知識は永遠の輝き

学問全般について語ります

数学的実在とは-幾何学-8-原論と基礎論(6)

2010-02-06 06:45:15 | 数学基礎論/論理学
 前回の続きです。

 線分が定義されていれば、線分をつないだ図形として多角形が定義できます。そして多角形の合同を定義するには、線分の合同の他にまず角および角の合同が定義されなくてはなりません。

角の定義;1点から出て相異なる2つの半直線の組。2つの半直線の順序は問わない。2つの半直線をh,kとして、∠(h,k)または∠(k,h)と表す。

 これも線分の定義と似た表現で、内部の領域を含ませていません。多くの人は多角形の角(かど)を切り取ったようなものをイメージすると思うのですがどうでしょうか。まあ内部が空白の角というものもイメージはできますからそこはいいのですが、問題は「2つの半直線のひと組」には和が360度となる2つの角度が伴うことです。角度が180度より小さい方を劣角といい、大きい方を優角といいますが、『幾何学基礎論』の定義では優角とか劣角というものは定義されませんし、角度が180度である平角も角には含まれません。なお、角度による角の名称にはあまり使われない言葉もありますがウィキペデイア「角度」を参照して下さい。

 『幾何学基礎論』では角度はまだ定義しませんが、角の内部と外部を定義し、それを使って角の大小関係を定義しています。が、そのためには「平面が直線により2領域に分割される」という命題が必要で、それは順序の公理から誘導される定理です(定理8)。

合同の公理4.平面a上に∠(h,k)があり平面a'上にhとは異なる半直線h'があるとき、h'を含む直線の与えられた側に、∠(h,k)≡∠(h',k')となるような半直線k'がただ一つ存在する。

 ここで a = a' でも良いし、 h' = k でも良いことはおわかりでしょう。また合同という語を記号で示してしまいましたが、この「角の合同関係」も「線分の合同関係」と同様に、この公理で登場する無定義用語です。

合同の公理5.2つの三角形ABCとA'B'C'において、
  (AB≡A'B')∧(AC≡A'C')∧(∠A≡∠A') ⇒ ∠B≡∠B'

 これは事実上の二辺挟角命題で、ユークリッドの『原論』では定理とされていた命題です。

 なお角の定義には半直線が使われますが、半直線の定義は「(直線a上の)点Oの同一側にある直線aの点全体を点Oから出る半直線という」というものです。うーむ、ここに至って点集合として半直線を定義していることには若干の不統一性を感じてしまいます。

   続く

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 数学的実在とは-幾何学-7-... | トップ | 数学的実在とは-幾何学-9-... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

数学基礎論/論理学」カテゴリの最新記事