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歴史的口論:ジャイアン化したアメリカ

2025-03-03 05:42:29 | その他、雑記
 「歴史的な口論だ」と言ったのは大喜びしてそうなロシア直接投資基金のドミトリエフ総裁だとのことですが[Ref-1]、確かにその通りで、あるいは歴史の転換点の象徴となるに十分かも知れません。

 NHK報道を見た限りではバンス副大統領が口火を切ったように見えますが、それ以前の会話がわからないと経緯がわかりません。ということで、40分間の一応の流れはNHKが文章で公開しています[Ref-2]。前虫後の3編に分かれていて、報道された部分は後編の一部です。
 ただこれは全発言を拾っているとは限りませんし、翻訳の程度も不明ですし、口調その他の雰囲気もわかりません。しかし、ちらちらと双方の見解の相違が伺える部分は前編や中編にも出てきます。また取材陣の記者からの質問も混じっていますが、同じ「記者」と書かれていても異なる報道機関の異なる人達を指していますから、なにやら価値観というか方向性が異なる質問がいろいろあります。トランプ氏をよいしょしてそうな質問とか逆に怒らせたらしい質問とか。

 口論の様子は動画サイトでも多く出回っていますが、テレビ報道がソースのものが多く、今のところ40分すべての動画は見つけていません。が、口論直前からのノーカットと推定できるものは[*1]mochantv英会話のもので[Ref-3a]、記者がトランプ氏にポーランドに関する質問をしたところから始まっています。

 記者の質問は「~今ポーランドの友人たちと話すと、あなたがプーチン氏に肩入れしすぎていると心配している。友人たちにメッセージを」というもの。
 トランプ氏が「交渉なんだから相手(プーチン氏)に厳しいこと言うだけじゃだめでしょ」との趣旨で答え、そこでハンズ氏が「前大統領バイデンが厳しいことしか言わなかったからプーチンが侵攻始めた。アメリカがいい国になるには外交に取り組むことだ。」との趣旨を補足しました。
 そこで他の報道でもかなり伝えられているゼレンスキー氏の「どんな外交なんだ?」という質問が入ります。ここでのゼレンスキー氏の言い分は、以下に集約されると思います。
  ・2014年のクリミア占領以降、オバマ、トランプ、バイデンと続いた間に、誰もプーチンを止められなかった。
  ・2019年に停戦合意をしたのにプーチンは守らなかった。
  ・約束を守らない者に守らせるためには合意だけの外交より強いものが必要なんじゃない?

 要するに、度々報道されているようにウクライナとしては「安全保障」がほしいのです。ところがトランプ政権は「ともかく停戦だ。合意すればそれが安全保障だ」という考え。もしくは全文サイト中編[Ref-2b]でのように「安全保障はとても簡単だ。問題の2%程度だ。」ということでウクライナの危機感やプーチン政権への警戒感を全く共有していません。
 ゼレンスキー氏がさらに「ウクライナで止めなければ将来はアメリカも攻め込まれるよ」と訴え、これはたぶん両氏には「根拠のない脅迫」に聞こえた可能性があるでしょう。それとも「アメリカは強いからそんなもの心配いらない」と思ってるから、「もう既に負けそうな弱小国が我儘ぬかすな」という趣旨の発言につながったのかも知れません。

 それと「オバマ、トランプ、バイデンと続いた間に、誰も」という所に気分を害したらしく、「(実際に攻め込んだ時には)私はホワイトハウスに居なかったから責任ないよね」と言いたそうな反応をしています。

 で、トランプ氏は「俺はディール(取引・交渉)が得意だ」との自負を度々口にしていて「あなた(ゼレンスキー)は危険なゲームをしている」発言での「ゲーム」という言葉も、遊びや楽しみの意味は入ってなくて、「俺ならもっとうまく賢くゲームができる」という意味も込められていそうです。もちろん戦争にはゲームの要素があり、私も歴史上やフィクション上の戦争を理解するためにゲームとして考察することは多々あります。
 しかし現実に同胞が次々と死んでゆく戦争を戦っている者から見れば、「ゲーム」に例えられるのはカチンと来たでしょう。それがゼレンスキー氏の「我々は真剣だ」発言ですね。トランプ氏も相手を見て発言することをしないと怒らせちゃいますよね。

 というかバンス氏と二人三脚でわざと挑発してた、もしくはバンス氏が自分の判断で挑発したようにも見えますが、トランプ政権としてもここで署名に至るのが理想だったはずで、それをぶち壊すために挑発したというのも不自然に思えます。やっぱり地で礼節もしくは冷静さを欠いてただけなんでしょうね。それとも力を背景にすれば弱小国はいう事を聞くしかないと楽観し過ぎていたとか。まあそれは確かに事実であって、それでもゼレンスキー氏はアメリカもトランプ氏も悪しざまにいう事はできないわけですけれど。
 これが西欧の強国となればアメリカに対しても物言えるのですが、2/25の安全保障理事会ではフランスもイギリスも拒否権行使まではしませんでしたねえ[Ref-4]

ひとまず、今日はこれまで。

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*1) 「推定」と若干慎重すぎる表現にしたのは、[Ref-3c]であまりにも見事な中抜きカットを見せられたから(^_^)。mochantv英会話さんの編集を疑っているわけではない。普通はそんな面倒なことはしないと思うし。

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Ref-1) "トランプ氏 ゼレンスキー氏の会談 ロシアやEUなどの受け止めは",NHK (2025/03/01 16:01)より。ロシアとアメリカの交渉で注目されている「ロシア直接投資基金(Russia-Japan Investment Fund)」のドミトリエフ総裁は「歴史的な口論だ」とSNSに投稿しました。
Ref-2) 【やり取り全文】トランプ氏 ゼレンスキー氏 なぜ口論に
 2a) 【やり取り全文・前編】トランプ氏 ゼレンスキー氏 なぜ口論に(2025/03/02 3:46)
 2b) 【やり取り全文・中編】トランプ氏 ゼレンスキー氏 なぜ口論に(2025/03/02 3:47)
 2c) 【やり取り全文・後編】トランプ氏 ゼレンスキー氏 なぜ口論に(2025/03/02 3:48)
Ref-3)
 3a) mochantv英会話(03/01 23時頃)"【英語字幕/日本語訳付き】トランプ大統領とゼレンスキー大統領が激しい応酬を繰り返す!"。口論直前から決裂までのノーカット。
 3b) [TBS NEWS DIG Powered by JNN](03/01 20時頃)"【日本語字幕】トランプ×ゼレンスキー 異例の“口論”会談「『停戦は望んでいない』と言うのか」"。バンス氏の前大統領バイデン氏の政策批判からの部分。
 3c) [BBC News Japan](03/01 15時頃)"トランプ氏とヴァンス氏「感謝」要求、ゼレンスキー氏と激しい口論"。ゼレンスキーの「どんな外交について?」に続く説明部が中抜きカット。中抜きしたのに全くわからないというすごいカット技術だ!!
 3d) [ANNnewsCH](03/02 01時頃)"約5分間の“公開口論”ノーカット【サタデーステーション】"。ゼレンスキー氏が「どんな外交について?」と尋ねた所からの部分。ノーカットと言いつつも、直前のバンス氏の話がカットされては質問の背景がわからない。
Ref-4) [BBC News Japan(2025/02/25)]"アメリカ、ロシア側につき国連決議に反対票 ウクライナ侵攻めぐり"


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