前回の続きです。
『原論』では5つの公理(Postulates)と5つの公準(Common Notions)および23個の定義(Definition)を基礎として理論を展開しています。そして「平行線の公理」とも呼ばれる第五公準は、その複雑さ故に他の公理から証明可能な定理なのではないかと長い間探求されたことは有名です。結論として、第五公準が成立する幾何学も成立しない幾何学も共に存在しうるということになりました。公理というものの意味が「誰もが正しいと認めうる命題」から「ある体系の基本として設定する命題」になったのです。
そして『原論』では定理であった命題で公理論的ユークリッド幾何学では公理となった命題があります。そのひとつは『原論』の命題4、二辺挟角定理(2辺とその間の角が等しい三角形は合同)です。これは初等幾何学で基本とされる三角形の合同条件の3つの中のひとつです。実のところ3つのうち一つを仮定すれば残りの2つは証明できるので3つのうちのどれを公理としても良いはずですが、ヒルベルトは二辺挟角定理を採用しました。『幾何学基礎論』での合同の公理5がそれに当たります。
私の感覚では二辺挟角定理も平行線の公理と同じくらい複雑に見えますが、それでも公理とせざるをえないのです。さらに、ユークリッドが当然視して定義さえしていなかった諸々の概念、長さ、面積、角度、図形の内外、といったものもあらわに定義している、というのがヒルベルトの公理系の原論の公理系に対する違いです。
実は長さ、面積、角度といった量は「図形から実数への写像」として定義されますから、実数の存在もしくは定義が前提にないと導入することができません。しかし実数を前提としなくても、線分や角を含めた図形が合同であること、線分の大小関係、角の大小関係を導入することはできます。これらはヒルベルトの公理系では「合同の公理」の公理群により導入されます。順序尺度の導入だけなら実数は必要ではない、と言うとわかりやすいかも知れません。
[非ユークリッド幾何学本の紹介]へ続く
[幾何学-6]へ続く
『原論』では5つの公理(Postulates)と5つの公準(Common Notions)および23個の定義(Definition)を基礎として理論を展開しています。そして「平行線の公理」とも呼ばれる第五公準は、その複雑さ故に他の公理から証明可能な定理なのではないかと長い間探求されたことは有名です。結論として、第五公準が成立する幾何学も成立しない幾何学も共に存在しうるということになりました。公理というものの意味が「誰もが正しいと認めうる命題」から「ある体系の基本として設定する命題」になったのです。
そして『原論』では定理であった命題で公理論的ユークリッド幾何学では公理となった命題があります。そのひとつは『原論』の命題4、二辺挟角定理(2辺とその間の角が等しい三角形は合同)です。これは初等幾何学で基本とされる三角形の合同条件の3つの中のひとつです。実のところ3つのうち一つを仮定すれば残りの2つは証明できるので3つのうちのどれを公理としても良いはずですが、ヒルベルトは二辺挟角定理を採用しました。『幾何学基礎論』での合同の公理5がそれに当たります。
私の感覚では二辺挟角定理も平行線の公理と同じくらい複雑に見えますが、それでも公理とせざるをえないのです。さらに、ユークリッドが当然視して定義さえしていなかった諸々の概念、長さ、面積、角度、図形の内外、といったものもあらわに定義している、というのがヒルベルトの公理系の原論の公理系に対する違いです。
実は長さ、面積、角度といった量は「図形から実数への写像」として定義されますから、実数の存在もしくは定義が前提にないと導入することができません。しかし実数を前提としなくても、線分や角を含めた図形が合同であること、線分の大小関係、角の大小関係を導入することはできます。これらはヒルベルトの公理系では「合同の公理」の公理群により導入されます。順序尺度の導入だけなら実数は必要ではない、と言うとわかりやすいかも知れません。
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