-_^)】。中には観察自体が難しくて論証する方が納得しやすい定理も多くありますが、三角形の合同条件や相似条件とか、結合の公理などの初歩的な命題の正しさは観察により確証されるものです。ユークリッドのいう「誰もが正しいと認めうる命題」というのは、「誰もがそれが正しいという観察を繰り返しているはずの命題」ということになるでしょう。

 これは実は、NATROMさんの掲示板での8 :temaさんの論旨と同じですね。
数学は科学か?

   続く

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