前回に続き、小説投稿サイトの小説家になろう(読むだけなら小説を読もう!)での宝探し、推理物編です。推理小説の一分野に法廷物がありますが、「裁判、法廷、弁護士」などのワードで探すことができます。
魔王陛下の無罪証明
魔法のある異世界のことだけど、正統派の正義の弁護士の活躍です。全編にあふれるメッセージも涙ぐみそうになるくらいにまともな正義感のもので、ちょっと高木彬光『破戒裁判』を連想しました。
魔王だけど勇者のこと告訴することにしたから
こちらは魔王ではなく勇者が被告人です。その勇者を弁護する話。トリックは上の小説よりもずっと凝っています。
推理小説はイギリスという民主社会でこそ誕生したとの話がありますが、確かに警察が機能して犯人を裁判にかけることができなければ推理小説は成立しにくいです。とはいえ推理のみならば司法が不十分な世界でも物語にできるかも知れませんが、法廷物は論理と言葉の戦場がきちんと成立していない社会の中では描けません。神明裁判しかないような世界では論外です。
ちなみに古代ギリシャの都市国家群では、刑事裁判は知りませんが民事裁判はなかなかに盛んで、それゆえに弁論術や論理学が発達したと言われています。古代ギリシャが舞台なら法廷物も描けるでしょう。
というわけで、推理物、特に法廷物の舞台は我々の社会に近い文明社会となっています。そして魔王だ勇者だと言っても圧倒的な人外の力を持つというものではなく、SFによく描かれる超能力者程度の普通の人間という設定になっています。法廷が権威を持つには力の裏付けが必要なのです。
そして特許裁判という珍しい話が登場するのが、これ。
カデン・マスター
まあ技術論争というか屁理屈合戦というか、なかなかおもしろかった。裁判はともかく様々な魔法具の発明談になっていくのかと楽しみにしていたのですが・・。妙にチート化していって・・。この強さ反則ですよ。そういうおもしろさも確かにあり、というか人気は高いみたいで、だからこそ強すぎるチート物が溢れているようなのですけどね。
しばらく前の記事で推していると書いた作品は連載中なのですが、最近は裁判編に突入しています。なおこの作品ではお約束の翻訳魔法が登場していません。異世界に紛れ込んだ主人公の一人は、コツコツと言語を習得して今では不自由しないまでに上達しています。
異世界チート知識で領地経営しましょう
現代の常識とは違いの多そうな法廷での裁判劇は果たしてどうなるのでしょうか?
魔法のある世界での推理劇というと本ブログ「ハードファンタジー」(2017/12/30)で紹介した『ダーシー卿』シリーズがありますが、ファンタジー世界での裁判劇というと20年ほど前に書かれた『法廷士グラウベン』3部作という作品があります[Ref-1]。中世ヨーロッパに「公正・公明な裁判都市として誉れ高い街・エッラ」というとんでもない架空都市国家を存在させての強引な裁判劇ですが、当然ながら公正・公明な公開裁判であり、「あ~かコーナー、〇〇の女神、AA検事~。あ~おコーナー、新進XXのGG法廷士~。」という感じで・・・。傍聴者からの入場料で稼いだりしてないかい?
「法は力である、法は正義である、法は真理である」とのエッラの理念はかっこいいのですが、身勝手な国家群ひしめく世界でそれを貫くには当然ながら軍事力の裏付けもあるという設定です。法の力を裏で支えるエッラの軍事部門ないし警察部門のヒーロー、なんていう者の登場も期待していたのですが、それはありませんでした。
なお現実のヨーロッパ(というよりイングランドとウェールズ)での中世から現代にかけての裁判の歴史の一端に関して、本ブログ「探偵小説の決めぜりふ:君には武器を取る権利がある」(2017/07/21)でも紹介しています[Ref-2]。17世紀の黙秘権とは、「俺は無実だ」という証言も許されないことを意味したという驚きの事実があったり。上記の神明裁判のwikipedia記事にも書いてあるように、神明裁判の替わりに拷問が採用されたなどという悲しい歴史があったり。
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Ref-1) 彩穂ひかる『法廷士グラウベン』シリーズ
1a) 『法廷士グラウベン』講談社(1999/12/01) ISBN-13:978-406-255450-3
1b) 『消えた王太子』講談社(2001/02/02) ISBN-13:978-406-255523-4
1c) 『ケルンの聖女』講談社(2001/10/05) ISBN-13:978-406-255575-3
Ref-2)
2a) wikipedia英語版「イングランドとウェールズでの黙秘権の歴史」
2b) グランヴィル・ウィリアムズ(Glanville Williams)『有罪の証明-英国刑事裁判の研究』第3版(1963)の庭山英雄(中京大学教授)による研究。元の記事での翻訳へのリンクは現在はリンク切れ。『The Proof of Guilt; A Study of the English Criminal Trial (1958/01/01)』。
