私の手元に次の2つのテキストがありますが、前回述べた質量概念の扱いが両者で違っていて、学問の進歩を感じました。Ref-2は翻訳初版が1959年ですが、原著序の日付は1951年11月です。
Ref-1) 岡村浩『相対論(放送大学教材)』放送大学教育振興会;新訂版(2004/03)
Ref-2) C・メラー(Christian Moller)『相対性理論』みすず書房(1959/06)
http://www.msz.co.jp/book/detail/02508.html
相対論的運動量の公式(前回記事の式1)を誘導するためにRef-2(26節,p63)では、2個の質点の衝突においてどの慣性系から見ても運動量保存則が成り立つという要請からの誘導を行っています。そして速度ゼロではニュートン力学での定義と一致するとの要請から
p=mv
とおき、ただしmは速度の絶対値v=|v|の関数m(v)と考えます。そして「この比例係数mをこの質点の質量と呼ぶ」としています。つまり質量という用語を相対論的質量を指す言葉としているのです。
Ref-1では6章(p120~)で相対論的力学を扱っていますが、質量mは速度でも変化しないという立場が貫かれています。ただし「質量は速度により変化する」という今では間違った見方に染まっていると、その点を誤読したり見過ごしたりする恐れがあります。Ref-1での相対論的運動量の公式の誘導はおおむね次のようになります。
運動量pとして速度vの絶対値vが小さな極限ではニュートン力学での定義と一致する量を取りたい。
p=mv=m(dx/dt)
運動量pの絡む力学法則がローレンツ変換で不変となるためには、pが位置ベクトルxと同様な変換をすれば良い。それにはローレンツ変換で変化してしまうtではなくローレンツ変換で不変なスカラー量である固有時間τで微分することにすればよい。
p=mv=m(dx/dτ)
ということで、後はτとtとの関係を使えば容易にtの関数としてのpが導けます。Ref-1Ref-2での誘導法は衝突条件の設定などかなり技巧的で式の変形過程も複雑ですが、Ref-2Ref-1では統一的原理からの誘導でずいぶん簡明になっています。
Ref-2は定評ある名著のひとつなのですが、質量概念に関しては現在では誤りとされる見方をしていますので、この点には注意が必要でしょう。
Ref-1) 岡村浩『相対論(放送大学教材)』放送大学教育振興会;新訂版(2004/03)
Ref-2) C・メラー(Christian Moller)『相対性理論』みすず書房(1959/06)
http://www.msz.co.jp/book/detail/02508.html
相対論的運動量の公式(前回記事の式1)を誘導するためにRef-2(26節,p63)では、2個の質点の衝突においてどの慣性系から見ても運動量保存則が成り立つという要請からの誘導を行っています。そして速度ゼロではニュートン力学での定義と一致するとの要請から
p=mv
とおき、ただしmは速度の絶対値v=|v|の関数m(v)と考えます。そして「この比例係数mをこの質点の質量と呼ぶ」としています。つまり質量という用語を相対論的質量を指す言葉としているのです。
Ref-1では6章(p120~)で相対論的力学を扱っていますが、質量mは速度でも変化しないという立場が貫かれています。ただし「質量は速度により変化する」という今では間違った見方に染まっていると、その点を誤読したり見過ごしたりする恐れがあります。Ref-1での相対論的運動量の公式の誘導はおおむね次のようになります。
運動量pとして速度vの絶対値vが小さな極限ではニュートン力学での定義と一致する量を取りたい。
p=mv=m(dx/dt)
運動量pの絡む力学法則がローレンツ変換で不変となるためには、pが位置ベクトルxと同様な変換をすれば良い。それにはローレンツ変換で変化してしまうtではなくローレンツ変換で不変なスカラー量である固有時間τで微分することにすればよい。
p=mv=m(dx/dτ)
ということで、後はτとtとの関係を使えば容易にtの関数としてのpが導けます。
Ref-2は定評ある名著のひとつなのですが、質量概念に関しては現在では誤りとされる見方をしていますので、この点には注意が必要でしょう。
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