以下、参考文献は前回記事のものを参照して下さい。
私が読んだ限りでは福井県立大学・岡敏弘教授の記事「放射性ヨウ素の暫定基準値の決め方について(2011.4.8)」での計算がRef-3,4での計算を最も良く再現していたと書きましたが、それは測定した放射性物質に伴っていると想定される他の種類の放射性物質もきちんと考慮したからなのです。これはRef-3に述べられています。
飲食物等の放射性物質の分析には核種ごとに異なる前処理と放射線測定が必要で、それを全ての核種で行うのは手間が掛かりすぎますから、核種をグループ分けして各グループで指標核種または代表核種というものを選んでこれを測定し、他の核種は指標核種に対して一定比率で存在すると想定して濃度を求めています。例えばヨウ素群(Te-132,I-131,I-132,I-133,I-134,I-135)ではI-131を指標核種としてその濃度を測定し、他の核種についてもI-131に対して一定比率で存在すると想定して濃度を計算し、各核種による年間内部被曝量を合計したものをヨウ素群による年間内部被曝量とします。そしてこのヨウ素群による年間内部被曝量と年間基準値とを比較するわけです。ここでの一定比率はRef-3では「代表核種にまたは核種群に対する初期存在比率」とされている係数です。
ところで、この初期存在比率はRef3のp22(24/42)"付録1"に有効数字2桁の数表として書かれていますが、岡敏弘教授の挙げているのは4桁の数値です。これは"付録1"の数表から割算で求めたわけです。4桁にしたといっても計算途中ですから構いません。最終結果が2桁であることを意識していれば良いのですから。もっとも被曝量推定の数値の誤差範囲が単純に有効数字で語れるレベルだとは思えませんが。ちょっと蛇足でした(^_^)。
諸係数のうちで上記の指標核種に対する初期存在比率はRef-1のみに明確な記載がありますが、他の諸係数には次のものがあります。
市場希釈係数(Ref-4,p29(30/40))または市場希釈補正(Ref-7,p41(42/47)) ; 評価対象者の当該食品摂取量に対する、汚染された食品の摂取割合。不明な場合は1とする。
調理加工による除染係数(Ref-4,p29(30/40))または調理等による減少補正(Ref-7,p41(42/47)) ;調理加工により除去される効果を示す。全く除去されない場合が1、完全に除去される場合が0。不明な場合は1とする。
年平均濃度とピーク濃度(最高濃度)との比(Ref-3,p29(32/42))*1 ;被曝線量算定のためには「原則として測定値のうちの最大値を用いる」(Ref-4,p28(29/40))のだが、汚染の地域的ばらつきや他の食品も摂取する効果などのため年平均濃度は最高濃度より少ないと考えられる。セシウム群について、欧州共同体では1/10を採用していたが、Ref-3では1/2を採用している。ヨウ素群では1を採用。
最後の係数はRef-3でしか使われていませんが、Ref-4,7の市場希釈と重なる概念だと思われます。前回記事で「1つのロットを1年間も摂取し続けるというのも現実から離れている」のではないかと書きましたが、その効果もひっくるめて年平均濃度とピーク濃度(最高濃度)との比に繰り込んでいることになるようです。
さて、私は諸係数や減衰項よりも、ヨウ素の場合に甲状腺等価線量で被曝を考えるというのがわかりにくいかも知れないと考えます。その話は次回に。
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*1) 実はこの資料、p29とp30の順が逆!
私が読んだ限りでは福井県立大学・岡敏弘教授の記事「放射性ヨウ素の暫定基準値の決め方について(2011.4.8)」での計算がRef-3,4での計算を最も良く再現していたと書きましたが、それは測定した放射性物質に伴っていると想定される他の種類の放射性物質もきちんと考慮したからなのです。これはRef-3に述べられています。
飲食物等の放射性物質の分析には核種ごとに異なる前処理と放射線測定が必要で、それを全ての核種で行うのは手間が掛かりすぎますから、核種をグループ分けして各グループで指標核種または代表核種というものを選んでこれを測定し、他の核種は指標核種に対して一定比率で存在すると想定して濃度を求めています。例えばヨウ素群(Te-132,I-131,I-132,I-133,I-134,I-135)ではI-131を指標核種としてその濃度を測定し、他の核種についてもI-131に対して一定比率で存在すると想定して濃度を計算し、各核種による年間内部被曝量を合計したものをヨウ素群による年間内部被曝量とします。そしてこのヨウ素群による年間内部被曝量と年間基準値とを比較するわけです。ここでの一定比率はRef-3では「代表核種にまたは核種群に対する初期存在比率」とされている係数です。
ところで、この初期存在比率はRef3のp22(24/42)"付録1"に有効数字2桁の数表として書かれていますが、岡敏弘教授の挙げているのは4桁の数値です。これは"付録1"の数表から割算で求めたわけです。4桁にしたといっても計算途中ですから構いません。最終結果が2桁であることを意識していれば良いのですから。もっとも被曝量推定の数値の誤差範囲が単純に有効数字で語れるレベルだとは思えませんが。ちょっと蛇足でした(^_^)。
諸係数のうちで上記の指標核種に対する初期存在比率はRef-1のみに明確な記載がありますが、他の諸係数には次のものがあります。
市場希釈係数(Ref-4,p29(30/40))または市場希釈補正(Ref-7,p41(42/47)) ; 評価対象者の当該食品摂取量に対する、汚染された食品の摂取割合。不明な場合は1とする。
調理加工による除染係数(Ref-4,p29(30/40))または調理等による減少補正(Ref-7,p41(42/47)) ;調理加工により除去される効果を示す。全く除去されない場合が1、完全に除去される場合が0。不明な場合は1とする。
年平均濃度とピーク濃度(最高濃度)との比(Ref-3,p29(32/42))*1 ;被曝線量算定のためには「原則として測定値のうちの最大値を用いる」(Ref-4,p28(29/40))のだが、汚染の地域的ばらつきや他の食品も摂取する効果などのため年平均濃度は最高濃度より少ないと考えられる。セシウム群について、欧州共同体では1/10を採用していたが、Ref-3では1/2を採用している。ヨウ素群では1を採用。
最後の係数はRef-3でしか使われていませんが、Ref-4,7の市場希釈と重なる概念だと思われます。前回記事で「1つのロットを1年間も摂取し続けるというのも現実から離れている」のではないかと書きましたが、その効果もひっくるめて年平均濃度とピーク濃度(最高濃度)との比に繰り込んでいることになるようです。
さて、私は諸係数や減衰項よりも、ヨウ素の場合に甲状腺等価線量で被曝を考えるというのがわかりにくいかも知れないと考えます。その話は次回に。
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*1) 実はこの資料、p29とp30の順が逆!
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