魔王陛下の無罪証明
魔法のある異世界のことだけど、正統派の正義の弁護士の活躍です。全編にあふれるメッセージも涙ぐみそうになるくらいにまともな正義感のもので、ちょっと高木彬光『破戒裁判』を連想しました。
魔王だけど勇者のこと告訴することにしたから
こちらは魔王ではなく勇者が被告人です。その勇者を弁護する話。トリックは上の小説よりもずっと凝っています。
推理小説はイギリスという民主社会でこそ誕生したとの話がありますが、確かに警察が機能して犯人を裁判にかけることができなければ推理小説は成立しにくいです。とはいえ推理のみならば司法が不十分な世界でも物語にできるかも知れませんが、法廷物は論理と言葉の戦場がきちんと成立していない社会の中では描けません。神明裁判しかないような世界では論外です。
ちなみに古代ギリシャの都市国家群では、刑事裁判は知りませんが民事裁判はなかなかに盛んで、それゆえに弁論術や論理学が発達したと言われています。古代ギリシャが舞台なら法廷物も描けるでしょう。
というわけで、推理物、特に法廷物の舞台は我々の社会に近い文明社会となっています。そして魔王だ勇者だと言っても圧倒的な人外の力を持つというものではなく、SFによく描かれる超能力者程度の普通の人間という設定になっています。法廷が権威を持つには力の裏付けが必要なのです。
そして特許裁判という珍しい話が登場するのが、これ。
カデン・マスター
まあ技術論争というか屁理屈合戦というか、なかなかおもしろかった。裁判はともかく様々な魔法具の発明談になっていくのかと楽しみにしていたのですが・・。妙にチート化していって・・。この強さ反則ですよ。そういうおもしろさも確かにあり、というか人気は高いみたいで、だからこそ強すぎるチート物が溢れているようなのですけどね。
しばらく前の記事で推していると書いた作品は連載中なのですが、最近は裁判編に突入しています。なおこの作品ではお約束の翻訳魔法が登場していません。異世界に紛れ込んだ主人公の一人は、コツコツと言語を習得して今では不自由しないまでに上達しています。
異世界チート知識で領地経営しましょう
現代の常識とは違いの多そうな法廷での裁判劇は果たしてどうなるのでしょうか?
魔法のある世界での推理劇というと本ブログ「ハードファンタジー」(2017/12/30)で紹介した『ダーシー卿』シリーズがありますが、ファンタジー世界での裁判劇というと20年ほど前に書かれた『法廷士グラウベン』3部作という作品があります[Ref-1]。中世ヨーロッパに「公正・公明な裁判都市として誉れ高い街・エッラ」というとんでもない架空都市国家を存在させての強引な裁判劇ですが、当然ながら公正・公明な公開裁判であり、「あ~かコーナー、〇〇の女神、AA検事~。あ~おコーナー、新進XXのGG法廷士~。」という感じで・・・。傍聴者からの入場料で稼いだりしてないかい?
「法は力である、法は正義である、法は真理である」とのエッラの理念はかっこいいのですが、身勝手な国家群ひしめく世界でそれを貫くには当然ながら軍事力の裏付けもあるという設定です。法の力を裏で支えるエッラの軍事部門ないし警察部門のヒーロー、なんていう者の登場も期待していたのですが、それはありませんでした。
なお現実のヨーロッパ(というよりイングランドとウェールズ)での中世から現代にかけての裁判の歴史の一端に関して、本ブログ「探偵小説の決めぜりふ:君には武器を取る権利がある」(2017/07/21)でも紹介しています[Ref-2]。17世紀の黙秘権とは、「俺は無実だ」という証言も許されないことを意味したという驚きの事実があったり。上記の神明裁判のwikipedia記事にも書いてあるように、神明裁判の替わりに拷問が採用されたなどという悲しい歴史があったり。
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Ref-1) 彩穂ひかる『法廷士グラウベン』シリーズ
1a) 『法廷士グラウベン』講談社(1999/12/01) ISBN-13:978-406-255450-3
1b) 『消えた王太子』講談社(2001/02/02) ISBN-13:978-406-255523-4
1c) 『ケルンの聖女』講談社(2001/10/05) ISBN-13:978-406-255575-3
Ref-2)
2a) wikipedia英語版「イングランドとウェールズでの黙秘権の歴史」
2b) グランヴィル・ウィリアムズ(Glanville Williams)『有罪の証明-英国刑事裁判の研究』第3版(1963)の庭山英雄(中京大学教授)による研究。元の記事での翻訳へのリンクは現在はリンク切れ。『The Proof of Guilt; A Study of the English Criminal Trial (1958/01/01)』。
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