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ある組織-5-内包公理

2010-10-11 06:31:19 | 数学基礎論/論理学
 前回から続く

 組織Vの規則は残り3つ、規則7-9ですが、規則7は論理式で表すと次のようになります。
規則7.∃x∀y(y∈x⇔(y∈a∧A(y))

 A(y)というのは員yについて述べた何らかの文章(論理式)を示します。例えば身長1m以上の員、体重が50-60kgの員、などの文章に当てはまる員を全員集めて、彼らだけの上司xを任命できるというのがこの規則です。と言いたいところですが、組織の員には身長体重による規定はなくて、A(y)として許されるのは直属の上司関係と∧∨¬といった論理記号を使った文章だけです。例えば「員cの部下でない員y」のような文章が許されることになります。またy∈aという条件は、例によって既に身元が確かで組織の構成員であることが明らかな員yだけから新たな上司xを決めるということを明示するものです。集合を箱に喩えるならば、A(y)と書いた箱の中にA(y)を満たすyだけを過不足無くしまっておける、とでも言えばよいでしょうか。これはyが無限個あったり、数学的対象などという手に触れられないモノだったりすると実際に確認することなどできませんから、公理として定めておくしかないことなのです。

 昔から論理学の方では、分類される集合を決める方法として内包法と外延法の2つが区別されていました(注1)。内包法と言うのはある述語によって集合を規定する方法で、まさに規則7の方法そのものです。ゆえに規則7、すなわちZF公理系における公理7は内包公理(axiom of comprehention)とも呼ばれています。また集合aの部分集合を論理式A(y)によって規定することから、部分集合の公理(axiom of subset)とも呼ばれています。また集合aからその一部を取り出すとも言えるので、分出公理(axiom of separation)とも呼ばれています。

 一方外延法というのは、集合の要素1つ1つを枚挙してゆき明示することで、その集合を規定する方法です。つまり要素を全て規定することで集合を規定する方法であり、実は規則1の考え方に相当します。それゆえ規則1は外延性の公理(axiom of extentionality)と呼ばれています。

続く

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注1) 内包的定義および外延的定義という言葉が広く使われている。古典的には集合の定義というよりも概念や語の定義方法として知られていて、現在の日本語としても、論理学、プログラミング、法律等の分野で知られている。そもそも集合(set)という言葉がそう古いものではない(^_^)。英語では多くの場合は、内包(intensive)と外延(extensive)だが別の語が該当する場合もよくあるらしい。
 なお2010-05-16の記事の参考文献に紹介した「内包量と外延量」における内包と外延という形容詞の意味合いは、「内包的定義と外延的定義」における意味合いとはかなり異なると私には思える。

 ----webからの使用例----
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%9A%E7%BE%A9
 例) A とは、{1, 3, 5, 7, 9} を要素とする集合である。(外延的定義)
 例) A は、10 以下の奇数からなる集合である。(内包的定義)

http://www.slis.tsukuba.ac.jp/~hiraga/mathinfo/docs/set.pdf
 2.3 集合要素の表し方(1): 外延的定義
 2.4 集合要素の表し方(2): 内包的定義
 -->平賀譲(筑波大学)"「情報数学(論理数学)」授業配布資料"

http://kyoumu.educ.kyoto-u.ac.jp/cogpsy/personal/Kusumi/keyword/jisho3.htm
内包的意味・外延的意味 connotative meaning・denotative meaning
 -->キーワード集
 -->楠見孝(京都大学)

http://bizmakoto.jp/bizid/articles/0809/29/news065_2.html
法律上の「食品」の定義例

http://tokyo.cool.ne.jp/syntax-and-formalsemantics/lang-syntax1.htm 「統語論」とはなにか?
 内包的定義=条件を規定して、それに該当するものを集合とみなすもの。
 外延的定義=集合に属するメンバーをすべてあげて表示するもの。


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